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しおりを挟む「あー…… 」
やべ、思わず声が漏れた。
それは、いくら家族といえども、一番『駄目』な相手だ。
それならばと切り替えて、「じゃあ、お父さんとお母さんは? 」と聞けば、それにも京香は頭を振る。
「……仕事、です 」
「仕事って言ったって、大事な娘がこんな状況なら来てくれるんじゃないの? 」そこまで言って、もう1つの可能性に気付く。
「もしかして、2人ともαなの? 」
もしそうなら、最悪だ。 けれど、京香がまた頭を振った。
「母は違いますけど…… 」
良かったと、息を吐いたのも束の間、「じゃあ…… 」と言った真祝の言葉を京香が遮る。
「今は、2人共、仕事で日本にいません 」
「え、あ? そうなんだ。 それは、無理だね。 」
母は違うと言うことは、父はαなのだろう。 父と兄がαで、βだかΩだか知らないけれど頼みの綱の母も仕事で海外……。
「αのお兄さんの他にきょうだいは? 」
駄目元で聞いた質問にも、「いません 」と答えが返ってきた。
京香の感じている不安が、真祝にもずんとのし掛かってくる。
知らずにため息がでた。
こりゃ、腹括るしかないかと真祝が思った時、京香の瞳からポロポロと涙が溢れ出す。
「わ、わたし…… 」
「京香ちゃん? 」
「柚井さん、わた、し、怖…… 」
堪えていた限界が頂点まで達したのか、自分自身を両手で守るようにして震えている。
ポロポロと流れ落ちる涙にこちらまで苦しくなって、真祝の体は考えるより先に動いていた。
「大丈夫 」
「……っ?! 」
縮こまった小さな体を包むように抱き締めると、京香の体がビクンと揺れる。
「大丈夫だよ、怖くない。 俺が一緒に居るから 」
泣かないで……と囁くと、京香が真祝の腕に手を重ねてきた。 きゅっとしがみつく手に抱き締める力を強くすると、京香が体の強張りを弛める。
それとは反対に、激しくなる泣き声。
真祝は京香が泣き止むまでずっと抱き締め、子どもをあやすように京香の頭を撫でていた。
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