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「じゃあ、元気で頑張って。さよなら」
私は家の近所で、彼の車から降りた。
キャリーバッグを引いて、実家に入る。
「お帰り、待ってた」
両親が出迎えてくれると、急に体の力が抜けた。
「やっぱり、家は良いね」
台所で私の好物を作っている、母の背中が眩しかった。
思わず、後ろから抱きついた。
「何かあったの?」
母に隠し事は出来ない。
「智貴が、お見合いするんだって。
相手のお嬢さんに悪いから、もう会わない事にした」
「そう、良かったじゃない。
これで、あなたも前を向けるでしょう」
いつも母の言葉は温かい。
私を否定しないで、導いてくれる。
夕食で、最近の話をした。
クリスマスに、イギリス人のパーティーに呼ばれた事。
その時に訪問着を着たことや、彼女にも着せてあげたこと。
仙台に行って理想的なパン屋に実習に行った話と、学校祭でパン屋の模擬店をすることなど、ずっと話していた。
「着物を着てるのは良いわ。
心に余裕がある証拠、これからも続けてね」
「紗栄子の学校祭は、絶対行くぞ。
もう、飛行機と宿も取ってある。
前の日に、日光東照宮まで行くんだ」
夫婦で旅行も、兼ねているようだった。
「着物がいるなら、持って帰っていいわよ」
母は、私が着ているのが嬉しかったようだ。
「必要になったら、連絡する。
リサイクルの大島紬を、プレゼントされたんだ」
着ている姿を、スマホで見せた。
「ああ、良いわね。
丁度いい帯が在るわ、持って帰りなさい」
「ありがとう、貰うね」
母の笑顔を見ると、断れない。
自分の部屋じゃなく、仏間に母と布団を並べて寝た。
急に悲しくなって、母の布団に入って泣いた。
「紗栄子は、間違ってない。
よく頑張った」
私は家の近所で、彼の車から降りた。
キャリーバッグを引いて、実家に入る。
「お帰り、待ってた」
両親が出迎えてくれると、急に体の力が抜けた。
「やっぱり、家は良いね」
台所で私の好物を作っている、母の背中が眩しかった。
思わず、後ろから抱きついた。
「何かあったの?」
母に隠し事は出来ない。
「智貴が、お見合いするんだって。
相手のお嬢さんに悪いから、もう会わない事にした」
「そう、良かったじゃない。
これで、あなたも前を向けるでしょう」
いつも母の言葉は温かい。
私を否定しないで、導いてくれる。
夕食で、最近の話をした。
クリスマスに、イギリス人のパーティーに呼ばれた事。
その時に訪問着を着たことや、彼女にも着せてあげたこと。
仙台に行って理想的なパン屋に実習に行った話と、学校祭でパン屋の模擬店をすることなど、ずっと話していた。
「着物を着てるのは良いわ。
心に余裕がある証拠、これからも続けてね」
「紗栄子の学校祭は、絶対行くぞ。
もう、飛行機と宿も取ってある。
前の日に、日光東照宮まで行くんだ」
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「着物がいるなら、持って帰っていいわよ」
母は、私が着ているのが嬉しかったようだ。
「必要になったら、連絡する。
リサイクルの大島紬を、プレゼントされたんだ」
着ている姿を、スマホで見せた。
「ああ、良いわね。
丁度いい帯が在るわ、持って帰りなさい」
「ありがとう、貰うね」
母の笑顔を見ると、断れない。
自分の部屋じゃなく、仏間に母と布団を並べて寝た。
急に悲しくなって、母の布団に入って泣いた。
「紗栄子は、間違ってない。
よく頑張った」
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