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アクセルとの和平交渉編
第37話 決断
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鏡の前に立つ自分が、まるで誰か他人のように見えた。
深紅と漆黒を基調とした礼装は、肩から流れる重厚なマントと、胸元に飾られた王家の紋章がひときわ目を引く。肌に触れるたび、静かに意志を試されている気がした。
ゆっくりと、手袋を嵌める。
その動作ひとつにさえ、心は波立ち、奥底では恐れが蠢いていた。
(この礼装は、ただの衣装じゃない)
(拒むならば——国を背負う資格すら、なくなる)
窓の外では、朝の光が淡く波打つ海を照らしていた。
まるで、彼の声を思い出させるように。
『逃げんな。俺から離れるなって』
思わず胸元を握りしめる。
サーガの言葉が、熱を持って胸の奥に生きていた。
(でも俺は、選ばなきゃいけない。サーガを選ぶか、国を選ぶか——)
髪を結い上げるとき、指先がわずかに震えた。
だが、それを止める手は誰もいない。
自分で決めるしかないのだ。
鏡の向こうの自分が、静かに目を細めた。
あの夜、彼の腕の中で感じたぬくもりが、まだ胸に残っている。
それでも今は、心を凍らせなければならない。
「さあ、終わらせよう。この交渉を。俺の覚悟を…見せる時だ」
マントを翻し、部屋を出る足音は、静かに、しかし確かに未来を踏みしめていた。
***
「その顔は、答えが出たみたいだな? メビウス王子?」
ウロボロスは玉座から立ち上がると、ゆっくりと一歩、また一歩と近づいてくる。
その顔には余裕の笑み。獲物が自ら檻に入ってきたとでも言いたげだった。
「妃になる覚悟はできたか? それとも、俺を怒らせる気か?」
深紅の瞳がこちらを射抜くように見つめてくる。
だがメビウスは一歩も引かず、正面からその視線を受け止めた。
「俺は——」
一瞬、声が詰まる。サーガの顔が、胸の奥に浮かんだ。
けれど、迷いを飲み込んで、唇を結ぶ。
「俺は妃にはなれません。あなたに従うつもりもありません」
その瞬間、空気が凍りついた。
側近たちがざわつき、ウロボロスの表情から笑みが消える。
「ほう……それが、お前の決断か」
「はい。ですが、和平は諦めたくありません。俺なりの方法で、この国同士を繋ぎたいと願っています」
沈黙。
ウロボロスの足音が、静かに会場に響いた。彼はメビウスの目の前まで来ると、鋭い声で言い放つ。
「俺との縁談も拒否する覚悟があってなおかつ和平を結びたいってことは俺を納得させる条件があるってことか?」
「いえ!ありません!」
ウロボロスは右手で顔を覆いながら、腹の底から楽しげに笑った。
その笑いはまるで、追い詰めた獲物が予想外の反撃をしてきたことを愉しむ猛獣のようで——どこか恐ろしくもあった。
「おいおい……これはまた、おもしれぇこと言ってくれるじゃねぇか、王子様よ」
バサリと礼服の裾を翻しながら、ウロボロスはゆっくりと壇上の玉座に腰を下ろした。鋭い眼光が、まっすぐメビウスを射抜く。
「じゃあ言ってみろ。俺を納得させるつもりもねぇのに、どうやって和平を結ぶつもりだ?」
その声に、会場の空気が一層重くなる。臣下たちも誰一人として口を開けない。ただ静かに、メビウスの次の言葉を待っていた。
メビウスは一歩、前に出た。
心臓は嫌なほどに高鳴っている。手のひらは湿って、礼装の袖がわずかにその汗を吸い込む。
けれど、目だけは逸らさなかった。ウロボロスを、いや、この国の未来を——正面から見据えていた。
「僕が望むのは、誰かの犠牲の上に成り立つ平和ではありません。あなたの妃になることでしか和平を結べないのなら、それはただの服従です」
その瞬間、会場にいた誰もが息を飲んだ。
一瞬の静寂。そして、ウロボロスの目がすっと細くなる。
「……ふうん」
彼は立ち上がると、ゆっくりとメビウスに近づいた。手を伸ばし、彼の顎先に指を添える。
「お前みたいなΩが、ここまで俺の目を見て、堂々と否を突きつけるとはな……」
すぐそばで感じる気迫に、メビウスの背筋が無意識に震えた。
だが、それでも目を逸らさなかった。
「和平を結びたいなら——俺を惹きつけるくらいの言葉、見せてみろよ。王子様」
俺は息を飲み込みながら答えた
「私には、愛するαがいます」
そう言い切った瞬間、場が静まり返った。
まるで時間が止まったかのように、誰もが息を飲む。
ウロボロスはその場に立ったまま、鋭い視線をメビウスに投げると、ふっと鼻で笑った。
そしてゆっくりと右手で顔を覆い、肩を揺らすように笑い始めた。
「……愛する人、ね。……あーもう、負けた!負けたよ!」
バンッと手を叩いて豪快に笑うウロボロス。
だがその目は、どこか優しさを湛えていた。
「ここまで俺を呆れさせたの、お前が初めてだよ、メビウス王子。
真面目な顔で“愛してるからお断り”だなんて……そんな堂々としたΩ、俺は見たことねぇ」
一歩、メビウスに歩み寄ると、少しだけ声のトーンを落とした。
「お前はΩにもかかわらず、誰にも負けないで立ち向かってくる度胸に負けた。
……無条件で和平交渉を結んでやる」
その言葉に、周囲がざわめいた。
メビウスの胸の奥が熱くなる。――報われたのだ、自分の信念が。
「……ありがとうございます」
メビウスは深く頭を下げた。握りしめた手のひらが、ほんの少しだけ震えている。
けれどそれは恐れではなく、張りつめていた緊張がほどけていく感覚だった。
ウロボロスは大きく背伸びをすると、やれやれと肩をすくめて笑う。
「愛の力ってやつかね。王子、お前はとんでもない時代を引き寄せる男だな」
その一言に、メビウスは目を見開いたまま、ほんの少しだけ笑った。
――こうして、激動の会談は、思いもよらない形で幕を下ろした。
大きな戦の火種だったはずの縁談は霧散し、国と国の間には、新たな風が吹き始めていた。
……ただし、その裏で、ひとりのΩとαの関係もまた、静かに、大きく動こうとしていた。
(この国と彼と――俺はどちらも絶対に、手放さない)
メビウスは礼装のまま、そっと目を閉じた。
深紅と漆黒を基調とした礼装は、肩から流れる重厚なマントと、胸元に飾られた王家の紋章がひときわ目を引く。肌に触れるたび、静かに意志を試されている気がした。
ゆっくりと、手袋を嵌める。
その動作ひとつにさえ、心は波立ち、奥底では恐れが蠢いていた。
(この礼装は、ただの衣装じゃない)
(拒むならば——国を背負う資格すら、なくなる)
窓の外では、朝の光が淡く波打つ海を照らしていた。
まるで、彼の声を思い出させるように。
『逃げんな。俺から離れるなって』
思わず胸元を握りしめる。
サーガの言葉が、熱を持って胸の奥に生きていた。
(でも俺は、選ばなきゃいけない。サーガを選ぶか、国を選ぶか——)
髪を結い上げるとき、指先がわずかに震えた。
だが、それを止める手は誰もいない。
自分で決めるしかないのだ。
鏡の向こうの自分が、静かに目を細めた。
あの夜、彼の腕の中で感じたぬくもりが、まだ胸に残っている。
それでも今は、心を凍らせなければならない。
「さあ、終わらせよう。この交渉を。俺の覚悟を…見せる時だ」
マントを翻し、部屋を出る足音は、静かに、しかし確かに未来を踏みしめていた。
***
「その顔は、答えが出たみたいだな? メビウス王子?」
ウロボロスは玉座から立ち上がると、ゆっくりと一歩、また一歩と近づいてくる。
その顔には余裕の笑み。獲物が自ら檻に入ってきたとでも言いたげだった。
「妃になる覚悟はできたか? それとも、俺を怒らせる気か?」
深紅の瞳がこちらを射抜くように見つめてくる。
だがメビウスは一歩も引かず、正面からその視線を受け止めた。
「俺は——」
一瞬、声が詰まる。サーガの顔が、胸の奥に浮かんだ。
けれど、迷いを飲み込んで、唇を結ぶ。
「俺は妃にはなれません。あなたに従うつもりもありません」
その瞬間、空気が凍りついた。
側近たちがざわつき、ウロボロスの表情から笑みが消える。
「ほう……それが、お前の決断か」
「はい。ですが、和平は諦めたくありません。俺なりの方法で、この国同士を繋ぎたいと願っています」
沈黙。
ウロボロスの足音が、静かに会場に響いた。彼はメビウスの目の前まで来ると、鋭い声で言い放つ。
「俺との縁談も拒否する覚悟があってなおかつ和平を結びたいってことは俺を納得させる条件があるってことか?」
「いえ!ありません!」
ウロボロスは右手で顔を覆いながら、腹の底から楽しげに笑った。
その笑いはまるで、追い詰めた獲物が予想外の反撃をしてきたことを愉しむ猛獣のようで——どこか恐ろしくもあった。
「おいおい……これはまた、おもしれぇこと言ってくれるじゃねぇか、王子様よ」
バサリと礼服の裾を翻しながら、ウロボロスはゆっくりと壇上の玉座に腰を下ろした。鋭い眼光が、まっすぐメビウスを射抜く。
「じゃあ言ってみろ。俺を納得させるつもりもねぇのに、どうやって和平を結ぶつもりだ?」
その声に、会場の空気が一層重くなる。臣下たちも誰一人として口を開けない。ただ静かに、メビウスの次の言葉を待っていた。
メビウスは一歩、前に出た。
心臓は嫌なほどに高鳴っている。手のひらは湿って、礼装の袖がわずかにその汗を吸い込む。
けれど、目だけは逸らさなかった。ウロボロスを、いや、この国の未来を——正面から見据えていた。
「僕が望むのは、誰かの犠牲の上に成り立つ平和ではありません。あなたの妃になることでしか和平を結べないのなら、それはただの服従です」
その瞬間、会場にいた誰もが息を飲んだ。
一瞬の静寂。そして、ウロボロスの目がすっと細くなる。
「……ふうん」
彼は立ち上がると、ゆっくりとメビウスに近づいた。手を伸ばし、彼の顎先に指を添える。
「お前みたいなΩが、ここまで俺の目を見て、堂々と否を突きつけるとはな……」
すぐそばで感じる気迫に、メビウスの背筋が無意識に震えた。
だが、それでも目を逸らさなかった。
「和平を結びたいなら——俺を惹きつけるくらいの言葉、見せてみろよ。王子様」
俺は息を飲み込みながら答えた
「私には、愛するαがいます」
そう言い切った瞬間、場が静まり返った。
まるで時間が止まったかのように、誰もが息を飲む。
ウロボロスはその場に立ったまま、鋭い視線をメビウスに投げると、ふっと鼻で笑った。
そしてゆっくりと右手で顔を覆い、肩を揺らすように笑い始めた。
「……愛する人、ね。……あーもう、負けた!負けたよ!」
バンッと手を叩いて豪快に笑うウロボロス。
だがその目は、どこか優しさを湛えていた。
「ここまで俺を呆れさせたの、お前が初めてだよ、メビウス王子。
真面目な顔で“愛してるからお断り”だなんて……そんな堂々としたΩ、俺は見たことねぇ」
一歩、メビウスに歩み寄ると、少しだけ声のトーンを落とした。
「お前はΩにもかかわらず、誰にも負けないで立ち向かってくる度胸に負けた。
……無条件で和平交渉を結んでやる」
その言葉に、周囲がざわめいた。
メビウスの胸の奥が熱くなる。――報われたのだ、自分の信念が。
「……ありがとうございます」
メビウスは深く頭を下げた。握りしめた手のひらが、ほんの少しだけ震えている。
けれどそれは恐れではなく、張りつめていた緊張がほどけていく感覚だった。
ウロボロスは大きく背伸びをすると、やれやれと肩をすくめて笑う。
「愛の力ってやつかね。王子、お前はとんでもない時代を引き寄せる男だな」
その一言に、メビウスは目を見開いたまま、ほんの少しだけ笑った。
――こうして、激動の会談は、思いもよらない形で幕を下ろした。
大きな戦の火種だったはずの縁談は霧散し、国と国の間には、新たな風が吹き始めていた。
……ただし、その裏で、ひとりのΩとαの関係もまた、静かに、大きく動こうとしていた。
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