救済

ノア

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「死ぬなんてダメだ!!」

背後から声がして
僕の肩を羽交締めするように
男の人が掴んできた。

「そっちにそれ以上行ったら
すごく痛いし
すごく苦しいし
大切な人達にも会えなくなるよ」

男の人が必死な声で言う。

けど、
僕は…

「痛いかもしれないし
苦しいかもしれないけど
それを今後ずっと続けるよりマシだよ。
なにより、
僕に大切な人なんて…」

「いるよ!!」

男の人があまりにも
自信満々に言うから僕は
意地悪に「例えば?」と聞いた。

「例えば…親…そう!!
あなたの親とか」

なんの自信か
男の人は僕にそう言うと
「親を悲しませるなんて
絶対にしちゃダメだよ!!」と言った。

「…あなたなんか産まなきゃよかった。
って小学校の時に母から言われたよ。
父はその前に交通事故で死んでる」

そう言うと
男の人は「そんな…でも、
自殺なんて絶対にダメだ」と言ったから
僕は「なんでダメなの?」と言った。

「えっ…それは…」

困った表情をする男の人に
僕は「僕が死んだからって
誰も悲しまないし
むしろ 僕を疎ましく思ってる
クラスの奴らとか
兄弟とか親とか
みんなみんな喜ぶよ」と言った。

「そんな…けど…」

男の人が困っていると
男の人の後ろから
「そうよ。
自殺がいけないことって
誰が決めたの?」と
女の人の声が聞こえてきた。

「それは…ただ僕は、
目の前のこの人が死のうとしたから…」

「したから 救おうとしたと?
まぁ、
目の前で飛び降りしようとしてたら
救うのは他人として当然だけど…
それってその人にとって
本当に救いなの?」

「何を言って…」

「自殺は良くないことと言うけど
それは他人(君)の感想で
この人の本当の気持ちを
ちゃんと聞いたわけじゃない」

「プライベートなことを
聞くのは良くないと思ったというか…」

「フフフ…
だから、
みんな こっち が
救いだと思うのよね」

男の人にそう言うと
女の人は僕に言ったのか
くすくす笑いながら
「さぁ、
君はどちらを選ぶ?
君をわかろうとしない世界?(生きる)
それとも、
君にとっての世界?(死ぬ)」
と言った。

「………」

屋上を吹く冷たい風が心地よく感じた。

そうだ…僕は、
いつも1人でここに居た。

誰にも邪魔されず
誰にも虐められない
誰にも罵られない
この場所が僕にとっての世界で
この場所以外は
僕の居ない世界…。



この鳥籠(ここ以外)の世界から
抜け出せるなら…

「なんて 幸せだろうな…」

それから僕は、
静かに空へ落ちた。


「さてと、
あなたもこれでわかったでしょ?
人にとって
死が救済だってこと」

女の人が男の人に言うと
男の人は肩を震わせつつ下を見た。

「フフフ…
それでもあなたは偉いわ。
何故なら、
自殺したら
痛みや苦しみも一瞬で消えるかもだけど
これから来る幸せも喜びすらも
知る事が出来ないから
救おうとしたのよね?
あなたは
とても優しくて
とても偉い 人 だわ」

「………」

「でも、
あなたのそれは
ただの エゴ で
救いなんかじゃないってことを
今回のことから学んで
今度からは止めないでちょうだいね」

言い終えると女の人は
早々に屋上から立ち去った。


「…僕は…無力だ…」


死の救済

END


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