上 下
109 / 322
第七章 紆余曲折

しおりを挟む
「これを見ろ、真凛のことが書いてある」
田中氏が月刊誌Orientを持って来た。

「それなら掲載する前に打診が合ったので、OKしておいた」
聖苑が言った。

月刊Orientは一流経済誌で、財界人やエリートサラリーマン向けのお堅い本だ。
それにfortunaの春木プロデューサーが対談していた。
内容は、中途採用やスカウトした人材の活用について話している。
この難しいテーマを、アイドル業界に例えて話していた。

「どんなに気をつけても、メンバーは慣れ合って競争しなくなる。
序列が固定されて、みんな新しいことに臆病になる。
これは、会社も一緒ではないですか」

「スタジアムコンサートの寸劇に、出雲真凛というジェンダーレスモデルに出てもらった。
彼がメンバーの研究生と、ステージ上でkissをした。
アイドルのステージで、ありえないことが起きた。
それがまた美しかった、観客の脳裏に刻まれたことだろう」

参考の画像で、真凛と莉緒がステージの中央でキスしていた。

「これは真凛が出したアイデアがベースになってました。
最近、TVで話題になったじゃんけん大会も、彼がほかのメンバーにも衣装を着せたいという発言がヒントになってます。
出雲真凛という部外者がメンバーだけじゃなく、制作スタッフを刺激してくれました。」

「Japan Ladys Fashion Weekではライバル視されているcloud nineと組んで、ステージを沸かせました。
fortunaのメンバーやスタッフが、彼のやることに刺激を受けています」

「あなたの会社は、定期入社の社員ばかり重用してませんか?
中途採用やスカウトした社員を生かしてますか?」
最後に、そう括られていた。

概要欄に出雲真凛の経歴が書いてある。
一ノ瀬流通グループ傘下ガーデンズオフィス所属、solemnity専属モデルと書いてあった。

「ここまで褒められると、怖くなる」

「真凛を例に上げて、遠回しにメンバーやスタッフに活を入れてるんだろう」
田中氏が感想を言ってる。

すぐに、TVや雑誌の取材依頼が押し寄せた。
今はsolemnityの専属モデルに集中しているという理由をつけて、全部断った。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

運命の番を見つけることがわかっている婚約者に尽くした結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,393pt お気に入り:262

王子の宝剣

BL / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:441

夜の帝王の一途な愛

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,100pt お気に入り:85

勘違いしちゃってお付き合いはじめることになりました

BL / 完結 24h.ポイント:2,898pt お気に入り:550

自殺日記

現代文学 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:3

裏切りメイドの甘い贖罪

恋愛 / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:187

おかしくなったのは、彼女が我が家にやってきてからでした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,882pt お気に入り:3,851

処理中です...