ジャッジメント〜許されるべき魂〜

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横転事故

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彼の話。

『彼は  寿華流のリーダーでした』

寿華流と刺繍された
ボロボロの特攻服の写真が貼られた
資料を見ながら眼鏡をかけた女の人が言った。

『寿華流?
寿華流ってなんですか?』

マシュマロヘアーの女の人が言うと
私の前の男の人が
『えっと…確か
関東一帯を本拠地とする
暴走族だったと思う』と
言葉を返した。

『ありがとう…うん?
ねぇ、
だったと思うって?』

マシュマロヘアーの女の人が
男の人に言うと
『なっ…気にすんなよ。
ただ、
生きてた時に一度
名前を聞いた事があっただけだ』と
照れ臭そうに視線を逸らしながら
言葉を返した。

『ふふ~ん、
まさか 過去は暴走族だった…とか?』

悪戯な笑顔を浮かべつつ
マシュマロヘアーの女の人が
男の人に言うと『うるさい!!
今は 俺の話じゃないだろ?』と言い
マシュマロヘアーの女の人が
つまらなそうに『は~い』と応えた。

『えっと…話を戻すと
彼は 暴走族 寿華流のリーダーであり
運転技術にとても自信がありました』

眼鏡をかけた女の人が
資料を見つつ言うと
『うん?
運転技術に自信があったのに
どうしてこうなったんだ?』と
ギャル男が言った。

資料には、
寿華流のリーダーである彼と
雷頭任愚のリーダーである男が
チキンレースを行い
ギリギリを攻めた彼だったが
乗っていたバイクの
ブレーキが効かない事に途中で気づき
車体を無理やり倒して停車させた。

その際、
着ていた特攻服はボロボロになり
彼は道路に強く頭を打ちつけ気絶した と
書かれていた。

『原因はわかりません。
けど、
雷頭任愚のリーダーは
伏した彼を見て笑っていたそうです』

眼鏡をかけた女の人がそう言うと
ギャル男が『そいつが
彼のバイクに何か細工をしたんだろ?
じゃねぇなら、
笑う意味がわかんねぇよ!!』と
言葉を返した。

『う~ん、
細工はありえるかもだけど…
ぶっちゃけブレーキ壊して
なにがしたかったんだろう?』

アンジェラアキ風の女の人が言うと
スキンヘッドの男の人が
『確かに…
資料の通りだと
結構な速度が出ているみたいだが
先は海だったから落ちたとしても
死ぬ確率はかなり低い。
なのに、
死ぬ確率が高いだろう
車体を倒して停車なんて…
なんの意味があったんだ?』と呟いた。

確かに、
死ぬかもしれない停車の仕方より
そのまま海へ落ちた方が
崖下って訳じゃないんだから
助かる確率も高い…なのにどうして?

『あ~えっと、
わかんねぇけど
リーダーって言うのは
例え 死ぬかもしれないって
わかっていても 譲れないものがあるって
昔 ダチから聞いた事がある。
たぶん、
彼も譲れないものがあったんだろ』

男の人がそう言うと
年配の男の人が
『譲れないもの?
それはいったいなんですか?』と
男の人に聞いた。

『いや、
俺もわかんねぇよ。
まぁ、
ダチの話だと
自分の命よりも
仲間の命だったりだったか…』

どこか遠い目をしつつ言う男の人を見て
私は 友達の話じゃないんだろうな…と思い
今は詳しく触らない事にした。

『自分の命よりも仲間の命…なんか、
すごくカッコいいね』

マシュマロヘアーの女の人がそう言うと
男の人が照れ臭そうに視線を逸らしながら
『カッコよくなんかねぇよ』と
言葉を返した。

『…バイクのブレーキが壊れていて
彼は車体を倒して停車したけど
その犯人は
雷頭任愚のリーダーである
可能性が高いんですよね?
なにがしたかったんでしょう…彼は』

子供の隣の椅子に座っていた
ロングヘアーの女の人が
資料を見つつ言った。

『う~ん、
例え海に落ちても
溺れ死ぬ可能性は考えにくいですし…』

眼鏡をかけた女の人が言いかけて
『そもそもなんで
チキンレースをしてたんだろう?』と
アンジェラアキ風の女の人が言った。

そう言えば、
チキンレースって
度胸試しの意味合いもあるって
確か 漫画に書かれてたような…。

けど、
漫画に書かれてたチキンレースは
そこまで速度を出さず
ギリギリで止まってたような…。

車体を倒して停車させたのもだけど
彼はなんで速度を出してたんだろう…。

考えていると
スキンヘッドの男の人が
『昔読んだ漫画の話になっちまうが
主人公の妹が 相手チームのリーダーに捕まって
リーダーが主人公に
「妹を返して欲しければ
俺とチキンレースをしろ!!」って
シーンがあったな…』と言った。

『人質ですか…』

眼鏡をかけた女の人がそう言うと
男の人が
『そんな奴 真の暴走族とは言わねぇ!!』と
怒鳴るように言った。

『確かに。
人質を取るなんて
すごく卑怯』

マシュマロヘアーの女の人が
首を縦に振りつつ言った。

『まぁ、
漫画の話だし
そんなまどろっこしい事
本当にやる奴がいるとは思わねぇけどな』

スキンヘッドの男の人が言い終えると
資料のチキンレースが行われた
堤防道路の写真を見ていた眼鏡の女の人が
『関係あるかわかりませんが』と言い 
話を続けた。

『ここを見てください。
堤防道路の先 防波堤の所に
見えにくいですが 
雷頭任愚の特攻服ではない
学生服を着た人が立ってませんか?』

資料の写真を指差しながら
眼鏡をかけた女の人がそう言うと
目を凝らし見ていた男の人が
『確かに…うん?男か?』と言った。

『確かに学生服を着た男の子に見える…』

写真を見つつ
スキンヘッドの男の人が言った。

チキンレース会場のゴールに
学生服を着た男の子…

車体を倒して停車…

運転技術にとても自信があった…

私は眼鏡をかけた女の人に
『彼は 学生じゃないよね?』と言った。

『えっと…資料には
24歳と書かれていますが
どうしたんですか?』

眼鏡をかけた女の人が
言葉を返すと私は
『さっきの漫画の話、
意味は別として少し関係するかも』と言った。

『漫画の話って…
妹を人質に取られ
チキンレースを挑まれるあの話か?』

スキンヘッドの男の人がそう言うと
私は『うん』と言いつつ
資料を捲って
彼の家族構成のページを見て確信しつつ
『これは仮説だけど』と話を続けた。

『このチキンレースは
雷頭任愚のリーダーが仕組んだ
寿華流を潰すための罠だよ』

私がそう言うと
全員が『はぁ!?』と驚いた。

『罠って…どう言う事だ!?』

男の人が私に向かってそう言うと
私は『ここを見て』と
私が見ていた資料の家族構成のページを
全員に見えるように向け
ある一点を指差した。

そこには、
彼の弟の名前が書かれ
見えにくかったけど
あの写真の学生服を着た男の子の
写真が貼られていた。

『きっと、
彼は雷頭任愚に捕まった弟を取り返すため
罠とも知らず 
挑まれたチキンレースに参加した。
けど、
彼が目を離した隙に
彼の乗ってきたバイクのブレーキを
雷頭任愚の手下が壊し
ブレーキを効かなくした。
全ては、
関東一帯を本拠地としていた
寿華流のリーダーを潰し
雷頭任愚こそ関東で1番の勢力であると
他に知らしめるため。
雷頭任愚のリーダーが考えていた通り
彼は弟を助けようと
バイクのアクセルを全開で回し
速度を上げた。
けど、
途中でブレーキが効かない事に気づいた彼は
どうにか止めようとするも
バイクの速度は全く落ちなくて
このままでは縛られ捕まっている
弟にぶつかり轢き殺してしまうと
無理やり車体を倒して停車した』

私が言い終えると
『なんて奴らだ!!』と
ギャル男が怒り混じりに言った。

『その仮説、
無い事は無いな…
汚い奴も確かに居たから』

男の人が握り拳を振るわせつつ言うと
私は全員に『彼は蘇るべきだよ。
早く採決を採ろう』と言った。


それからしばらくして
バイクの横転事故から奇跡的に助かり
病室のベットの上で彼は目覚めた。


『なぁ、
他の奴には内緒にしてくれよ』

その様子を窓から見ていた
男の人が彼を見つつ私に言った。

『内緒に?』

私がそう言うと
男の人は『俺は昔、
愚連同盟って暴走族に所属してたんだ』
と言い 話を続けた。

『まぁ、
彼とは全く違って
俺は末端もいいとこ末端で
バイクの整備ばっかしてたけどな。
笑っちまうだろ?
暴走族がバイク整備ばっかって…。
けど、
案外楽しかったんだぜ?
あいつらと連んでた時間は
死んだ今も俺の誇りなんだ』

遠い目をして語る男の人を見て
『とても良い仲間だったんだね』と
私が言うと男の人は
『まぁ俺は、
そんな仲間に殺されたんだけどな』と
静かに笑いながら言葉を返した。


数ヶ月後、
寿華流のリーダーを
病院送りにしたという噂が流れた。

「リーダー、
やられっぱなしとかないぜ!!」

「あのデブ(雷頭任愚のリーダー)の顔を
ぶっ潰しに行きましょう!!」

彼のお見舞いに来た
寿華流のメンバーは口々にそう言うが
彼は首を縦に振らなかった。

何故なら
身内ごとに巻き込みたくなかったから。

と、
その時だった。

病室の扉が思い切り開き
特攻服を着た男の人が
彼のベットの前まで来ると
彼の胸ぐらを掴み
思いっきり殴った。

「なっ…何すんだよ!?」

彼がそう言うと
特攻服の男の人は
「情けねぇ!!
それでも寿華流のリーダーか!?」と
一喝した。

「なっ…」

「俺らは
あんただからついてきたんだ。
なのに、
あんたは俺らを頼ろうとしない。
そんなに信用無いか?
そんなに俺らは
あんたを守れないと思うか?」

特攻服の男の人の表情は
どこか悲しげだった。

「そんな事…」

彼がそう言うと
特攻服の男の人は
「弟が捕まったんだろ?
後は俺達に任せな」と言った。

「なっ…やめろ。
おまえ達には関係な…」

彼がそう言いかけて
特攻服の男の人が
「関係ないなんて言わせねぇよ。
うちのリーダーの家族に手を出し
うちのリーダーに怪我を負わした
命知らず共に挨拶しにいかないとな!!」
と言いお見舞いに来ていたメンバーに
「なぁ、
びびってねぇだろ!?野郎ども!!」と声を上げ
その声に応えるように
寿華流のメンバーが「おう!!」と声を上げた。

「おまえ達…」

涙ぐみつつ彼が言うと
特攻服の男の人は
彼の肩を軽く叩き
「早く戻って来い。
おまえがいねぇと
寿華流は成り立たねぇ」と言って
メンバーと共に彼の病室を出て行った。




~~~横転事故~~~

END
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