39 / 40
君のための新食感
蝸牛
しおりを挟む
「これであとはおまえたちを処分するだけだ」
いまこの灼熱酒場には、テレコとメビルリムザ、僕、ヒートレオン、サラサしか残っていない。ここに集まった冒険者たちでさえ、束になっても目の前の使い魔に敵わない。
それはビリビリと震える殺気。それは魔力の素養のない僕にさえ届く。
「……お、おい。ちょっと待ってくれよメビルリムザ。わ、悪いのは俺だけじゃねーか。俺がこの店の責任者だぞ!」
一歩前に出るヒートレオンはしかし、その声が震えている。
「いや、ないな。むしろこの中で誰か一人生かすとすればおまえだ。確実に処刑しなきゃならないのはシロとサラサだ」
「そんなのおかしいだろ!」
「何もおかしくはない。魔法薬はシロのスキルによって生み出されている」
「ひゃ、百歩譲ってそれは正しかったとして——」
ゆ、譲らないで!
「サラサちゃんは関係ねぇ! うちの給仕をやってただけだ!」
「そうだな、まったく関係ない」
「本当に関係ねぇんだ! 本当だ! ……え、ちょっと待てよ。そうなの?」
「ああ、魔法薬とは無関係だ」
「え、ちょっと待てよどゆことだ? サラサちゃんは助かるってことか?」
「いや殺す」
「なんでだ!」
「サラサはカラーブラッドだ」
「…………?」
ヒートレオンはぽかんと言葉を失った。
僕も意味がわからない。
「それになんの関係があるのさ」
メビルリムザは鋭い目をさらに細めた。
「サラサが才能を開花させ、優秀な冒険者になるかもしれない」
「それが?」
「危険な芽は摘むべきだ。魔王様が復活なさるというのに」
メビルリムザはもう僕たちを処分すると決めているので、本音を喋ったのだと思う。もう何を喋ったとしても、僕たちの言葉は外に届くことはないから関係がないのだ。
僕はメビルリムザを勘違いしていた。
「メビルリムザは、テレコの使い魔じゃなかったんだね」
「? だったらどうした」
メビルリムザが仕えているのは魔王であって、テレコではない。
仲間で、テレコのパートナーとなって支えているのがメビルリムザだと思っていた。しかし実際は、テレコを利用していたに過ぎなかった。
そして実際、仰向けに倒れるテレコはメビルリムザに魔力を吸われどんどん血色を失っている。
王女の使い魔ともあれば、そこに善意の一つもあるかと思っていた。なにせ僕自身、このアジノ乇卜が魔法薬でないと断言できないのだから。しかし改めて考えれば、アジノ乇卜に関してあのロードウルフも、善意の塊で魔法に精通するサラサでさえも何も問題を指摘していない。
問題ないものを問題あるように見せ、本当の目的を裏に隠していたのだ。
「戦ってもいいんだな、と思って」
震える体を誤魔化して、僕は虚勢を放った。しかしそんな僕の頭の中に、唐突な声が届いた。
——ダメだよ逃げなきゃ
足元には尻尾を振ってすり寄るアミノの姿。この使い魔が、僕の頭に直接語りかけている。
——あれはロードウルフ様に比肩しうる魔族だ。戦っちゃいけない
テレコだって相当の手練れなはずで、僕の見立てでもサラサよりも遥かに強い。そのテレコに取り憑いている魔族なのだ。
どうやって逃げる?
どうやって逃げる?
僕が囮になれば、アミノがサラサとヒートレオンを連れ出すことは可能か?
あるいは倒れているテレコも助けなきゃ。
そんなの、僕が囮になったところで、無理——
「————魔力吸収!」
塩、ふぁさー。
メビルリムザ、ふしゅー、しゅるるるるる。
「ぐ、ぐ、ぐぇええええええええええ!!! なな、何をした!」
「え、ちょっと待ってください! 想像以上に効いてます! 効いてますよ、シロさん!」
メビルリムザ、塩でめっちゃ溶けてる!
あ、たぶんメビルリムザって元々カタツムリ的な巻貝だから、浸透圧で水分が抜けちゃうんだ!
「いいぞ、もっとやるんだサラサ!」
「魔力吸——」
「あ、それは大丈夫。塩をかけるだけでいいよ」
「え、そうなんですか? えい! えい!」
しゅるるるるるる。
「ぐええ。死んだん——」
いまこの灼熱酒場には、テレコとメビルリムザ、僕、ヒートレオン、サラサしか残っていない。ここに集まった冒険者たちでさえ、束になっても目の前の使い魔に敵わない。
それはビリビリと震える殺気。それは魔力の素養のない僕にさえ届く。
「……お、おい。ちょっと待ってくれよメビルリムザ。わ、悪いのは俺だけじゃねーか。俺がこの店の責任者だぞ!」
一歩前に出るヒートレオンはしかし、その声が震えている。
「いや、ないな。むしろこの中で誰か一人生かすとすればおまえだ。確実に処刑しなきゃならないのはシロとサラサだ」
「そんなのおかしいだろ!」
「何もおかしくはない。魔法薬はシロのスキルによって生み出されている」
「ひゃ、百歩譲ってそれは正しかったとして——」
ゆ、譲らないで!
「サラサちゃんは関係ねぇ! うちの給仕をやってただけだ!」
「そうだな、まったく関係ない」
「本当に関係ねぇんだ! 本当だ! ……え、ちょっと待てよ。そうなの?」
「ああ、魔法薬とは無関係だ」
「え、ちょっと待てよどゆことだ? サラサちゃんは助かるってことか?」
「いや殺す」
「なんでだ!」
「サラサはカラーブラッドだ」
「…………?」
ヒートレオンはぽかんと言葉を失った。
僕も意味がわからない。
「それになんの関係があるのさ」
メビルリムザは鋭い目をさらに細めた。
「サラサが才能を開花させ、優秀な冒険者になるかもしれない」
「それが?」
「危険な芽は摘むべきだ。魔王様が復活なさるというのに」
メビルリムザはもう僕たちを処分すると決めているので、本音を喋ったのだと思う。もう何を喋ったとしても、僕たちの言葉は外に届くことはないから関係がないのだ。
僕はメビルリムザを勘違いしていた。
「メビルリムザは、テレコの使い魔じゃなかったんだね」
「? だったらどうした」
メビルリムザが仕えているのは魔王であって、テレコではない。
仲間で、テレコのパートナーとなって支えているのがメビルリムザだと思っていた。しかし実際は、テレコを利用していたに過ぎなかった。
そして実際、仰向けに倒れるテレコはメビルリムザに魔力を吸われどんどん血色を失っている。
王女の使い魔ともあれば、そこに善意の一つもあるかと思っていた。なにせ僕自身、このアジノ乇卜が魔法薬でないと断言できないのだから。しかし改めて考えれば、アジノ乇卜に関してあのロードウルフも、善意の塊で魔法に精通するサラサでさえも何も問題を指摘していない。
問題ないものを問題あるように見せ、本当の目的を裏に隠していたのだ。
「戦ってもいいんだな、と思って」
震える体を誤魔化して、僕は虚勢を放った。しかしそんな僕の頭の中に、唐突な声が届いた。
——ダメだよ逃げなきゃ
足元には尻尾を振ってすり寄るアミノの姿。この使い魔が、僕の頭に直接語りかけている。
——あれはロードウルフ様に比肩しうる魔族だ。戦っちゃいけない
テレコだって相当の手練れなはずで、僕の見立てでもサラサよりも遥かに強い。そのテレコに取り憑いている魔族なのだ。
どうやって逃げる?
どうやって逃げる?
僕が囮になれば、アミノがサラサとヒートレオンを連れ出すことは可能か?
あるいは倒れているテレコも助けなきゃ。
そんなの、僕が囮になったところで、無理——
「————魔力吸収!」
塩、ふぁさー。
メビルリムザ、ふしゅー、しゅるるるるる。
「ぐ、ぐ、ぐぇええええええええええ!!! なな、何をした!」
「え、ちょっと待ってください! 想像以上に効いてます! 効いてますよ、シロさん!」
メビルリムザ、塩でめっちゃ溶けてる!
あ、たぶんメビルリムザって元々カタツムリ的な巻貝だから、浸透圧で水分が抜けちゃうんだ!
「いいぞ、もっとやるんだサラサ!」
「魔力吸——」
「あ、それは大丈夫。塩をかけるだけでいいよ」
「え、そうなんですか? えい! えい!」
しゅるるるるるる。
「ぐええ。死んだん——」
0
あなたにおすすめの小説
辺境で静かに暮らしていた俺、実は竜王の末裔だったらしく気づけば国ができていた
平木明日香
ファンタジー
はるか五億四千万年前、この星は六柱の竜王によって治められていた。火・水・風・土・闇・光――それぞれの力が均衡を保ち、世界は一つの大きな生命のように静かに巡っていた。だが星の異変をきっかけに竜の力は揺らぎ、その欠片は“魂”となって新たな生命に宿る。やがて誕生した人類は文明を築き、竜の力を利用し、ついには六大陸そのものを巨大な封印装置へと変えて竜王を眠りにつかせた。
それから幾千年。
現代では六つの大国がそれぞれ封印を管理し、かろうじて世界の均衡を保っている。しかし各地で異常な魔獣が出現し、封印の揺らぎが噂されはじめていた。
そんな世界を気ままに旅する青年がいる。名はブラック・ドラグニル。三年前からハンターとして魔獣を討伐し、その肉を味わいながら各地を渡り歩く放浪者だ。規格外の実力を持ちながら名誉や地位には興味がなく、ただ「世界のうまいものを食べ尽くす」ことを楽しみに生きている。
ある日、光の王国ルミナリア近郊で王女ユリアナが大型魔獣に襲われる事件が起きる。死を覚悟した騎士団の前に現れたブラックは、その怪物をわずか数十秒で討ち倒す。彼にとっては雑魚同然だったが、その圧倒的な強さは王国中に知れ渡る。王女は自由に生きる彼の姿に心を奪われるが、ブラックは次の目的地へ向かう計画を練るばかり。
だが彼自身はまだ知らない。
自らが竜族の末裔であり、世界を再び“統合”へ導く鍵となる存在であることを。
竜の封印が揺らぐとき、自由を愛する青年は世界の命運を左右する選択を迫られる。
これは、竜の記憶と人の魂が交錯する壮大なファンタジー叙事譚である。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
元勇者は魔力無限の闇属性使い ~世界の中心に理想郷を作り上げて無双します~
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
魔王を倒した(和解)した元勇者・ユメは、平和になった異世界を満喫していた。しかしある日、風の帝王に呼び出されるといきなり『追放』を言い渡された。絶望したユメは、魔法使い、聖女、超初心者の仲間と共に、理想郷を作ることを決意。
帝国に負けない【防衛値】を極めることにした。
信頼できる仲間と共に守備を固めていれば、どんなモンスターに襲われてもビクともしないほどに国は盤石となった。
そうしてある日、今度は魔神が復活。各地で暴れまわり、その魔の手は帝国にも襲い掛かった。すると、帝王から帝国防衛に戻れと言われた。だが、もう遅い。
すでに理想郷を築き上げたユメは、自分の国を守ることだけに全力を尽くしていく。
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!
神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。
そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。
これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる