あなたはカエルの御曹司様

さくらぎしょう

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娘を頼む

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 文人が人差し指を立てて口元に置き、全員に向かって静かにするよう促した。
 文人はカバンの中からトランシーバーのような機械を取り出して、部屋の中をくまなく調べる。先ほどのコンセントタップの近くでハウリング音が響いた。

 全員が息を呑む中、文人はジェスチャーで皆に黙って外に出るように促した。

 全員が静かに玄関を出て、文人に手招きされて階段を降りると、文人は周りを見渡し、人が居ない事を確認してから、小さな声で話す。

「あれは盗聴器だよ。しかも埃もなく綺麗だったから、最近付けられたはず。俺がねーちゃんの身内じゃなければ、証拠になる調査報告書も作れたけど、身内の俺が作ったら効力弱まるから、盗聴器は証拠としてあのまま触らずに、このまま警察に行こう」

 私は顔が青ざめ、身体が震え出していた。瑞貴は私の手を握って、落ち着かせようとしてくれる。
 すでに頭は回らなくなっていたが、瑞貴や文人、そして父に連れられ近くの交番に行った。
 窓ガラスを割られた時に対応してくれた警察官がいたので、話しはスムーズに進み、不法侵入ということで警察署からも鑑識が来て現場確認がされた。先日の窓ガラスの件もあり、しばらくアパート周辺の見回りを強化してくれるそうだ。

 警察官から懸念事項を伝えられる。

「ちなみに、もしも犯人がストーカー目的であれば、盗聴器が外されたと知ったら次の行動にでる可能性は高いです。新たな盗聴器を設置しに部屋への侵入を再度試みるかもしれないし、逆に激昂してあなたやお付き合いしている男性に危害を加えに来る心配もあります」
「……そんな」

 それでも、今は何も出来ないので、不安は薄れることなく、むしろ高まった状態で、警察官を見送った。

 警察が帰った後のアパートの部屋で、父が瑞貴を睨みつけ、低い声で唸る。

「おい……盗聴の件、テメエがやったわけじゃねぇって誓えるか?」
「ちょっと、お父さんやめてよ」

 止めに入る私を、瑞貴が腕を伸ばして制した。
 瑞貴は父の目をしっかりと見て頷く。

「誓って、私ではありません。彼女を守りたいと思っています」

 瑞貴の言葉を受けて、父は私にぶっきらぼうに言う。

「なら、俺からお前たちに話す事は何もねーよ。結婚する時に連絡しろ。あと、こんな気味の悪い部屋、さっさと解約して、早急に同棲しろ」

 こんな形で父から同棲の許可が降りた。
 父はさっさと部屋を解約するように言ったが、実は警察官と話した後から考えている事がある。

「お父さん、ありがとう。でも、このアパートはもう少し借りておこうと思うの……」

 私の言葉に全員同時に声を上げて驚いた。

「何言ってんだ、おまえは」
「ねーちゃん、こんな部屋気持ち悪いだけだろ?」
「そうだよ綾ちゃん。もう僕の家に来ればいいだけなんだから、今すぐに管理会社に解約の電話をしようよ」

 私は首を振り、口を開く。

「警察官は、盗聴器を外されたと知った犯人が再度侵入をするかもしれないって言ってた。だから、逆にこの部屋にカメラをいくつか仕掛けて犯人を突き止めたい」

 文人は心配そうに声を掛けて来た。

「それはいい案だけど……カメラに気づいた犯人を刺激して、ねーちゃんが変な犯罪に巻き込まれないかも心配だよ」

 それは、よくわかる。だけど、もしこれが嵯峨の犯行だったら、このままアパートを解約したところで、会社に行けばアイツはいるわけで、またあとをつけられて瑞貴に迷惑をかける可能性もある。

 私の可愛い瑞貴に何かされたら……。
 太っていた時の瑞貴のもふもふな癒し系笑顔や、イケメン化した今の胸キュン笑顔が頭の中に姿を表し、次に、嵯峨の憎たらしい顔がよぎり、さっきまでの不安が、沸々と怒りへと変わり始めた……。

「大丈夫。絶対に捕まえてやる……」

 私の不敵な笑みに、文人は苦笑いしていた。

 父は腕時計を見て、そろそろ仕事に戻らなければいけない時間のようで、初めて瑞貴に丁寧に声を掛けた。

「瑞貴君……くれぐれも……娘をよろしく頼む」

 父が頭を下げた姿を初めて見た……。
 瑞貴も深々とお辞儀をし、父に認めて貰えたお礼を伝えた。
 
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