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プロローグ(すずひ)

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 「ここはお前の居るべき場所ではない」
 「この忌み子め!早く失せろ!」

 浴びせられた罵声の数々。
 それは全て櫻子わたしに向けてのものだ。
 本当は私には姉妹もいる。
 同じ時間に生まれ、同じタイミングで産声を上げた。
 だが、責められるのは私だけ。
 両親も静流しずるだけを可愛がっていた。
 生活をするのも、私だけは地下の自室。
 何もかもを隔離され、窮屈で仕方がなかった。

 「お母様、お早う御座います………」

 などと言うものなら、一瞥される後空気のように扱われることなど日常茶飯事。
 食事の時は、定時になると無言で地下の入口に置かれるのだ。

 私はこの先起きることにただただ怯えながら、死んだように生きている。
 どうせこの息苦しい生き心地から開放されることなどないのだから。
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