（完結） 転生して１６歳から人生やり直し

囲まれてみた

「私たちの事、覚えてないの？」
帰ろうとすると、仲が良かったと思われる女子３人に囲まれる。

「ゴメン」
失語症のフリをして、これ以上何も言わなかった。

「ついてきて」
部活生で賑わう、学食に連れて行かれた。

「本当にわからないの？」
答えるとますますツッコまれそうなので、縦に首を振った。

「詩穂里よ、坂井　詩穂里さかい　しおり」
リーダー格の女子が言った。

「月田　朱莉つきた　あかり」「植田　奈央うえだ　なお」
次々に名乗ってくる。

「詩穂里、朱莉、奈央」
確認するように、ゆっくりと声に出した。

「失語症って、本当なんだ」
詩穂里は、まだ疑っていた。

「大学病院で、診断された」
一言ずつ、噛み締めるように答える。

「駅で、女と手をつないでたでしょ？」
「誰なの？」
「喋れないんだよね」
追求が厳しい。

「幼馴染。気分転換で連れ出してくれた」
ゆっくりと答える。

「好かれて、困ってたよね」
こいつらに話してたんだ。
面倒な事になりそうなので、最後の手を使った。

「俺をすごく心配してくれて、付き合うことにした」

一気に場が白けた。

「じゃあ、さようなら」
俺は席を立った。