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第五章 大忙し

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カウンターにシャンパングラスが並べられて、ボトルが開けられた。
店のスタッフが手際よく、注いでいく。
すぐに皆さんに、配られた。

「では乾杯の音頭を、加山さんにお願いします」

「真凛ちゃん、おめでとう。乾杯!」

「「かんぱ~い」」

すぐに女装の皆さんに囲まれた。

「TVで見るより、何倍も綺麗」
「ビックリするほど、細い」
「夏の果MVの子が男って分かった時は、衝撃だった」
皆さんが、褒めてくださる。
聖苑と二人並んで、皆さんと撮影会になった。

やっと落ち着いて、カウンターに座った。
「何を差し上げましょうか?」先生が聞いた。

「ジントニックを頂きます」

すぐに出来上がり、一口飲んだ。

「美味しい、全くライムの苦味がしない」

「褒めてもらえて、作った甲斐がある」

「何で急に発声教室、辞めたんですか?」

「真凛ちゃんに、教えるのが怖くなった」

「何で?」

「君は、私のようなものが教えられる器じゃない。
この子はプロに磨かれるべきだ、そう思ったの」

「先生に教わった、姿勢やストレッチは今も続けてます」

「嬉しい。綺麗になるって確信してたけど、続くかだけが心配だった」

「心配させたんですね」

「夏の果のMVを見た時、泣いたわ。やっぱり出て来たってね」

「あれは三角監督が良かったから」

「貴方が、監督のインスピレーションを刺激したのよ。
真凛ちゃんの個性が、あの雨のシーンを引き出した。
自信を持っていいわ」

「ありがとうございます、こんなに褒めてもらえて自信がつきました」

「初めて会った時の衝撃は忘れない。
女装はいつからって聞いたら、1週間前って言ったでしょう。
あまりの可愛いらしさに、目眩がしたもの」

「最初、姿勢から直されました」

「2回目会った頃には、もう界隈で話題だったのよ。
渋谷に凄い子がいるって」

「スカウトされるまで、判らなかったです」

「界隈には、君の画像がいっぱい回ってた」
スマホの画像を見せてくれる。
デビュー前、聖苑とのデートがたくさん写っていた。

「見たことがないのが、結構あるね」
聖苑が言った。

「先生に、とっておきの画像を見せてあげる」
聖苑がスマホを操作して、一枚を見せた。

「デビュー前に、スタジオで撮ったの」
黒いドレスを着た宣材写真だった。
生意気過ぎるって、宣材には使われ無かったカットが写っていた。

「これは凄いな」
加山氏や伊集院先生も、褒めてくれた。

「このドレス、solemnityだったんです。運命ですね」

「義理人情で繋がってる」田中氏が言った。

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