ジャッジメント〜許されるべき魂〜

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大阪府堺市拳銃押し入り強盗事件

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彼の結果。

13日未明、
大阪府堺市の閑静な住宅街にて
拳銃強盗事件が発生した。

被害者は、
住宅街の一軒家に住む
◯◯歳の夫婦で
夫は 仕事に行っていて
被害に遭わなかったが
妻は 警察に通報中に
犯人に頭を撃ち抜かれ死亡。

早朝、
仕事から帰ってきた夫により
キッチンで倒れている妻が発見され
警察に通報が入った。

後に、
拳銃押し入り強盗事件と呼ばれ
捜査が行われたが
遂に犯人を捕まえる事は出来ず
捜査は打ち切りとなった。

それから15年の時が流れて
彼は警察官となり
妻を殺した犯人を追いかけていた。

そんなある日、
麻薬密売の容疑で追っていた男の顔が
妻を殺した犯人の顔と同一犯と知り
逮捕しよう追っていたが
返り討ちにあい 拳銃で撃たれ 彼は死亡した。

それから数日後、
羽田空港のロビーにて
空港税関に止められ 犯人は
抵抗する事の出来ないまま捕まった。


気がつくと
暗闇の中にいた。

『なっ…ここはいったい…』

まるで夢の中にでもいるのか
撃たれた箇所も特別痛くないし
血も出ていなかった。

おかしい…ここはいったいどこで
俺は死んだのか?

わからないまま
暗闇を見ていると
徐々に目が慣れてきたのか
少し前に何の変哲もない椅子が
1つ置かれていることに気づいた。

『何だあれ?』

不思議に思って近づくと
男の人のような声で
『座りたまえ』と聞こえ
俺は言われるままに
椅子に座った。

さては、
これは悪い夢って奴だな…。

昨日の夜中、
妻の仏壇の前で
飲み過ぎた覚えがあるし…。

そんな事を考えていると
『夢か…
あんたにとっては
夢であってほしかっただろうな…』と
声が聞こえ 次の瞬間、
俺の周りが明るく照らされ
俺の座る椅子を囲うように
椅子が置かれているのが見えた。

『なんだ!?
それに声が…』

驚いていると
俺の前の椅子から
『酷いことをされたのね…』と
年老いた女の人の声が聞こえた。

『なっ…誰もいない場所から声が!?』

夢だ…これは夢なんだ。

きっと、
二日酔いで眠った俺への罰だ。

早く目を覚さなければ…

驚きつつそんな事を考えていると
『夢じゃないよ』と
背後の椅子から小さな女の子のような
声が聞こえた。

振り向くが誰もいない。

『はぁ…タチの悪い夢だ…。
そう言えば、
こんなタチの悪い夢はあの時以来だな…』

朝、
職場から帰ると
玄関に鍵が掛かってなくて 入ると
キッチンで妻が倒れていた。

妻の周りは赤黒くて…俺は何も出来なくて…

『嫌な事を思い出しちまった…全く』

俺がそう言うと
俺の右斜め前の椅子から
女の人の声で
『何も出来なかった とは、
あなたの手で 犯人を
殺せなかったということですか?』と
声が聞こえた。

『殺せなかった…そうだ…俺は…』

そうだ…そうなんだ…俺は
あいつを…妻を殺したあいつを
捕まえる事も 復讐する事も出来なかった…

いつもそうだ…肝心な時に俺は
守りたいものを守れなくて…

そうか…俺は確か
あいつを捕まえようとして…

『どうして俺は…』

俺がそう呟くと
『どうやら
何か は思い出したようだな…』と
若い男の人の声が聞こえた。

『なぁ…俺は死んでるのか?』

見えない声の主にそう呟くと
急激な眠気に襲われ
俺の意識はそこで途切れた。


『はっ!?
俺は眠って…あれ?
ここは…』

気がつくと
俺の前に若い男の人が立っていて
そう言う俺に
『やっと目を覚ましたようだな』と言い
その隣で 小学校低学年くらいの少女が
『おじさん…大丈夫?』と
心配そうに言った。

『えっと…』

状況が理解できない…

まだ悪い夢の中にいるのか?

それとも、
俺は頭が狂ったのか?

いや、
その前に
俺はあいつを追っていて
あいつを追い詰めたけど
拳銃で胸を撃たれて…
何が起きてんだ いったい…

『あんたは狂っちゃいないし
ここは夢じゃない。
あんたは 犯人に殺されたんだ』

若い男の人が俺を見つつ言った。

『なっ…いや そうだな。
あの状況で胸を撃たれて
生きてる方がおかしいし
俺は妻の復讐を
果たすことが出来なかったのか…』

そう言って項垂れる俺に
背後から男の人の声で
『いや、
その犯人なら
捕まったみたいだぜ』と聞こえ
振り返るとリーゼントの男の人が
椅子に座っていた。

『なっ…それは本当か!?』

リーゼントの男の人に
俺がそう言うと
リーゼントの男の人は
『これを見てみろ』と言って
新聞紙が貼られた紙を俺に見せた。

新聞の記事には、
あの男の写真が貼られ
その横に麻薬密売の容疑で男が
逮捕された旨が書かれていた。

『…良かった…これで
妻の無念が報われた…良かった…』

泣きながら紙を握りしめそう言うと
眼鏡をかけた女の人が
『えぇ、
あなたがあなたの奥様へ誓った
悲願は形は違えど果たされました。
ですが、
あなたは…』と言いかけ
俺はなんとなくその先がわかり
『別に俺はどうでもいいんだ。
妻の無念さえ晴らせたなら
地獄だろうと
何処にでも行くつもりだったんだし…』と
言葉を返した。

『地獄か…
なぁ、
あんたは死後の世界って
存在すると思うか?』

若い男の人がそう言うと
俺は『あると普通は言うんだろうけど
無いと思いたいな』と言葉を返した。

『それは何故?』

俺の座る椅子の前の椅子に座っている
年老いた女の人がそう言い
俺は『もし、
そこに妻がいて
今もあの日の苦しみを
1人受け続けてるとしたら…俺は…だから
死後の世界なんて存在しないと思ってる』と
言葉を返した。

『ふむ…自殺とは違うから
死後も同じ苦しみが続くとは限らないけど…
そう考えるか…』

若い男の人がそう言うと
少女が『おじさんは、
犯人を殺したかったの?』と言った。

『俺は…たぶん 殺したかったんだと思う』

俺がそう言うと
少女が『けど、
おじさんが殺された時
おじさんは拳銃を向けられても
腰のガンホルダーから
銃を抜かなかったよね』と言葉を返した。

『それは…』

『どうして?』

少女は俺を見つつ
ニコリと微笑み言った。

『うぅ…殺せなかった。
あいつは俺の妻を殺した犯人…けど
憎しみであいつの命を奪ったところで
俺もあいつと同じになるだろうし
そんな姿…妻には見せたくなかった』

俯きそう言うと
眼鏡をかけた女の人が
『気持ち…わかる気がします』と言い
リーゼントの男の人が
『妻に見せたくなかったか…』と言って
目を閉じ深く頷いた。

『犯人は捕まったけど
俺が捕まえた訳じゃないから
妻に合わせる顔は無い…』

俺がそう言うと
『それは違うよ』と
座っていた学生服姿の女の人が声を上げた。

『えっ…』

『それは違うよ。
きっとあなたの奥さんは
どんなあなたにも会いたいと思う。
だって、
あなたは今日 この時まで
ずっと奥さんを思ってたんだから』

『けど、
俺は…』

言い訳をしようとした俺の前まで
学生服姿の女の人が歩いてくると
俺の右手を掴み
『もういいよ。
自分を許しても』と言った。

俺の頭の中に
妻との記憶が流れていく。

『…ごめん…』

そう呟くと頬を涙が伝ったのがわかった。

そうか…俺は
ずっと謝りたかったんだ。

なのに、
俺は俺が許せなくて…。

『静粛に。
至上者がいらっしゃいます』

ふと気づくと
眼鏡をかけた女の人も
若い男の人も
全員 椅子の前に戻り
深く頭を下げていた。

『いったい何が…』

訳もわからず
俺もその場で頭を下げると
『頭を上げなさい』と
男の人とも女の人ともわからない声が聞こえ
顔を上げると俺の前に
光る小さな球体が浮いていた。

『なんだ!?』

驚く俺に光る小さな球体は
『君の罪は 自らを許さなかった事。
君は誰かに押し付けたりする事が嫌いで
仕事も人一倍努力してきたけど
その結果 君が居ない間に
君の妻は 殺された。
その事実を許せなかった君は
犯人を憎む以上に
自らを憎み許さなかった』と言った。

『あぁ…俺がもしあの時 家に居たのなら
絶対に手は出させなかった。
たとえ 自分の命に代えても』

俺がそう言うと
光る小さな球体は
『命に代えてもか…』と呟き
『君のそれは 強さだ』と言葉を返した。

『強さ?
俺は何も…』

言いかけて
光る小さな球体が
『勘違いしないでほしい。
私の言う強さとは心の強さであり
物理的な強さではない』と言った。

『心の強さ?』

『そう、
人の心の強さを例えるなら
日本刀などと同じだと私は思う。
太ければ強い訳でなく
細ければ弱い訳でもない。
真の心の強さは
大切なものを守る時にこそ はっきりされる。
君の混じり気の無い妻への愛情は
撓えも無ければ脹れも無い。
普通なら殺された時点で
あの世へ行き
罪を償わなければいけないのだが
君の身柄はこちらで引き取らせてもらった』

『そんな…俺は…』

『ふふふ…それより先の言葉は
君を弱らせるだろう。
だから、
もう自分を責めるのはやめた方がいい。
いずれ、
君のその強さが必要になるから
その時はよろしく頼むよ。
では、
後をよろしく』

光る小さな球体はそう言うと
フッと消えた。

『俺の強さ…』

そう呟くと
若い男の人が『まぁ、
とりあえずここからだな』と言った。

『ここから?』

俺がそう言うと
眼鏡をかけた女の人が
『そうですね』と言い微笑んだ。

『えっと…どう言う事だ?』

俺がそう言うと
少女が『おじさん、
おじさんは今日から
私達の家族だよ』と言った。

『家族って…俺は…』

言いかけて、
リーゼントの男の人が
俺の肩を軽く叩き『諦めろ』と言い
話を続けた。

『至上者が
身柄を引き取ったんだ。
俺達は今日から共に生きる
運命共同体…言わば 家族だ。
よろしく頼むよ』

リーゼントの男の人が言いつつ
ニコッと微笑んだ。

『そんなものなのか?』

疑問に思いつつ言うと
眼鏡をかけた女の人が
『えぇ、
これからどうぞよろしくお願いしますね』
と言葉を返した。


『とまぁ、
俺の昔話はそんな感じだ。
面白くなかっただろ?』

スキンヘッドの男の人は
いつもと同じように笑いながらそう言うと
椅子から立ち上がり伸びをしつつ
『前にも言ったが
俺は後悔してねぇよ。
もちろん、
いつか罪を償い終わった先に
妻が待ってたなら
この土産話をしてやるつもりさ』と言った。

その言葉には
負い目もなければ
自分を責める気持ちも
もう見えない。

あるのは、
私達と共に歩む
心強い家族(仲間)の姿だけ。




~~大阪府堺市拳銃押し入り強盗事件~~

END
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