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しおりを挟む「ちくしょう! ふざけんなっ!! 」
閉まったドアに向けて、真祝は力任せにジャケットを投げ付けるが、ジャケットは途中で虚しく床に落ちた。
アイツ、最後にわざと自分の匂いを見せ付けていきやがった!
ジャケットを掛ける時に真祝を包んだ央翔の匂いは、ジャケットなんかとは比べ物にならなかった。
そして、そのことで、今、央翔が言ったことは全て本当のことなのだと、身を持って教えられた。
1人になった部屋で、頭が冷静になってくるのとは反対に、段々ぶるぶると身体が震えてくる。
怖い……、俺、どうなっちゃうの?
この数時間で起きた全てのことを受け止めきれない。
自分が、自分でなくなってしまうみたいだ。自分の身体なのに、違うものになってしまうみたいで怖くて仕方がない。
震える身体を、自分の両手で抱き締める。
「二海人、怖いよ ……」
好きな男に助けて欲しくて、スマホに視線をやるが、さっき央翔が言っていたことを思い出して泣きたくなってしまう。
本当に、二海人には恋人がいるのだろうか? 二海人は、俺のことが邪魔だったの……?
ぽすん……と、枕に頭を落とす。
二海人は、きっと生粋のヘテロだ。あの品行方正な男の隣には可愛いらしい女の子が似合う。いくらバース性がΩだといっても、男である自分をそういう目で見られなくてもしょうがなかったのかも知れない。
「でも、だからって、諦めきれないよ 」
ずっと好きだったのだ。自分の人生の3/4以上、ずっとずっと二海人に恋していた。
枕が、水分を含んで冷たくなってゆく。
疲れた……。何だか、すごく。
目を瞑れば、真っ暗な世界に落ちて行く感覚に襲われた。
俺は何のためにΩに生まれてきたの? 男なのに、Ωなんかに生まれてきた意味は?
意味は二海人だと、信じてきたのに。
ぐぅ……と、喉の奥が鳴った。
起きたら、何もかも失くなっていればいい。
今日、起こった出来事も、二海人への想いも。全て……。
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