19 / 30
娘を頼む
しおりを挟む
文人が人差し指を立てて口元に置き、全員に向かって静かにするよう促した。
文人はカバンの中からトランシーバーのような機械を取り出して、部屋の中をくまなく調べる。先ほどのコンセントタップの近くでハウリング音が響いた。
全員が息を呑む中、文人はジェスチャーで皆に黙って外に出るように促した。
全員が静かに玄関を出て、文人に手招きされて階段を降りると、文人は周りを見渡し、人が居ない事を確認してから、小さな声で話す。
「あれは盗聴器だよ。しかも埃もなく綺麗だったから、最近付けられたはず。俺がねーちゃんの身内じゃなければ、証拠になる調査報告書も作れたけど、身内の俺が作ったら効力弱まるから、盗聴器は証拠としてあのまま触らずに、このまま警察に行こう」
私は顔が青ざめ、身体が震え出していた。瑞貴は私の手を握って、落ち着かせようとしてくれる。
すでに頭は回らなくなっていたが、瑞貴や文人、そして父に連れられ近くの交番に行った。
窓ガラスを割られた時に対応してくれた警察官がいたので、話しはスムーズに進み、不法侵入ということで警察署からも鑑識が来て現場確認がされた。先日の窓ガラスの件もあり、しばらくアパート周辺の見回りを強化してくれるそうだ。
警察官から懸念事項を伝えられる。
「ちなみに、もしも犯人がストーカー目的であれば、盗聴器が外されたと知ったら次の行動にでる可能性は高いです。新たな盗聴器を設置しに部屋への侵入を再度試みるかもしれないし、逆に激昂してあなたやお付き合いしている男性に危害を加えに来る心配もあります」
「……そんな」
それでも、今は何も出来ないので、不安は薄れることなく、むしろ高まった状態で、警察官を見送った。
警察が帰った後のアパートの部屋で、父が瑞貴を睨みつけ、低い声で唸る。
「おい……盗聴の件、テメエがやったわけじゃねぇって誓えるか?」
「ちょっと、お父さんやめてよ」
止めに入る私を、瑞貴が腕を伸ばして制した。
瑞貴は父の目をしっかりと見て頷く。
「誓って、私ではありません。彼女を守りたいと思っています」
瑞貴の言葉を受けて、父は私にぶっきらぼうに言う。
「なら、俺からお前たちに話す事は何もねーよ。結婚する時に連絡しろ。あと、こんな気味の悪い部屋、さっさと解約して、早急に同棲しろ」
こんな形で父から同棲の許可が降りた。
父はさっさと部屋を解約するように言ったが、実は警察官と話した後から考えている事がある。
「お父さん、ありがとう。でも、このアパートはもう少し借りておこうと思うの……」
私の言葉に全員同時に声を上げて驚いた。
「何言ってんだ、おまえは」
「ねーちゃん、こんな部屋気持ち悪いだけだろ?」
「そうだよ綾ちゃん。もう僕の家に来ればいいだけなんだから、今すぐに管理会社に解約の電話をしようよ」
私は首を振り、口を開く。
「警察官は、盗聴器を外されたと知った犯人が再度侵入をするかもしれないって言ってた。だから、逆にこの部屋にカメラをいくつか仕掛けて犯人を突き止めたい」
文人は心配そうに声を掛けて来た。
「それはいい案だけど……カメラに気づいた犯人を刺激して、ねーちゃんが変な犯罪に巻き込まれないかも心配だよ」
それは、よくわかる。だけど、もしこれが嵯峨の犯行だったら、このままアパートを解約したところで、会社に行けばアイツはいるわけで、またあとをつけられて瑞貴に迷惑をかける可能性もある。
私の可愛い瑞貴に何かされたら……。
太っていた時の瑞貴のもふもふな癒し系笑顔や、イケメン化した今の胸キュン笑顔が頭の中に姿を表し、次に、嵯峨の憎たらしい顔がよぎり、さっきまでの不安が、沸々と怒りへと変わり始めた……。
「大丈夫。絶対に捕まえてやる……」
私の不敵な笑みに、文人は苦笑いしていた。
父は腕時計を見て、そろそろ仕事に戻らなければいけない時間のようで、初めて瑞貴に丁寧に声を掛けた。
「瑞貴君……くれぐれも……娘をよろしく頼む」
父が頭を下げた姿を初めて見た……。
瑞貴も深々とお辞儀をし、父に認めて貰えたお礼を伝えた。
文人はカバンの中からトランシーバーのような機械を取り出して、部屋の中をくまなく調べる。先ほどのコンセントタップの近くでハウリング音が響いた。
全員が息を呑む中、文人はジェスチャーで皆に黙って外に出るように促した。
全員が静かに玄関を出て、文人に手招きされて階段を降りると、文人は周りを見渡し、人が居ない事を確認してから、小さな声で話す。
「あれは盗聴器だよ。しかも埃もなく綺麗だったから、最近付けられたはず。俺がねーちゃんの身内じゃなければ、証拠になる調査報告書も作れたけど、身内の俺が作ったら効力弱まるから、盗聴器は証拠としてあのまま触らずに、このまま警察に行こう」
私は顔が青ざめ、身体が震え出していた。瑞貴は私の手を握って、落ち着かせようとしてくれる。
すでに頭は回らなくなっていたが、瑞貴や文人、そして父に連れられ近くの交番に行った。
窓ガラスを割られた時に対応してくれた警察官がいたので、話しはスムーズに進み、不法侵入ということで警察署からも鑑識が来て現場確認がされた。先日の窓ガラスの件もあり、しばらくアパート周辺の見回りを強化してくれるそうだ。
警察官から懸念事項を伝えられる。
「ちなみに、もしも犯人がストーカー目的であれば、盗聴器が外されたと知ったら次の行動にでる可能性は高いです。新たな盗聴器を設置しに部屋への侵入を再度試みるかもしれないし、逆に激昂してあなたやお付き合いしている男性に危害を加えに来る心配もあります」
「……そんな」
それでも、今は何も出来ないので、不安は薄れることなく、むしろ高まった状態で、警察官を見送った。
警察が帰った後のアパートの部屋で、父が瑞貴を睨みつけ、低い声で唸る。
「おい……盗聴の件、テメエがやったわけじゃねぇって誓えるか?」
「ちょっと、お父さんやめてよ」
止めに入る私を、瑞貴が腕を伸ばして制した。
瑞貴は父の目をしっかりと見て頷く。
「誓って、私ではありません。彼女を守りたいと思っています」
瑞貴の言葉を受けて、父は私にぶっきらぼうに言う。
「なら、俺からお前たちに話す事は何もねーよ。結婚する時に連絡しろ。あと、こんな気味の悪い部屋、さっさと解約して、早急に同棲しろ」
こんな形で父から同棲の許可が降りた。
父はさっさと部屋を解約するように言ったが、実は警察官と話した後から考えている事がある。
「お父さん、ありがとう。でも、このアパートはもう少し借りておこうと思うの……」
私の言葉に全員同時に声を上げて驚いた。
「何言ってんだ、おまえは」
「ねーちゃん、こんな部屋気持ち悪いだけだろ?」
「そうだよ綾ちゃん。もう僕の家に来ればいいだけなんだから、今すぐに管理会社に解約の電話をしようよ」
私は首を振り、口を開く。
「警察官は、盗聴器を外されたと知った犯人が再度侵入をするかもしれないって言ってた。だから、逆にこの部屋にカメラをいくつか仕掛けて犯人を突き止めたい」
文人は心配そうに声を掛けて来た。
「それはいい案だけど……カメラに気づいた犯人を刺激して、ねーちゃんが変な犯罪に巻き込まれないかも心配だよ」
それは、よくわかる。だけど、もしこれが嵯峨の犯行だったら、このままアパートを解約したところで、会社に行けばアイツはいるわけで、またあとをつけられて瑞貴に迷惑をかける可能性もある。
私の可愛い瑞貴に何かされたら……。
太っていた時の瑞貴のもふもふな癒し系笑顔や、イケメン化した今の胸キュン笑顔が頭の中に姿を表し、次に、嵯峨の憎たらしい顔がよぎり、さっきまでの不安が、沸々と怒りへと変わり始めた……。
「大丈夫。絶対に捕まえてやる……」
私の不敵な笑みに、文人は苦笑いしていた。
父は腕時計を見て、そろそろ仕事に戻らなければいけない時間のようで、初めて瑞貴に丁寧に声を掛けた。
「瑞貴君……くれぐれも……娘をよろしく頼む」
父が頭を下げた姿を初めて見た……。
瑞貴も深々とお辞儀をし、父に認めて貰えたお礼を伝えた。
15
あなたにおすすめの小説
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
Good day !
葉月 まい
恋愛
『Good day !』シリーズ Vol.1
人一倍真面目で努力家のコーパイと
イケメンのエリートキャプテン
そんな二人の
恋と仕事と、飛行機の物語…
꙳⋆ ˖𓂃܀✈* 登場人物 *☆܀𓂃˖ ⋆꙳
日本ウイング航空(Japan Wing Airline)
副操縦士
藤崎 恵真(27歳) Fujisaki Ema
機長
佐倉 大和(35歳) Sakura Yamato
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる