魔法省を悩ませる謎の病は私の力が原因でした

さくらぎしょう

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31.最終話

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 私とラミは父と話を終えて、玄関で別れの挨拶をしていた。

「お父さん……また、来てもいい?」
「また来てくれるのか?」

 驚く父に、私はとびきりの笑顔で頷く。

「うん、お父さんのところに帰れて、私また一つ幸せになった」

 父は顔をほころばせ、私を強く抱きしめてくれる。

「プルムが嫌じゃなければ、いつでも帰っておいで。次は、お母さんのお墓参りに一緒に行こう」
「うん」

「あ!!」

 ラミの突然の声に私と父は驚いてラミを見る。

「プルム、ここに来た目的を果たしていない! モルフォさん、プルムは術以外にも何か内側が殻の様なものに覆われている気配があり、魔法が上手く使えないんです。何か心当たりはないですか?」
「ああ、それは成長が始まったんだな。すまない、きっと私がかけた術のせいで本来思春期頃に訪れるものが、解術によって今やっと始まったんだろう」
「「解術で……始まった???」」
「ああそうだ。だって私とプルムは——」

 父が何かとても重要な事を言いかけた時、車に乗って私達を待っていてくれたシェニアさんが大声を上げた。

「ラミ!! 大変、急いで!!」
「姉さん?」
「魔水晶をメルヴィたちが復旧させていたら、ヒビが入って大変なことになっているの! 今すぐラミも行って魔法で助けなさい!!」
「ええ!! 大変だ!! モルフォさん、すいませんが急いで転移させていただきます」

 慌てたラミは私の手を握ると、すぐに転移魔法を発動してサラトゥースの魔水晶の前に移動した。

 地方局の地下にある魔水晶の部屋には、オーケとメルヴィさん、そして経済産業部の技官らしき人がおり、てんやわんやの状態に陥っていた。

「ラミ!! ああ、良かった。魔水晶が一瞬だけ振動数を出したタイミングでシェニア姉さんにメッセージを送ったんだ。無事に届いてたね」
「遅くなってごめん、姉さん。これまでの状況報告は頭にビジョンを流しておくから、それで確認して。そして許して」
「わかったから、さっさとここにきて魔法でヒビ割れを食い止めろ!」
「単純にヒビだけ閉じたらいいわけじゃないだろ?」

 すると技官さんが大声を上げる。

「そのお嬢さんの振動数を魔水晶に送って復旧させてください! 私達が無理に振動を起こそうとすると、ヒビ割れを起こします。魔水晶を復旧させてからヒビを閉じないと、またヒビが入って真っ二つに割れ、もう二度と振動が出せなくなる!!」 

 ラミだけでなく、その場にいる全員が私を見た。

「え゛!? 振動数を……送る???」

 困惑する私の手をラミが握り、魔水晶の前まで連れて行く。

「大丈夫だよ、プルム。僕がサポートするから。一旦腕につけている制御アクセサリーを外そうか」

 ラミはそう言って私の腕から制御用の腕輪を外すと、労わるような手つきで背中に手を添えてくれた。ラミの手の温もりが背中をじんわりと温め、心もぽかぽかに温めてくれる。この人がいれば、何でも乗り越えられる気がしてきた。

 両手を魔水晶にあて、目を瞑って自分のなかにある振動数とやらに意識を集中させる。

 ……だが……やはり、まったくわからない。そう思うと、余計に焦りが出て来て集中が出来なくなってくる。

 その矢先、背中全体に温もりを感じ、包み込まれる安心感を感じた。ラミが、私の背後に立って、私に覆いかぶさるような体勢で、一緒に魔水晶に手を当ててくれているのだ。
 
「ラミ……ちょっと恥ずかしいかも」
「ほら、集中」
「あ、はい」

 密着したラミの身体から、彼の心臓の音が聴こえてくるかのようだった。スッと息を大きく吸い込めば、落ち着くどころか、ラミの香りが体内に行き渡り、私の心音までもトクトクと早鐘を打ち始める。

「心臓の音……」

 高鳴る胸の音がふいに気になり、目を瞑って意識を心音に集中させた。

「ああ、わかった……振動数を感じる」
「僕もだよ」

 ラミが耳元で囁くと、さらに振動数が激しく細かく上がり始める。魔水晶も共鳴を始め、ヒビ割れが止まり、いつもの青白い光を内側から放ち始める。

「いいぞ、プルム。魔水晶が振動を始めた」

 意識を集中すれば、魔水晶の振動も感じ始める。その振動数が通常レベルまで上がると、ラミは急いで私の腕に制御用の腕輪をはめた。

「あとは任せて」

 そう言ってラミは私の頬に軽くキスをすると、私から離れてポケットから杖を取り出す。ラミが杖を持つところを初めて見た。

 ラミは魔力が著しく高いものしか発語できないと言われる、超高度な呪文を唱え始め、杖先を魔水晶のヒビに向けた。ヒビに沿って杖を真っ直ぐにゆっくりとおろしていけば、溶接されるようにヒビが綺麗に閉じて行く。
 ラミが魔水晶のヒビを完璧に消し去ると、その場からおおーっという声と拍手が起こる。

 そして、魔水晶の復旧により、この部屋に次々と転移魔法で上質なスーツを来た人達が現れ始めた。その最後に現れた貫禄のある男性を見たオーケは、陸に打ち上げられた魚の様に口をパクパクとさせている。

「よくやった、ラミ」
「エルランド魔法大臣、なぜこちらに?」

 ラミがその男性に向かって出した名前に、私もあんぐりと口を開けてしまった。
 エルランド魔法大臣は、ただの大臣職ではなく、この魔法界を統べる統治者のような存在だ。

「何故も何も、こんな事態になったサラトゥースに真っ先に来るのが私の務めだろ」
「確かにそうですね」

 魔法大臣は一緒に現れた大勢の者達に向かって指示を出し始める。

「さあ、地方局の各部署に行ってサラトゥースの復興段取りを指示し、開始するんだ」

 魔法大臣の指示で皆バタバタと部屋を出て行き、大臣以外に残ったのは、最初にいたオーケとメルヴィさんと技官さん、それに私とラミだけだった。

「まさかこんなに早く謎の病を解決して、魔水晶の復旧までさせるとは、やはりラミを送った甲斐があった」
「あー、いえ、運よくサンシャインさんとブラッドショーさんに会えたからここまで早く仕事を片付けられました」
「サンシャインさんは、この振動数を出すお嬢さんだね。ブラッドショーさんとは?」

 ラミとメルヴィさんが視線をオーケに向けた。その目の動きで魔法大臣もオーケを認識し、近づいて行く。

「初めまして。私はエルランドと言います」

 ガチガチに固まったオーケが、魔法大臣に向かって直角にお辞儀する。あまりの硬さにそのままボキッと折れてしまいそうだった。

「魔法省サラトゥース地方局厚生労働部生活課課長、オーケ・ブラッドショーと申しますっ!!」
「ああ、なんだ、魔法省の人間だったんだね。今回は良く働いてくれた。礼を言おう」
「いえ、職務ですからっ」

 メルヴィさんが魔法大臣に報告を始めた。

「今回、魔水晶の復旧には、このブラッドショーもいなければ不可能でした。彼は科学界に関する知識が豊富で、自宅にもバイクや車や、その他あちらの生活家電なども沢山あり、科学界課の私すらも学ばされるほどでした」
「そうか、それはいい人材だ。推薦の権限を持つ者からの推薦状も手に入るのであれば、君が実績証明書を書いて本省勤務審査に通しなさい」
「ありがとうございます。ということだ、ラミ」

 魔法大臣とメルヴィさんの会話の終着点がラミになり、私とオーケは首を右に左にと忙しく動かして状況を必死に掴もうとしている。

 ラミはオーケに向かってニヤリと口角を上げて笑って見せると、少しからかった風に話す。

「プルムが君をやたらと推すんだよね。仕方が無いからこれを出してあげるから、プルムとメルヴィ姉さんには、あとでちゃんとお礼をしてよね」

 ラミがパチンと指を鳴らすと、オーケの手元に一枚の推薦状が現れた。

『推薦状 魔法省サラトゥース地方局厚生労働部生活課課長 オーケ・ブラッドショーを魔法省外務部科学界課に推薦する。理由と実績は別添の通り。推薦者:魔法省魔法大臣主席補佐官 ラミ・シャロンド・ヘイデンスタイム』

 オーケは言葉を失い、ただただラミを唖然と見つめていた。

「ではラミ、新年度までには本省に戻る様に」
「承知しました」

 魔法大臣はラミにそう言って姿を消した。

「じゃあ、私もこれで本省に戻りますね」

 技官さんも手を振ってその場から転移する。

「オーケ、私達は外に停めたままの車で帰るぞ」
「え? 帰る??」

 メルヴィさんはオーケの背後から首に腕を回し、ふざけて羽交い絞めにする。だが、何だかオーケも満更ではなさそうだった。

「お前の家に帰るんだよ。道すがらお前の今後の処遇を説明してやるから」
「え? は? え???」
「ああ、オーケの元カノとやらにも挨拶してから帰ろうな」
「何の挨拶だよ!?」
「んなもの、決まってるだろ……」

 メルヴィさんは首をコキコキと鳴らし始め、何かの準備を始めた。
 オーケはその様子に表情を青ざめたが、結局メルヴィさんにぐいぐい引っ張られて部屋から連れ去られて行った。

 ラミと二人きりになり、すっかり静かになった神秘的な輝きを放つ魔水晶の部屋で、私は少し俯きながらラミに声を掛けた。

「ラミはダイバーシティ採用じゃなかったのね」
「ダイバーシティ採用だよ。魔法大臣の命令でサラトゥースの謎の病を解決するように言われて、この地方局にダイバーシティ採用として入って潜入調査していたんだ。僕の身分を明かして地方局に来たら、忖度する者が出て来て、必要な情報が手に入らなくなるのは困るから。ダイバーシティなら時間の融通が利くから、本業の為に仕事が抜けやすかったんだ。プルムにはいずれ話すつもりだった」
「私に近づいたのは、最初から私が振動数を出すのを分かってたからなの?」

 私は涙を堪えてラミを見上げた。この恋が偽物だったなんて言わないで欲しい……。ここまで来て、またしても結婚詐欺師疑惑に戻ってしまう。

「違う。運命の人がここにいたから、きっとこの仕事が舞い込んで来たんだ。初恋の相手が、偶然探していた答えで、プルムと結ばれるのは必然だよ」

 ラミは私の髪を優しく撫でながら、達観した目で私を見つめている。

「プルム、僕と一緒に首都に来て欲しい」
「え?」
「プルムが魔法をコントロール出来るようになったら、本省試験を受けたらいい」
「本省試験……」
「一緒に暮らそう。プルムを一生大切にする」

 ラミがそう言ってキスをしてくると、身体中に電気が走り出す。事あるごとにラミが支えてくれた私の背中が熱くなり、内側から何かが取り除かれて行く感覚がする。でもラミのキスが心地よくて、頭が上手く働かない。
 背中に解放感を感じた瞬間、ラミがキスを止め、驚いた表情で私の背後に視線を向けていた。

「プルム……君……」
「何?」
 
 顔を横に向けると、魔水晶にうつる自分の姿に驚愕した。

 背が明らかに伸びており、髪の色が父親と同じコバルトブルーに変化している。そして一番の驚きは背中に生えた、髪と同じ色の美しい羽であった。

「君は蝶の亜人だったんだね……」
「蝶……」
「羽が生えたなら、成熟したんだよ。きっと魔法のコントロールもすぐに出来るようになる」
「確かに……振動数を魔力に変換する回路がわかる」

 ラミは私の手を握り締め、乞い願うような声で話す。

「本省試験、挑戦しない?」

 私はラミの目をしっかりと見て頷いた。
 そしてありったけのラミへの想いを乗せた笑顔を向ける。

「地方局の任期が終わったら、すぐにラミのもとまで飛んで行くわ」

 ラミは顔を真っ赤にしてはにかんでいた。
 そして私たちはまた身体を寄せて、戯れ合うように幸せなキスを交わした。








END
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