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しおりを挟む「明日は海音ちゃんと2人でチュッキーランドに行きたいんだけどいいかしら? 」
「え、2人で? 」
真祝は夕食後のデザートに皆で食べていた、みすずのお土産のフルーツミルクレープをフォークから取り落としそうになる。
「そうなの、さっき約束しちゃったの 」
「ねぇー 」とみすずが言うと、「ねぇー」と海音も嬉しそうにみすずに返す。
「それって、俺達も一緒に行ったら…… 」
「駄目よ、海音ちゃんと2人でデートなんだから。折角の休日なんだし、たまには夫婦水入らずでゆっくりしなさい 」
夫婦水入らずって、それが1番困るのに。
結婚してから、ずっと俺達の間には海音が居た。二海人と二人っきりになってもどうすればいいのか分からない。
「それとも、大事な海音ちゃんを丸1日、私に預けるのは心配? 」
それは無い。みすずと三崎は、1人で子育てする自分をずっと助けてくれていた。発情期で苦しい時も、みすずが家に泊まってくれて自分と海音の面倒を見てくれた。
打算無く接してくれたみすずには、信頼と感謝の思いしかない。
「そんなことは無いですけど…… 」
チラリと二海人の方に視線を向けると、二海人がこちらを見ていてドキッとした。慌ててみすずに視線を戻すと、みすずが苦笑している。
「みすず、さん? 」
「あのね、さっき嵐柴さんには話をさせて貰ったの。あなた達には、じっくりと話す時間が必要よ 」
話したって、いつ? 俺が夕飯の用意をしてた時だろうか。一体何を話したのだろう?
「あぁ、そんな不安そうな顔をしないの。……もう、ほら 」
そう言うと、みすずが二海人の方へ肘を向ける。すると「すみません、 お言葉に甘えます 」と、二海人がみすずに頭を下げた。
「二海人っ! 」
「良かったな、海音 」
あっさりと承諾した二海人に驚いて名前を呼ぶ。けれど二海人は真祝の声が聞こえていないかの様に、わしゃわしゃと海音の頭を撫でた。
「うんっ! 」
「帰ってきたら、まほとパパに沢山楽しかった話を聞かせてくれよ? 」
「うんっ、たくさんするっ! いっぱいするっ! 」
両手を広げて、いっぱいを表現する海音に、真祝は何も言えなくなってしまう。
断る理由なんて、自分には何も思いつかない。
「よろしく、お願いします 」
言いながら、もしかしたら二海人は自分に話があるのかもと気付いた。
ずっと蟠っているのは、二海人がずっと好きだったという彼女のこと。
今もその彼女のことが好きで、自分と結婚はしたけれど、やっぱり大事なものはあげられないと言われるのかも知れない。それとも、もっと決定的なことを言われるのかも知れない。
考えれば考える程、蓄積された嫌な想像が頭の中を巡る。
でも、離婚は嫌だ。海音だって、こんなに懐いているっていうのに。
……いや、そうじゃない。心の中で自分の言葉に頭《かぶり》を振る。
俺が、嫌だ。俺が嫌なんだ。
好きと言ってくれなくたって、抱いてくれなくたって、側にさえ居られたらいい。
あぁ、もう、明日なんて来なきゃいいのに。
……幾らそう思っていても、朝はやって来る。
昨夜は色々なことを考え過ぎて、睡眠不足もいいところだ。
「それじゃあ、宜しくお願いします。みすずさん 」
「それじゃあ、夕飯は食べて帰ってくるけど心配しないでね 」
「海音も、みすずさんの言うこと、ちゃんと聞くんだぞ 」
「はいっ」と元気良く返事をする海音と目線を同じ高さにして、「気を付けてな 」と、柔らかな頬にキスをすると、海音もチュッと真祝の頬にキスを返す。
「ほら、パパにも 」
隣りに居た二海人の方を見て促せば、背伸びをした海音を二海人がひょいと抱き上げた。
きゃっきゃっと喜びながら、海音が二海人の頬にキスをする。すると、二海人がちゅっちゅっと頬やおでこにお返しをするから、海音がきゃあとまたはしゃいだ。
こんなに可愛がってるんだから、俺達のこと捨てるなんてことしないよな? 二海人。
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