アメリカンダイアリー

前兆

これは、アメリカに住む女子高生ジェシカの人生の変貌についてのお話である。

「ジェシカ、ジェシカ」
私を呼ぶ母の声で目を覚ました。私は今から学校に行かなくてはならない、憂鬱だ。
学校に友達になんていないし、ましてはボーイフレンドなんているわけもない。学校に行くモチベーションなんてゼロに近しい。
しかし、私は将来成功して、高校で浮かれてチャラチャラしている奴らを見返さないといけない、そのためだけに今日も勉強をしに行く。なんて素晴らしいことだろう。
送迎の車に乗ると、母に私の理想の学園生活をまるでリアルの事かのように語る。母は嬉しそうに毎日微笑んでいた。
学校に着くなり、クラスメイトが騒がしかった、どうやら転校生が来るらしい。私の学校は田舎ということもあり人数が少なく転校生が来る事なんてとても珍しい。
チャイムが鳴りクラスメイトがそれぞれの席に座りだす、先生が入ってくると、その後ろに転校生の陰が見える。
転校生が入ってくるなり、私はたちまち目を離せなかった。
なんと転校生は、見る人全員を沈めてしまいそうな海のような青い瞳、とても綺麗で顎下まである金色の髪、何かを企んでいそうな口角のあがった唇、つまり何が言いたいかと言うととてつもなくイケメンだったと言う事だ。
「エドワードです。どうぞよろしく」
たったそれだけの言葉なのに女の子は彼に夢中になっていた。（私も例外ではない）

幸運と言うべきなのか。彼は私の席のとなりに座ることになった、席に着くなり彼は私に手を差し伸べる
「よろしく、君名前は？」
震えながら彼の手を握り、手汗が皮膚から溢れないよう細心の注意を払う。
「よろしく、私ジェシカ！」
声がひっくり返ってしまった。
気を取り直し
「ゴホンッ、私はジェシカって言うの、どうぞよろしく」
顔がサウナに入った時のように熱い、手汗が溢れる前に手を離した。
彼は静かに私を見つめ、口角を少し上げ、吸い込まれそうな青くて猫のように吊った目の目尻をやんわり下げ、その美しく優しげな顔で私に「ふふっよろしくジェシカ」と言った。
ただ隣の席になっただけ、それだけ、だから彼は私に手を伸ばして挨拶したの。ただそれだけの話。私は自分の全身の温度を冷ますため自分に言いきかせた。
クラスの女の子の嫉妬の的になってしまったと思った矢先、女子たちは自分の良いところを彼にアピールしようと彼に群がった。
私は地味すぎて嫉妬の対象にもならないみたい。
その時群がる女子の間から私の事を一瞬見つめ、少し微笑んでいた彼の事を私は知らなかった。、、