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第一章 始まり

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「せっかく綺麗になったんだし、美味しいものでも食べに行きましょう」
彼女が誘ってきた。

「行きつけの店でも、有るの?」

「こっちに来て初めて外食する。一人だと恥ずかしくて」

「じゃあ、今日まで何を食べてたんだよ?」

「お弁当を買ったり、ファーストフードをテイクアウトしてた」
女子大生が一人で外食するって、中々ハードルが高いようだ。

「外食じゃ、必要な栄養は取れないよ。
俺が作ってやるから、冷蔵庫の中を見てもいい?」

「いいけど、水くらいしかないよ」
開けてみると、飲み物と調味料くらいしか入ってない。

「よく生きてるね」

「だから困ってるの」

彼女の許可を貰って、キッチンを周りを見て回る。
フライパンや鍋は新品で、使った様子がない。
食器も真新しいものが揃ってるし、料理するには最適な環境だ。

「夕食を作るから、スーパーで買い出ししよう」

メイクを落としてから着替えて、駅前のスーパーに向かう。
途中に100円ショップが有ったので、キッチンで使うスポンジやフライ返し、鍋掴みなど小物類を買い漁る。

スーパーでは、キャベツ、人参、ほうれん草、さつま芋、白菜、大根、長ネギなどを選ぶ。
豚肉や厚揚げ、パックご飯、イチゴのパックなどを買った。

「野菜をいっぱい買うんだね」

「外食の欠点は、野菜が足りない事だ。
生野菜のサラダなんかじゃ、全然足りない」

部屋に戻って、キャベツを半分千切りにする。
人参も千切りにして、フライパン山盛りにした。
野菜の上に、薄切りの豚肉を一口大に切って並べる。
料理酒を振りかけ蓋をして、蒸し焼きにしていく。

温めたパックご飯をお茶碗に装って、テーブルの真ん中にフライパンのまま出す。
蓋を取ると、野菜の量が半分になっていた。

「熱を入れると、山盛りのキャベツがこれだけになる。
サラダじゃ足りないって言った意味が解っただろ」

器に装って、食べ始める。
彼女はポン酢にラー油で食べていた。

「シンプルな料理なのに、いくらでも食べられる」
彼女が2杯目を装っていた。

「体が野菜を求めてるんだ、いっぱい食べろ」

食べ終わったキッチンで、大根や人参、さつま芋を切る。
長ネギ、白菜、厚揚げも別に切って、用意しておく。

「何を作ってるの?」

「豚汁だ。二日分くらい作っておくから、食べる分だけレンジで温めろ。
これだけで、十分栄養は取れる」

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