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最終章
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春のsolemnity meetingの実施プランを纏め上げて、実施チームに渡す。
俺の要求を叶えるのは、ファッションプランナーの仕事だ。
勿論、会議で質問も受けるし、現場でアドバイスもする。
だが現場の責任者は、あくまでプランナーで全てを任せていた。
今回から、田北 由布女史が指揮を取る。
彼女はデザイナーを挫折してたが、持ち前のセンスで裏方として頑張っていた。
加山社長が見出した逸材で、俺がプロデューサーになった時を同じくしてプランナー助手に抜擢されている。
言わば、同期と言える存在だ。
田北女史を鍛え、育てるのも、俺に与えられたミッションになっていた。
……
3月中旬の日曜日、大学の卒業式が行われる。
朝から月奈が俺たちのマンションに来て、聖苑のメイクを仕上げていた。
「プライベートだから、わざわざ来なくていいのに」
「私と彼をロンドンに連れて行く為に、お世話になりました。
個人の意志で来てるんですから、気にしないで下さい」
「いやいや、日曜日の朝8時から来てくれたら恐縮するよ」
楽しそうに、聖苑と月奈が言い合っていた。
俺と一ノ瀬聖苑は、お揃いのsolemnity Britishのスーツを着て行く。
聖苑はフレアスカートで、ネクタイの代わりにスカーフを巻いていた。
俺はボタンダウンシャツに、スクールカラーである青に黄色のストライプタイを月奈が結んでくれる。
solemnityのスタイリストが俺達の為に選んだ、卒業式用のアレンジだ。
「素敵、理想のカップルが出来上がった」
「月奈ちゃん、ありがとう。ちょっと真凛の気分が味わえた」
聖苑は、メイクからスーツ、小物まで自分の為に用意して貰った事に感動していた。
solemnityを買うほどのお嬢様だから、言えば今までにでも出来ただろう。
だが節度を持って無理を言わないのも、彼女らしかった。
二人で、一ノ瀬家の送迎を断った。
一緒に歩いて行くのも最後だ、色々なことが思い出される。
「いつもながら仲がいいな。流石に二人共、スーツが似合ってる」
一年の時から仲間の渡辺 雅紀たちが、俺たちを待っていた。
「渡辺たちも、スーツの着こなしが出来てる。
みんな、就活で鍛えられたんだな」
「ああ、真凛みたいに簡単には社長には会えなかったけどな」
いつものように、俺がTVで会社訪問をしていた事を弄ってくる。
このメンバーのお陰で大学にいる間は、学生でいられた。
「雅紀たちには感謝してるよ、ずっと仲間でいてくれてありがとう」
「俺たちも楽しかった、みんなに自慢出来たしな」
俺たちのやり取りを、伊王と一ノ瀬の両親が見守っている。
一ノ瀬社長も今日だけは、只の父親の顔になっていた。
俺の要求を叶えるのは、ファッションプランナーの仕事だ。
勿論、会議で質問も受けるし、現場でアドバイスもする。
だが現場の責任者は、あくまでプランナーで全てを任せていた。
今回から、田北 由布女史が指揮を取る。
彼女はデザイナーを挫折してたが、持ち前のセンスで裏方として頑張っていた。
加山社長が見出した逸材で、俺がプロデューサーになった時を同じくしてプランナー助手に抜擢されている。
言わば、同期と言える存在だ。
田北女史を鍛え、育てるのも、俺に与えられたミッションになっていた。
……
3月中旬の日曜日、大学の卒業式が行われる。
朝から月奈が俺たちのマンションに来て、聖苑のメイクを仕上げていた。
「プライベートだから、わざわざ来なくていいのに」
「私と彼をロンドンに連れて行く為に、お世話になりました。
個人の意志で来てるんですから、気にしないで下さい」
「いやいや、日曜日の朝8時から来てくれたら恐縮するよ」
楽しそうに、聖苑と月奈が言い合っていた。
俺と一ノ瀬聖苑は、お揃いのsolemnity Britishのスーツを着て行く。
聖苑はフレアスカートで、ネクタイの代わりにスカーフを巻いていた。
俺はボタンダウンシャツに、スクールカラーである青に黄色のストライプタイを月奈が結んでくれる。
solemnityのスタイリストが俺達の為に選んだ、卒業式用のアレンジだ。
「素敵、理想のカップルが出来上がった」
「月奈ちゃん、ありがとう。ちょっと真凛の気分が味わえた」
聖苑は、メイクからスーツ、小物まで自分の為に用意して貰った事に感動していた。
solemnityを買うほどのお嬢様だから、言えば今までにでも出来ただろう。
だが節度を持って無理を言わないのも、彼女らしかった。
二人で、一ノ瀬家の送迎を断った。
一緒に歩いて行くのも最後だ、色々なことが思い出される。
「いつもながら仲がいいな。流石に二人共、スーツが似合ってる」
一年の時から仲間の渡辺 雅紀たちが、俺たちを待っていた。
「渡辺たちも、スーツの着こなしが出来てる。
みんな、就活で鍛えられたんだな」
「ああ、真凛みたいに簡単には社長には会えなかったけどな」
いつものように、俺がTVで会社訪問をしていた事を弄ってくる。
このメンバーのお陰で大学にいる間は、学生でいられた。
「雅紀たちには感謝してるよ、ずっと仲間でいてくれてありがとう」
「俺たちも楽しかった、みんなに自慢出来たしな」
俺たちのやり取りを、伊王と一ノ瀬の両親が見守っている。
一ノ瀬社長も今日だけは、只の父親の顔になっていた。
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