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1章
5話(あんぱん)
しおりを挟む「…ん.......」
硬さを失ったそれが、俺の中から引き抜かれる。
俺はあまりの激しさに疲れ、シーツへ体を埋めてしまった。当の本人は、まだ満足していないような顔をしているけれど。なぜ客間にベッドがあるのかと問うと、客人が気分を害しても直ぐに休めれるように配慮しているのだと言う。リディは、まさかこんなことに使うとは思わなかったと笑った。
「...はは...あんなに怯えていたのに.......最後には自らよがっていたじゃないか」
「ぁ、それは.......リディ…凄く上手かったから……」
「気持ちよかったか?」
「.....................」
俺は黙って頷く。
羞恥で顔が熱かった。
リディは俺を何故抱いたんだろう。今日初めてあった、それも男に何を感じたというのか。そう思案して押し黙っていると、そんな俺の疑問に気付いたのかリディは形のいい唇を歪ませた。
「お前を.......凄く、好ましいと思ったんだ。謙虚なところも…純粋なところも.......」
「…え.......リディ?」
至って真剣な顔で俺を見つめるリディ。俺は心臓がどくどくと音を立てているが、敢えて知らぬふりをする。
「ユミール.......お前を、俺のそばに置いていたい…」
そう熱の篭った声で伝えられ、驚いた。
ゆっくりとキスをされ、直ぐに離れる。名残惜しいと思ってしまう自分が恥ずかしかった。
「置いておくって…このお城に.......?」
「ああ。そうだな、.......ユミール、なにか得意なことはあるか?」
唐突に聞かれ、数秒黙ってしまったが俺は自分が得意としていたことを思い出す。
そう、料理だ。
雅が俺の料理を美味いと言ってくれた時から、俺は仕事の合間を縫って研究をした。シェフ.......とまではいかないがそこら辺の人間よりかは遥かに上手に作れると自負している。それを、俺はリディに伝えた。
「それはいいな、ユミール。今日からお前を、俺の専属シェフにしよう」
「.......え、えっ!?」
普段かなりいいものを食べているであろう貴族に、ただの平民が作ったものを食べさすのは気が引ける。それがたとえリディしか口に入れなくても、だ。顔を青くしているとリディは安心しろ、と笑った。
「お前の料理ならどんな物でもきっと美味いさ…俺は.......お前を好ましいと思っている。だから傍に置きたいんだ.......分かってくれるな?」
まるで拒否権はないと言われているようだった。
しかし、俺は別に嫌ではない。これからも彼のそばに居ていいんだと思うと、胸がどきりと高鳴った。
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