魔法省を悩ませる謎の病は私の力が原因でした

さくらぎしょう

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9.辛辣なラミ

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 ラミは黙ったままヤーナさんの目を真っ直ぐに見ている。睨むわけでもなく、険しい表情でもなく、何の感情も感じさせないような視線は、怒りを露わにするよりもある意味恐怖を与える。

「何よその表情? 気に食わないわね。それとも悔しくて何も言えないの? 悔しいなら仕事も連れ歩く女も、もっと上を目指しなさい」
「君と違って、僕には必要ないから」
「は?」
「僕は君と違って、どれだけ稼ぐ仕事をしているかよりも、仕事に対してどんな姿勢の人かの方がよっぽど魅力を感じる。だから、僕も仕事に対して責任を持ってるし、その対価で十分に生活も出来てる。君が言うほどお金に困ってない。
 君みたいに自分のコンプレックスを補う手段としてキラキラした友人を選ばないから、君のアドバイスは全部僕には必要ない。ああ、そもそもそんなの友人じゃないか。じゃあ、君は友達がいない可哀そうな人だね。ありがとうも言えないんだから、仕方ないか」

 ラミは相手に反論させる隙を与えない適度なスピードで淡々と言いきった。
 やっとラミの口が止まるやいなや、ヤーナさんの両脇に立っていた美女達がぎゃーぎゃー騒ぎ出す。

「何コイツ? ヤーナ、こんな負け惜しみ聞く必要ないよ」
「そうよ。しかもさ、顔は良いのにこんなのにしか言い寄れないって、多分何かヤバい事隠してるんだよ。結婚詐欺師かもよ?」

 結婚詐欺師の言葉に、三人は目を合わせて「あぁ~」と上がり調子の納得の声を上げた。

「絶対そう! 絶対結婚詐欺師! もしくは、貢がせようとしてるのね。やだぁー、気を付けて~。あなた狙われてるよ~」

 三人は私を見て手を叩き、きゃっきゃと大笑いしてそのまま去って行った。

 正直、私はこの手の仕打ちは慣れている。
 魔法学校時代、特に中等部の頃に孤児だのデブだのブスだの言われていたので、かなり免疫があり、そんなに気にしていない。
 だけど、ラミはきっと違う。こんなに素敵な人だから、あんな風に傷つけられることなどなかっただろう。そもそも、私と一緒にいなければラミはあんな言われ方をされなかった。

 ラミは黙って立ち上がってしまう。

「ラミ、ごめんなさい。私と一緒にいたばかりに嫌な思いをさせてしまって……」

 ラミに嫌われてしまっただろうか……優しい人だから嫌いはせずとも、私と距離を置こうとは思っただろう……。

 ラミが椅子をテーブルにしまい、歩き出す。
 私は自然と表情が暗くなり、うつむいてしまう。

 でもラミは、そのまま私の隣に移動して来て座った。そして、うつむいた私の顔を覗き込んでくる。
 至近距離にラミの綺麗な顔がある。恥ずかしすぎて息を止めてしまった。

「プルム、僕、嘘ついちゃった」

「へ?」

 私を覗き込んだままのラミはにっこりと優しい笑顔を見せた。

「君が暖かな光をキラキラと出しているものだから、僕は君に惹かれて近づいたんだよ。なんだかんだ、あの人達と同じだね。こんな僕だけど、これからも仲良くしてね」

 頬が熱くなるのを感じながら、私も大きく笑ってしまった。

「ラミになら、騙されていても幸せかも」
「だーかーらー、結婚詐欺師でもヒモ男でもないってば。誰かを騙して金銭奪う程生活に困ってないし、万が一生活に困ったってそんな事するもんか」

 二人で目を合わせ、笑ってしまった。

「ねえ、プルム? 今週末は何か予定ある?」
「課長に聞いてみるけど、私は特には」
「そう。じゃあもしお休みだったら、最近公開された映画を観に行きたいんだけど、一人で行くには勇気がいるから、一緒に行ってくれないかな?」
「もしかしてマジックウォーズのエピソードII?」
「そうだよ。よく分かったね」
「私も観たかったの!!」
「じゃあ、決まりだね! ああ、ちゃんとおごるから。僕が詐欺師じゃない証明も兼ねて」

 ラミのセリフに、また二人で目を合わせたまま笑ってしまった。
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