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第二章 転機
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3人組ロックグループafterglowのデビュー曲「夏の果」、パイロット音源が送られてきた。
大人の恋が終わる、失恋ソングだった。
iPhoneに入れて、ずっと聞いている。
ライブハウスで人気が出たグループらしく、歌が上手い。
じっくりと聞いていると、涙が出るほど感情移入してしまう。
撮影は、一日で行われる。
千葉の太平洋側、海に面した貸別荘を使って撮影が始まった。
「出雲真凛です、よろしくお願いします」
「ボーカルのKEIです。今日はよろしくね」
晴天の中、海岸から別荘の庭、部屋の中まで順序良く撮影が続いていく。
KEIと二人で恋愛中の撮影が終わり、別れのラストシーンを撮影する準備をしていた時だった。
「場所を変える。みんな、移動するぞ」
突然の指示に、皆んな慌てて撮影機材を積み込んで車に乗った。
潰れて廃墟になったパチンコ屋の駐車場で、中央にたった一人で立たされる。
「サンダルを手に持って、裸足のほうがいいな。
真凛ちゃん、何があっても動かないでね」
昼間は映像監督を兼ねるカメラマン任せだった三角寛監督が、直々に指示をしてくる。
獲物を狙う様な眼に、怖くなるほどの気合いを感じた。
「真っ直ぐに、カメラだけを見て」
「判りました」
空は真っ黒な雲が勢いよく流れて、今にも降り出しそうだ。
「一発勝負だ、失敗は許さない」
スタッフに監督の激が飛ぶ。
「スタート」
一人で立ち尽くしていた。
遠くに雷鳴が響いて、ポツポツと振り始めた。
車のヘッドライトで照らされる中、動けない。
雨はどんどん強くなり、叩きつけるように降ってくる。
頭からずぶ濡れで、顔を雨が流れるほどだ。
急激に体温が奪われて、奥歯がカチカチと鳴る。
震えていても、OKが出ないので立ち続けた。
近くに落雷があっても、稲光で一瞬明るくなっても、続いた。
気が遠くなるほど長く、いつ終わるのか分からない。
「ハイ、OK。よく頑張った」
監督がずぶ濡れのまま走ってきて、抱き締められた。
「怖かった、真凛が死んじゃうって思った」
聖苑が、泣いていた。
大人の恋が終わる、失恋ソングだった。
iPhoneに入れて、ずっと聞いている。
ライブハウスで人気が出たグループらしく、歌が上手い。
じっくりと聞いていると、涙が出るほど感情移入してしまう。
撮影は、一日で行われる。
千葉の太平洋側、海に面した貸別荘を使って撮影が始まった。
「出雲真凛です、よろしくお願いします」
「ボーカルのKEIです。今日はよろしくね」
晴天の中、海岸から別荘の庭、部屋の中まで順序良く撮影が続いていく。
KEIと二人で恋愛中の撮影が終わり、別れのラストシーンを撮影する準備をしていた時だった。
「場所を変える。みんな、移動するぞ」
突然の指示に、皆んな慌てて撮影機材を積み込んで車に乗った。
潰れて廃墟になったパチンコ屋の駐車場で、中央にたった一人で立たされる。
「サンダルを手に持って、裸足のほうがいいな。
真凛ちゃん、何があっても動かないでね」
昼間は映像監督を兼ねるカメラマン任せだった三角寛監督が、直々に指示をしてくる。
獲物を狙う様な眼に、怖くなるほどの気合いを感じた。
「真っ直ぐに、カメラだけを見て」
「判りました」
空は真っ黒な雲が勢いよく流れて、今にも降り出しそうだ。
「一発勝負だ、失敗は許さない」
スタッフに監督の激が飛ぶ。
「スタート」
一人で立ち尽くしていた。
遠くに雷鳴が響いて、ポツポツと振り始めた。
車のヘッドライトで照らされる中、動けない。
雨はどんどん強くなり、叩きつけるように降ってくる。
頭からずぶ濡れで、顔を雨が流れるほどだ。
急激に体温が奪われて、奥歯がカチカチと鳴る。
震えていても、OKが出ないので立ち続けた。
近くに落雷があっても、稲光で一瞬明るくなっても、続いた。
気が遠くなるほど長く、いつ終わるのか分からない。
「ハイ、OK。よく頑張った」
監督がずぶ濡れのまま走ってきて、抱き締められた。
「怖かった、真凛が死んじゃうって思った」
聖苑が、泣いていた。
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