ジャッジメント〜許されるべき魂〜

ノア

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毒物

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彼の話。

『彼は、
学生時代から付き合っていた彼女と
9年間の恋愛の末に結婚。
現在は 5歳の男の子と3歳の女の子がいて
とても幸せな家庭を築いていたと
書かれています』

眼鏡をかけた女の人がそう言うと
私は『幸せな家庭を築いていたのに
どうしてこんな…』と言葉を返した。

資料によると
彼の胃の内容物の中に
毒成分のジテルペン系アルカロイド
アコニチンが微量に検出されたと
書かれていた。

毒って…

でも 誰が何の為に…

『どうしてかはわかりませんが
彼の胃の内容物から検出された
毒成分について少し分かった事があります』

眼鏡をかけた女の人がそう言うと
『わかったこと?』と
アンジェラアキ風の女の人が言葉を返した。

『はい、
ジテルペン系アルカロイドのアコニチンは
主にトリカブトなどに含まれる毒成分で
摂取すると
中毒症状である口唇や舌のしびれに始まり、
手足のしびれや嘔吐や腹痛…そして
下痢 不整脈 血圧低下などを起こし
けいれん 呼吸不全に至って
死亡することもあります。
なので、
残念ながら少なくとも
彼を毒殺しようとした人がいます…』

眼鏡の女の人がそう言うと
アンジェラアキ風の女の人が
『そんな…』と言い
私が『 誰がそんなことをしたの?』と
言葉を返した。

『わかりません…ただ』

眼鏡をかけた女の人が言いかけて
ギャル男が『怪しいのは奥さんだろ?
だって、
トリカブトって言えば
食べ物に入れたり
飲み物に入れたりして毒殺するって
ドラマで見たことあるぜ』と言った。

『可能性はあるな…だが、
彼と奥さんは
9年間の恋愛の末に結婚し
2人の子供に恵まれたんだろ?
なのに、
そんな彼を奥さんが
殺す理由ってあるのか?』

スキンヘッドの男の人がそう言うと
『結婚と恋愛は違うものってよく言うなぁ』
と私の前の男の人が言葉を返した。

『違うもの?』

男の人に私がそう言うと
『あぁ、
学生時代のクラスメイトとか
時々メールのやり取りしてると
よく「恋愛してる時は
あんなに好きだったのに…」とか言ってた
奴がいたけど…
俺は恋愛とかよくわかんねぇまま
死んだからそう言うのわかんねぇんだ』と
言葉を返した。

『確かにね。
私も沢山恋愛した事ないし
結婚は…したことないけど…
結婚は人生の墓場だって言う人も
いるからな~』

アンジェラアキ風の女の人がそう言うと
マシュマロヘアーの女の人が
『う~ん、
私にはわからないや。
恋愛とかより部活だったし…』と言った。

『恋愛と結婚の違いはさておき、
彼が毒物を盛られたことは事実です』

眼鏡をかけた女の人がそう言うと
スキンヘッドの男の人が
『まぁ、
関係あるかはさておき
トリカブトは
草にも根にも毒があって
中でも根には最も強い毒性があるんだ。
後、
葉は茹でれば
苦味が軽減されるって
特徴もある』と言った。

草や根にも毒があって
茹でれば苦味が軽減される…

それって…でも
葉の苦味は軽減されても
根の苦みはあるから気づいてもおかしくないし
何より 
もし考えてる事が
そうなら殺そうとする動機がわからない…

ねぇ…どうして
彼を殺そうとなんて…

『毒殺目的なら
葉より根を使えば確実だと思いますが
そういえば 彼は何故
半死状態なのでしょう?』

茶髪の女の人が言った。

確かに…
本気で殺してやろうなら
葉より根を使って確実に殺害するはず…
なのに
彼は毒殺されずに
まだ半死状態って…

『ちょっといいか?
トリカブトの致死量は、
3~4mgでトリカブトの葉約1gで
人を死なせられる。
それに致死量を摂取すると
心室細動や心停止を引き起こし、
心臓麻痺で6時間以内に
死なせられると言われている。
彼が半死状態になっている理由は
わからないが
彼を殺そうとした奴は
確実に彼を殺す為に
トリカブトを使ったとしたら…
かなり彼に恨みがあったはずだ』

スキンヘッドの男の人がそう言うと
ギャル男が『さっき、
毒殺するには
食べ物か飲み物に入れればいいみたいな
ことを言ったけど
それが出来るのって
奥さんしかいないだろ?』と言った。

確かに 奥さんが犯人なら
工場で夜勤勤務をしていた彼が
帰ってきて食べる食事に
トリカブトを入れたなら…けど、
奥さんが犯人だったとしたら
彼をそこまで恨む理由ってなんだろう…

そんなことを考えていると
『みんな、
ここを見て!!』と
マシュマロヘアーの女の人が
資料のあるページを開き言った。

『えっ…これって…』

マシュマロヘアーの女の人が
開いてたページを見ると
そこには彼と奥さんの
結婚するまでに起きた事が
事細かく書かれていた。

『彼の親は
彼と彼女の結婚を反対していて
どうしてもしたいなら
100万払えと彼女の親に言った。って…
彼と彼女は好きで結婚したけど
親同士はバチバチだったのね…』

アンジェラアキ風の女の人がそう言うと
男の人が『まぁ、
当人同士が仲良くてもって言うのは
どこの世界でも
よくある事だからな…』と言った。

『皆さん、
ここを見てください』

資料を捲り読んでいた
眼鏡の女の人が驚きつつ全員に言った。

そこには、
結婚し彼が半死するまでの出来事が
所々虫食いになっていたが書かれていた。

『誰がこんなことを…ってあれ?
彼が死ぬ数時間前
彼女のお母さんが家に訪ねてきてるって
書かれてある』

マシュマロヘアーの女の人がそう言うと
スキンヘッドの男の人が
『うん?
しかも、
天ぷらに使ってって
箱いっぱいに根を切り
ニリンソウに見せかけたトリカブトの葉を
置いていったって
書かれてあるぞ!!』と言った。

『ニリンソウ?
なんだそりゃ?』

ギャル男が言うと
スキンヘッドの男の人が
いつになく真剣な表情で
『ニリンソウはトリカブトと
間違いやすい植物って言われてて
長野市のホームページにも
記載されているんだ』と言葉を返した。

『なっ…まさか…』

言葉を失うギャル男。

たぶん、
そのまさかだと思う。

お母さんは
彼を毒殺する為に
トリカブトの葉を置いていった…けど
それだと 彼女や2人の子供も
もしかしたらトリカブトの葉の天ぷらを
食べていたかもしれない…
そんな危険なことをなんで
お母さんは…

そんなことを考えていると
『もしかして、
お母さんは
彼もその彼について行った彼女も
2人の子供も
何もかも許せなかったのかも…』と
アンジェラアキ風の女の人が呟いた。

『えっ…?
許せないって?』

私がそう言うと
アンジェラアキ風の女の人が
『ほら、
彼の親は
彼と彼女が結婚することを許してなくて
どうしても結婚したければ
100万払えって彼女の親に言ったって
書かれてたじゃん。
仮説だけど、
彼女の親はその言葉で
大きくプライドを傷つけられたんだと思う』
と言った。

『いや、
それでなんで
トリカブトで彼や彼女や子供を
殺そうとするんだよ?』

男の人がそう言うと
『たぶん、
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いって事かも…』と
私が呟いた。

『私もそう思う…
彼女のお母さんは
彼の親がしたことや
それでも彼と一緒に暮らすと
突っ走っていった彼女や
1人娘を奪った彼に
憎しみや恨みがあったんだと思う。
だから、
小さい頃から食べていた
ニリンソウによく似た
トリカブトを使い
殺そうとした…』

アンジェラアキ風の女の人がそう言うと
マシュマロヘアーの女の人が
『あっ…』と言った。

『どうかしましたか?』

眼鏡をかけた女の人がそう言うと
マシュマロヘアーの女の人が
『確か トリカブトの花言葉って
騎士道や栄光だったと思う。
そう考えると
彼の親がしたことや
彼を選び出て行った彼女のことも
忘れず 復讐しようとしたことって
形は違うけど正々堂々とかなのかなって…』
と言葉を返した。

復讐による正々堂々…

彼女の親は
彼女へトリカブトを渡すときに
いったいどんな気持ちだったんだろう…


それからしばらくして
近所で泥棒騒ぎがあったと通報があり
巡回していた警官が
彼の家を訪ねたところ
玄関を開け出た
青白い顔の彼女が
『助けてください…』と
警官に助けを求めた事により
彼と彼女と2人の子供は
病院へ搬送され
奇跡的に彼と彼女の命は助かった。


『はぁ…
男と女って怖いな…まぁ、
俺も他人の事は言えないが…』

その様子を家の外から見ていた
スキンヘッドの男の人がそう呟いた。

『まぁね…
2人の愛はそのままでも
2人に関わった人の気持ちは
恨みに変わっちゃう事もあるんだもんね…』

私がそう言葉を返すと
スキンヘッドの男の人は
『そうだな…
なぁ、
昔 とても仲の良い夫婦がいたんだ。
奥さんは美人で優しくて気の利く
とてももったいない人だった。
けど、
ある日 家に泥棒が入って
金品を盗もうとした泥棒を見た
彼女が警察に通報しようとして
殺されちゃったんだ…』と言った。

『えっ…殺されたって…』

『夫…いや、
俺は泥棒に殺された彼女を
助ける事が出来ず
いつか彼女の仇を討とうと
警官になり泥棒を追いかけ続けた。
そんなある日
あの泥棒と再会したんだ。
俺は泥棒を捕らえようとしたが
泥棒は俺に拳銃を向け弾丸を放った。
後は わかるよな?
なぁ、
無能だろ?俺…』

スキンヘッドの男が言いながら俯くと
私は『無能なんかじゃないよ』と
言葉を返した。

『えっ…?』

『私は
人を好きになる事とか
わからないまま死んだというか…う~ん、
だから…その…好きはわからないけど
奥さんを愛してたって事は
すごく伝わるから無能なんかじゃないよ』

うまく言葉に出来ず言う私に
スキンヘッドの男の人が
『奥さんを愛してたか…そうだな。
俺は今でもあいつを思い出す度に
好きって感情がまだ揺れてる』と言った。

『ねぇ、
ここに来たこと後悔してる?』

私がそう言うと
スキンヘッドの男の人は
さっきまでの表情が嘘みたいに
『何を馬鹿なこと言ってんだ?
後悔なんてする訳ないだろ』と
言って笑った。


それからしばらくして
彼と彼女は
病院のベッドの上で
訪ねて来た刑事の口から
子供が助からなかった事を告げられた。

彼女は泣き崩れ
彼は「そんな…どうして!!」と
怒りを露わにするも
すぐに刑事に当たっても仕方ないと気づき
握りしめた拳を静かに緩めた。

数ヶ月後、
彼と彼女は病院を退院した。

退院するまでに
彼女と話をした彼は
退院直後 1人で 彼女の実家に向かっていた。

「例え殺されたとしても
僕は彼女の両親に謝らないといけない。
親の無礼も何もかも…
そして、
今度こそ正式に
彼女との結婚生活を許してもらおう…」

車窓を流れる景色を見ながら
彼を乗せた新幹線は走り続けた。


~~~毒物~~~

END
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