ジャッジメント〜許されるべき魂〜

ノア

文字の大きさ
13 / 40

正面衝突

しおりを挟む
彼の話。

『うわぁ…これいつになくグロ過ぎだろ…』

資料の写真に目を通しつつ
私の前の男の人が言うと
スキンヘッドの男の人が
『さながら人間ミンチだな…』と
言葉を返した。

人間ミンチ…

被害者は
学校帰り地元ではそこそこ有名な
スーパー◯◯の前を通りかかった
小学生5名。

彼はブレーキとアクセルを間違え
乗っていたバンが
小学生5人の列に衝突 4人を轢き殺し
残りの1人をそのまま引き摺りながら
スーパー◯◯の駐車場の壁に衝突。

彼は気が動転して
アクセルから足が離れず
音に気づいた人達が
小学生を助けようとするも
既に 手遅れとなり
4時間後 やっとアクセルから
足が離れたバンから降りた彼は
自分が何をしてしまったのか
気づき その場で気を失った。

『では、
話を戻します。
彼は気が動転したとありますが
どうなんでしょう?』

眼鏡をかけた女の人がそう言うと
ギャル男が『言い訳だろ?
車に乗ってて気が動転したとか
普通、
そんな奴に免許を持たせないぜ』と
言葉を返した。

『それは違うぞ。
自動車免許を持ってる人なら…いや、
自転車の運転をした事のある人とか
シミュレーションゲームで
車の運転をした事がある人なら
ヒヤリハッと を知ってるはずだ。
たぶん、
最初のブレーキとアクセルを間違えて
踏んだ瞬間から
彼は気が動転してたんだ。
それで、
アクセルから足を動かす事が出来ず…』

スキンヘッドの男の人がそう言って俯いた。

『だからって
人を轢き殺したのは間違いないから
こいつは蘇らせなくてもいいだろ!!』

ギャル男がそう言うと
『ちょっと待って。
今更だけど、
なんで彼って半死になってるの?』と
マシュマロヘアーの女の人が言った。

『えっ?
それはショックだからじゃないのか?』

男の人が言葉を返すと
スキンヘッドの男の人が
『…いや、
確かに精神的ショックから
意識を失うことはあるが
それでは半死にならない。
そもそも、
彼はただ気が動転しただけなのか?』と
言った。

『うん?
資料にはそう書かれてたけど
どう言うこと?』

私がそう言うと
スキンヘッドの男の人が
『この部分に彼は
幼少期の頃から
パニック障害に悩まされていた。ってあるが
もし、
ブレーキとアクセルを間違える前に
症状が出たとしたら…』と言葉を返した。

『それでも、
轢いた事には変わりないだろ?
人殺しだ』

子供がそう言うと
アンジェラアキ風の人が
『なるほど…病気だとして
じゃあなんで彼は半死したの?』と返した。

『パニック発作って知ってるか?』

スキンヘッドの男の人がそう言うと
アンジェラアキ風の女の人が
『パニック発作?』と言葉を返した。

『あぁ、
パニック発作って言うのは
症状として
胸の痛みまたは不快感や窒息感
めまい ふらつき または気が遠くなる事や
死への恐怖が強まったり
正気を失うことや
自制を失うことへの恐怖を感じたり
非現実感 違和感 または外界との遊離感に
ほてりまたは悪寒や
吐き気 腹痛 または下痢などが
起きるんだが…』

そこまで言いかけて
スキンヘッドの男の人が
何を言いたいかわかった気がした。

でももし、
スキンヘッドの男の人の言おうとする事が
本当だったとしたら…

『もしかして、
パニック発作によって
正気を失ったと言う事ですか?』

眼鏡をかけた女の人がそう言うと
スキンヘッドの男の人は
『あくまで俺の予測だから
パニック発作によるものかは
わからないけどな…』と言葉を返した。

『まぁ、
気が動転して って
轢き逃げで捕まった人の
ほとんどが言うし
資料に書かれてたとして
その部分はあんまり当てにならないかもな』

男の人が言った。

う~ん、
確かに轢き逃げした人は
よくニュースとか新聞で
「気が動転して
ブレーキとアクセルを踏み間違えた」
ってよく言うけど
実際どうなんだろう…

『となると、
完全に振り出しに戻りました』

眼鏡をかけた女の人がそう言うと
資料を読んでいた少女が
『ねぇ…すごく驚くと
心停止って起きるの?』と言った。

『うん?
…心停止?
無い事は無いが…
確か 強いストレス負荷がかかると
心停止を起こすとか
聞いた事があったな…えっと…』

スキンヘッドの男の人がそう言うと
少女は
『…とても苦しかったんだね』と言った。

苦しかったんだね…って
小学生のことかな…

私が少女に
『確かに 子供達が可哀想…』と言うと
少女は『違うよ』と言葉を返した。

『えっ?
違うって…』

私がそう言いかけて
少女は『彼をよく見て』と言い
気を失った彼の写真を指差した。

『うん?
涙を流している…?』

マシュマロヘアーの女の人がそう言うと
『別に変じゃないだろ?
意識を失ったって
ごく稀に泣く事はあるんだし…』と
言葉を返した。

確かに、
半死した人の中には
意識を失っても涙を流す人もいた。

けど、
私には
涙を流してる事を言いたくて
少女が資料を指差していたとは思えない。

『うん?
ちょっと待て。
これを見てみろ』

スキンヘッドの男の人が
資料の写真の彼の目元を指差した。

『うん?これって…隈?』

アンジェラアキ風の女の人がそう言うと
『酷い隈…
彼はしばらく寝てなかったのかな…』

マシュマロヘアーの女の人がそう言うと
眼鏡をかけた女の人が
『もし寝てないことで
注意が散漫になってたとして
彼の職場は何故 そんな状態の彼に
仕事をさせたんでしょう…?』と言った。

『…う~ん、
なんとなくなんだけど
彼の会社はブラックな気がする』

アンジェラアキ風の女の人がそう言うと
私が『ブラックって
ブラック企業的な?』と言葉を返した。

『うん…ねぇ、
バンの積荷ってなんだったんだろう?』

アンジェラアキ風の女の人が
資料を見つつ言うと
マシュマロヘアーの女の人が
『確かに、
資料にはバンの積荷について
何も書かれていないし…
なんか怪しいかも…』と言葉を返した。

バンの積荷…

運転手の彼は
寝不足なのか目の下にすごい隈…

気が動転して…

考えつつ資料を見ていると
資料の写真に写っていた
バンのフロントドアに
何か書かれているのが見えた。

『うん?
…鮮…海…?』

なにが書かれているのか
読もうとして
目を凝らしつつ読んでいると
スキンヘッドの男の人が
『うん?
何を読んでいるんだ?』と言った。

『いや…なんか、
ここに書かれてるから』

そう言うと
スキンヘッドの男の人が
見ていた自分の資料を
私の見ていた資料のページと
同じページまで捲り
目を凝らして見つつ読み始めた。

『えっと…
魚問屋 海良 ?
これは彼の働いていた会社の名前か?』

スキンヘッドの男の人がそう言うと
アンジェラアキ風の女の人が
『海良って
確か 2年前に
社員を不眠不休で働かせて
過労死させ
今も過労死した社員の遺族と
裁判中だって…あの海良?』と
驚きつつ言葉を返した。

『過労死!?
って事は、
もしかして彼が意識を失った理由って…』

眼鏡をかけた女の人が驚きつつそう言うと
アンジェラアキ風の女の人は
『そういうことか…
たぶんそういうことかも…』と
言い 話を続けた。

『海良が噂通りだとしたら
彼は 不眠不休で働かされていて
小学生を轢き殺したあの日も
寝ていなかったんだと思う。
だから、
自分がやってしまった事を直視して
そこで限界が来て意識を失ってしまった』

アンジェラアキ風の女の人がそう言うと
『だから 半死か…』と
何かがわかったのかそう呟き
スキンヘッドの男の人は
静かに椅子から立ち上がって
『さっきまでは見えなかったが
なんとなく見えて来たぞ』と言った。

『私もわかったかも…』

私がそう言うと
ギャル男が『うん?
どう言う事だ?』と言った。

『私が言うよ。
たぶん、
考えてる事は一緒だから』

アンジェラアキ風の女の人と
スキンヘッドの男の人へそう言うと
『まだ確かでは無いから仮説ね』と言い
話を続けた。

『彼は、
不眠不休で仕事をし続けた。
そう言えば、
常人が寝ないで活動できるギネス記録は
264時間4分。
そこまでとは言わないけど
意識が朦朧となるくらいには
働き続けていた彼は
その日 スーパー◯◯の前で
小学生の列を轢いてしまった。
ブレーキとアクセルを間違えたとか
気が動転したとか
資料に書いてあったけど
激務が祟った結果だと思う』

そこまで言うと
スキンヘッドの男の人が
『人は寝てない状態が
2日続くとブドウ糖を代謝する能力が失われ
免疫システムも働かなくなってしまう。
そして、
不眠が3日以上続くと
幻覚を見たり 身体が震えて
会話が困難になったり
食べ物を欲するけど
うまく食べれなくなるなどの
症状みたいなものがで始める。
無論だが、
この延長線上に 過労死も存在する』と
言った。

私とアンジェラアキ風の女の人と
スキンヘッドの男の人以外
全員が言葉を失った。

『そして、
彼が1人の小学生を引き摺りながら
バンを壁にぶつけたことだけど
彼はなんとかアクセルに置いた足を
離そうと もがいたんだと思う。
でも、
不眠不休の彼の身体は
もう限界で なんとか足が外れ
バンを止めれた時には
小学生は… それを見た彼は
不眠不休による疲れと
自分が起こした惨事を直視した事により…』

私がそこまで言うと
アンジェラアキ風の人が
『彼は確かに
小学生を轢いた…けど、
私は彼も被害者だと思う。
やったことは悪いことだけど
それは 海良が…』と言いかけて
子供が『…ただ、
彼は殺人犯だ。
罪は償わなければいけない。だろ?』と言い
眼鏡をかけた女の人が
『悲しいですが
あまり時間は残されていません
すぐに採決を採ります』と言った。


それから数日後、
居合わせた人の中に
救急車を呼んだ人がいて
彼は搬送先の病院の医者の
懸命な治療により
命だけは繋ぎ止められた。


『ありがとう…はダメだよね。ごめん』

その様子を窓から見ていた私は
隣に座っていた
眼鏡をかけた女の人に言った。

『…まぁ、
死なせたく無いのはわかります。
ただ、
半死は半死でも
死にとても近かった彼を
現世に残す選択肢は
あまり良く無いと至上者も
おっしゃっておられましたよ』

眼鏡をかけた女の人がそう言うと
私は『うん…わかってる。けど、
きっと彼は
この罪を抱えたまま死んだら
とても後悔すると思うんだ。
だから、
生きて罪を償わなければいけないって
そう思ったの』と言葉を返した。

『生きて罪を償うですか…
まぁ、
あなただけでなく
私達も彼が生きて罪を償うべきと
判断を下したから
彼は至上者の判断により
蘇れたんですけど…』

眼鏡をかけた女の人がそう言い
そのままの口調で
『ねぇ、
あなたはどうして
そこまで死を否定なさるのですか?』と
言った。

『私はただ…』


それからしばらくして
今回の件を海良の社長は
「部下が起こした不手際」と片づけ
被害者遺族に言葉だけの謝罪をすると
「事件を起こしたドライバーは
昨日付けでクビにしました」と言い
その様子をテレビで見ていた彼は
全ての責任を押し付けられた事を悟った。

「そんな…俺は…」

事故により
足に後遺症が残り
立ち上がることさえ
ままならなくなったけど
彼は早く立てるようにと
毎日リハビリを行い
1日も早く遺族へ謝ろうとしていた。

けど、
社長は彼が謝罪するチャンスを奪い
それどころか クビにする事で
会社の損害を抑えようとした。

「俺…こんなに頑張ったのに…」

窓から射す夕焼けは
まるで罪人を焼く業火の如く
ベッドの上の彼を
いつまでも照らし続けた。





~~~正面衝突~~~

END
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...