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君のための新食感
この場で一番偉い人
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証明……されたのだろうか。
テレコの言葉に、観衆はまるでお祭りのように沸いていた。
ただそんなことよりも、僕は満腹で寝そべっているテレコが嬉しい。
だって僕は、彼女のための料理をずっと考えていたんだ。
テレコはミーチュリアの料理は豪快な男の料理だと言っていた。
だからこそ、フランス料理の前菜風の、色とりどりのプリンセス料理を並べた。野菜のテリーヌに、肝臓のパテ、一口カップビシソワーズ。
もしそれらが鮮やかに映ったのであれば、食べ慣れた肉だってドレスアップされたはずだ。
——ステーキは好きだけど、あたしにはちょっと疲れるのよね。
かつてテレコは、自国の料理に対してそんな風に評した。彼女の言葉の通り、ミーチュリアの牛肉は筋肉質だ。赤身の旨味が強く食べ応えがある。それを豪快に齧り付くのがミーチュリアンステーキ。
でもそれは、顎の細いテレコには少しフィットしていない。
だから僕は、それをやわらか加工することにした。
肉に無数の細かな切れ目を入れて、そこにスライムの細胞と牛脂を混ぜたものを注入する。
名付けて『スライムインジェクション牛』。
これにより上質な赤身のしっかりとした牛肉が、口の中でとろける霜降り牛へと進化する。
実際、それはテレコの琴線に触れたのだろう。
彼女のナイフとフォークの手は止まらず、最終的に仰向けに寝かせるに至ったのだから。
「おまえらわからないのかぬ! これこそが魔法薬の効果だぬ! テレコは魔法薬じゃないって、言わされてるだけなんだぬ!」
「じゃ、じゃあ、あのテレコ様の反魔法《アンチマジック》が破られたって言うのか!?」「それはないでしょう」「第一俺も魔法使いだが、アジノ乇卜に魔力を感じたことはないね」
「うるさいぬうるさいぬうるさいぬ! とにかく魔法薬が使われてたんだぬ!」
「そうかもしれないけど、テレコ様が正気に戻ってから改めて確かめればいいんじゃないか?」
「ダメだぬ! 今すぐに裁定を下すんだぬ!」
言うと、メビルリムザはテレコの肩から降りた。
そしてみるみるうちに巨大化し、それどころか自身の形さえ変えた。
メビルリムザはたちまち黒装束に身を包んだ痩身の大男になった。
放たれる——殺気。
「灼熱酒場オーナー、ヒートレオン。魔法薬汚染の首謀者、シロ。及び協力者で給仕のサラサ」
口元のヌメりがなくなったためか、発音が明瞭だ。
片手にはレイピア、もう片方の手には短い杖を持っている。
剣も魔法も使えるのかもしれない。
「おまえたちは、処刑だ」
瞬間、ガキィンという音が耳をつんざいた。
それは結果からいえば、メビルリムザの僕に対するレイピアの一閃を観衆の一人が防いでくれたものだった。
「メビルリムザ、そりゃ拙速だろう。姫が倒れてんのに、なんの権限だい?」
「別に俺はテレコの部下じゃない。どけ」
「困るんだよ、俺はこれからもこの店で飯を食うんだ。それはきっと、姫もそうさ。どくのはてめーだ」
「そうよ、私ももっとこの店の料理を食べたいわ!」
「魔法薬なんて言いがかりだろ。ただ旨いだけさ」
僕がきてからまだひと月ほど。
その中で通うようになってくれたお客様。
「おまえらが何を言おうが関係ない。俺はテレコに仕えているわけじゃない。俺の主人は、俺だ」
メビルリムザの主人が彼自身であったとしても。
僕はどうしても言いたいことがある。
「でもメビルリムザ。この場所で一番偉いのは君じゃないよ」
「なに?」
「僕の国ではこう言うんだ。『お客様は神様』って」
「死ね」
メビルリムザはさらに巨大化し、彼のレイピアが手先ごとぐにゃりと曲がった。軟体と化したそれはお客様の剣を絡め取り、そのまま溶かしてしまった。
「別に手ごと解かしてもよかったんだが」
「おお、おい……嘘だろ」
そのまま彼は踵を返して店外へと逃げた。
「お客様ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「おいおい、なんて魔力」
「前衛はやばい。そのまま溶かされるぞ。戦うなら魔法使いだろ」
「よく見ろ、テレコ姫から吸収して自分の力にしている!」
目を凝らすと、テレコから光の線がいくつもメビルリムザに伸びていた。
「じゃあメビルリムザの魔力は、テレコ様級ってこと……?」
「馬鹿を言え。俺自身の魔力もあるんだぞ? さぁ、おまえたち。選べ。こいつらと同罪になり処刑されるか、あるいはこの場所からいなくなるか」
「くそ、こんなところで死んでられるか!」
「さ、流石にそんな化け物の相手はできねぇ」
「ごめん、ごめんね! この埋め合わせはいつか必ず⭐︎」
そう言って誰もが我先にと灼熱酒場から出て行ってしまった。
「お客様ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
テレコの言葉に、観衆はまるでお祭りのように沸いていた。
ただそんなことよりも、僕は満腹で寝そべっているテレコが嬉しい。
だって僕は、彼女のための料理をずっと考えていたんだ。
テレコはミーチュリアの料理は豪快な男の料理だと言っていた。
だからこそ、フランス料理の前菜風の、色とりどりのプリンセス料理を並べた。野菜のテリーヌに、肝臓のパテ、一口カップビシソワーズ。
もしそれらが鮮やかに映ったのであれば、食べ慣れた肉だってドレスアップされたはずだ。
——ステーキは好きだけど、あたしにはちょっと疲れるのよね。
かつてテレコは、自国の料理に対してそんな風に評した。彼女の言葉の通り、ミーチュリアの牛肉は筋肉質だ。赤身の旨味が強く食べ応えがある。それを豪快に齧り付くのがミーチュリアンステーキ。
でもそれは、顎の細いテレコには少しフィットしていない。
だから僕は、それをやわらか加工することにした。
肉に無数の細かな切れ目を入れて、そこにスライムの細胞と牛脂を混ぜたものを注入する。
名付けて『スライムインジェクション牛』。
これにより上質な赤身のしっかりとした牛肉が、口の中でとろける霜降り牛へと進化する。
実際、それはテレコの琴線に触れたのだろう。
彼女のナイフとフォークの手は止まらず、最終的に仰向けに寝かせるに至ったのだから。
「おまえらわからないのかぬ! これこそが魔法薬の効果だぬ! テレコは魔法薬じゃないって、言わされてるだけなんだぬ!」
「じゃ、じゃあ、あのテレコ様の反魔法《アンチマジック》が破られたって言うのか!?」「それはないでしょう」「第一俺も魔法使いだが、アジノ乇卜に魔力を感じたことはないね」
「うるさいぬうるさいぬうるさいぬ! とにかく魔法薬が使われてたんだぬ!」
「そうかもしれないけど、テレコ様が正気に戻ってから改めて確かめればいいんじゃないか?」
「ダメだぬ! 今すぐに裁定を下すんだぬ!」
言うと、メビルリムザはテレコの肩から降りた。
そしてみるみるうちに巨大化し、それどころか自身の形さえ変えた。
メビルリムザはたちまち黒装束に身を包んだ痩身の大男になった。
放たれる——殺気。
「灼熱酒場オーナー、ヒートレオン。魔法薬汚染の首謀者、シロ。及び協力者で給仕のサラサ」
口元のヌメりがなくなったためか、発音が明瞭だ。
片手にはレイピア、もう片方の手には短い杖を持っている。
剣も魔法も使えるのかもしれない。
「おまえたちは、処刑だ」
瞬間、ガキィンという音が耳をつんざいた。
それは結果からいえば、メビルリムザの僕に対するレイピアの一閃を観衆の一人が防いでくれたものだった。
「メビルリムザ、そりゃ拙速だろう。姫が倒れてんのに、なんの権限だい?」
「別に俺はテレコの部下じゃない。どけ」
「困るんだよ、俺はこれからもこの店で飯を食うんだ。それはきっと、姫もそうさ。どくのはてめーだ」
「そうよ、私ももっとこの店の料理を食べたいわ!」
「魔法薬なんて言いがかりだろ。ただ旨いだけさ」
僕がきてからまだひと月ほど。
その中で通うようになってくれたお客様。
「おまえらが何を言おうが関係ない。俺はテレコに仕えているわけじゃない。俺の主人は、俺だ」
メビルリムザの主人が彼自身であったとしても。
僕はどうしても言いたいことがある。
「でもメビルリムザ。この場所で一番偉いのは君じゃないよ」
「なに?」
「僕の国ではこう言うんだ。『お客様は神様』って」
「死ね」
メビルリムザはさらに巨大化し、彼のレイピアが手先ごとぐにゃりと曲がった。軟体と化したそれはお客様の剣を絡め取り、そのまま溶かしてしまった。
「別に手ごと解かしてもよかったんだが」
「おお、おい……嘘だろ」
そのまま彼は踵を返して店外へと逃げた。
「お客様ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「おいおい、なんて魔力」
「前衛はやばい。そのまま溶かされるぞ。戦うなら魔法使いだろ」
「よく見ろ、テレコ姫から吸収して自分の力にしている!」
目を凝らすと、テレコから光の線がいくつもメビルリムザに伸びていた。
「じゃあメビルリムザの魔力は、テレコ様級ってこと……?」
「馬鹿を言え。俺自身の魔力もあるんだぞ? さぁ、おまえたち。選べ。こいつらと同罪になり処刑されるか、あるいはこの場所からいなくなるか」
「くそ、こんなところで死んでられるか!」
「さ、流石にそんな化け物の相手はできねぇ」
「ごめん、ごめんね! この埋め合わせはいつか必ず⭐︎」
そう言って誰もが我先にと灼熱酒場から出て行ってしまった。
「お客様ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
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