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最終章

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「2週間もイギリスに居るのに、自由時間が2日しかない」

一ノ瀬流通グループ本社から送られて来たスケジュールを見ながら、一ノ瀬聖苑は不機嫌だった。
正式に出張になった為に、solemnityだけじゃなく各事業部からスケジュールを抑えられている。
ティールームだけでも、8か所も視察があった。

「毎日、ティールームに通うんだよ。
絶対、飽きちゃうよ」

「文句を言わないの。遊びに行くんじゃない、仕事なんだ」

「月奈ちゃんたちの方が、楽しそう。
田中君なんか、自由時間にラグビーを2試合観戦する予約してるんだって」

「月奈はコスメファクトリー訪問が何社か入っていて、実習もあるんだ。
田中氏も俺たちのスケジュール管理と現地スタッフの間に入って、大変だと思うよ」

聖苑は自分でお金を払って卒業旅行を楽しむつもりだったのに、出張になったのが不満だ。
ファーストクラスで行くつもりがビジネスクラスになったのも、気に入らない。

「4年も海外旅行を我慢してたんだ、二人分の差額払うからファーストクラスにしようよ」

「判った。ファーストクラスで行くから、向こうでは我が儘を言わない。
約束出来る?」

「蒼海が言うなら仕方がないわ」
彼女は、自分が言った事には責任を持つ人間だ。
約束が出来た事で、俺は一安心した。


……

4月第2週、深夜便で俺たちは羽田からロンドンに旅立った。

14時間後の早朝に英国ヒースロー空港に到着すると、一ノ瀬流通グループのヨーロッパ駐在員が出迎えてくれる。
手配された車で、コンドミニアムに連れて行かれた。
どうやらロンドンでの生活を満喫出来るように、2ベッドルームのマンションが用意されていた。

「本社から、皆さんがロンドンを満喫出来るように指示が来てます。
生活を楽しめるように、コンドミニアムを用意しました」

「ありがとう、ございます。
これから、2週間お世話になります」

「まずは、飛行機の疲れを癒してください。
午後からは昼食を兼ねて、アフタヌーンティーを楽しんで頂きます」

ドライバーを兼ねた現地ガイドが案内してくれるので、田中マネージャーが駐在員と念入りに打ち合わせをしている。
聖苑と月奈はお互いのベッドルームを決めて、持って来た荷物を広げていた。

「ホテルじゃない分、キッチンも付いてるし、4人一緒だから安心だね」
聖苑はここが気にいったようだ。

「君が田中君を連れて来たのは、お手柄だ。
スケジュール管理を自分たちでしなくて済む」

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