ジャッジメント〜許されるべき魂〜

ノア

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急変

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彼女の話。

『資料によると彼女は
学校から帰る途中
いつものように川沿いの道を
1人で歩いていたら
背後から来た車に轢かれそうになり
避けようとして足を踏み外し
そのまま河原に落ちて半死したようです』

眼鏡をかけた女の人が言うと
スキンヘッドの男の人が
『半死だから
そんな高い位置じゃないだろうが
彼女が怪我をしてないか心配だな』と
言った。

『確かにね…。
半死する過程で
出血するような怪我をしてたら
話し合い関係なく
出血多量で半死した人が
亡くなっちゃうし…』

マシュマロヘアーの女の人が言うと
ギャル男が資料を見つつ『つうか、
轢かれそうになりって言ってたけど
そんなに道路幅狭いように
見えないが』と言った。

『道路幅はすれ違いや追い越しなど
交通実験を経て余裕幅を持って規定されるが
この資料の写真から判断するに
この道路はすれ違う余裕すら無いな』

スキンヘッドの男の人が
資料を見ながら言った。

確かに 隣は川 反対側は森みたいに見え
軽自動車が1台通れるかくらいで
そんなところを通学路にしていたなんて…。

『なぁ、
車幅云々より
自動車の運転手は
彼女が落ちたことを気づかなかったのか?』

私の前の男の人が言った。

『確かに…変だよね。
いくら運転してたからって
人が落ちたなら気づくだろうし…』

アンジェラアキ風の女の人が言うと
スキンヘッドの男の人が
『いや、
運転手の意識が
どこにあったかわからないから
言えた話じゃないが
早く通り抜けようとしてたなら
目に入ってても意識は
そこに無かったかもしれない』と言い
男の人が『トラックが曲がる時の死角に
近い話だな』と言った。

『うん?
よくわからないけど
運転手から見えなかったって事?』

マシュマロヘアーの女の人が言うと
スキンヘッドの男の人が『う~ん、
見えないと言うより
簡単に言えば
気にしていたかどうかだな』と言った。

彼女の存在を
気にしていたか気にしてないか…

彼女の存在に
気づいていたか気づいていなかったか…

そういえば、
学校から帰る途中って書いてあったけど
彼女以外にその道路を通っていた人は
いなかったのだろうか…

そんな事を考えていると
ポニーテールの少女が
『眩しすぎて
物が見えなくなる事ってあるの?』と
言った。

『眩しすぎて?』

そんな事を言ってると
追加の資料が届き
茶髪の女の人が全員に配布した。

『うん?
これって
車の運転手じゃね?』

届いた資料を見つつ
ギャル男が言った。

『確かにそうですね』

眼鏡をかけた女の人が言った。

資料によると
会社帰り 早く帰りたくて
川沿いの道を通り
近道をしようとしたが
道幅が狭いのにも関わらず
スピードを出してしまい
カーブを曲がりきれず
ガードレールにぶつかり引っかかって
運転手は半死した。

『はっきり書かれてないが
川沿いの道を飛ばしてる最中
彼女を轢きそうになり
轢かれそうになった彼女は
避けようとして河原に落ちた…と』

スキンヘッドの男の人が言うと
男の人が『いや、
いくら早く帰りたいからって
道幅狭いところを飛ばすとか
自殺志願者じゃねぇか…』と言った。

『違いないな。
うん?…運転手もだが
彼女も帰り道だったけど
この道路の先は都市なのか?』

スキンヘッドの男の人が言うと
眼鏡をかけた女の人が
『えぇ、
この道路の先は
小都市に繋がっていて
この道路ではなく
普通は表の道を通り
小都市へ入るみたいです』と言った。

『う~む、
というと この道路は
旧道みたいなものだな…』

スキンヘッドの男の人が言った。

旧道…けど、
旧道だったとして
すれ違えない程 道幅が狭いなら
道路標識とかで危険を知らせると思うけど…

そんな事を考えていると
ギャル男が『そう言えば、
さっき眩しすぎがどうって言ってたけど
この写真から見て
日差しで眩しいとかはまず無いっしょ。
だいたい、
時刻的にも
夕暮れって書いてあるし』と言った。

『…日差しじゃないよ』

少女がそう言うと
スキンヘッドの男が
『眩しい…日差しじゃない…
眩し過ぎて物が見えなくなる…
どっかで聞いた事があるような…』と呟いた。

『眩しすぎて?
時間的に車のヘッドライトの光?
けど、
あれってそこまで眩しく無いよね…』

マシュマロヘアーの女の人がそこまで言うと
スキンヘッドの男の人が『あっ…』と
何かを思い出したかのように小さく呟き
『そう言えばこんな話を聞いた事がある』と
言って話を続けた。

『まだ俺が生きてた頃
交通機動隊員に
対向車から照らされていなくても
ヘッドライトで照らした時に
人が消えるって話を聞いた事がある。
確か 名前があったんだが
すまん 忘れちまった』

スキンヘッドの男の人が言うと
男の人が『人が消える…
蒸発現象のことか?』と言葉返した。

『いや、
蒸発現象は簡単に言うと
対向車と自車のハイビームが重なって
見えなくなる現象だったと思う。
俺が聞いたのは
対向車がいなくて起きる現象だ』

スキンヘッドの男の人がそう言うと
マシュマロヘアーの女の人が
『光だけで人が消えたように見えるって
なんかすごく不思議だね』と言った。

確かに。

知ってれば当たり前なのかもしれないけど
知らなければ人が消えて見えるなんて
不思議としか思えない。

うん?

けど、
蒸発現象は両方から照らした時に
消えたように見えるけど
一方からの強い光で
見えなくなるなんてこと
本当にあるのだろうか…

そんな事を考えていると
男の人が『それって一時的に
運転手から見て眩しさで
歩行者が見えなくなるみたいな事だろ?』と
言った。

『あぁ、
名前は忘れちまったが
交通機動隊員が
「珍しいことじゃないが…」って
言ってたのを覚えてる』

スキンヘッドの男の人が言った。

珍しいことじゃないが…うん?

珍しいことじゃないって事は
よく起きる事なんだろうか…

だとしたら、
今回の話も…

『ねぇ、
それって彼の状態でも
起きることなの?』

私がそう言うと
スキンヘッドの男の人が
『そうだな…
確か夕暮れ時になると
そういう事故が多くなるって聞いたな。
もしかしたら彼も…』と言った。

夕暮れ時…

よく言われることだけど
夕暮れ時は交通事故が多い時間で
何故多いかって言うと
人の目が暗さの変化に慣れていなくて
ドライバーは歩行者や自転車の発見が
遅れる事により事故が起きるのだとか…

彼のそれが
スキンヘッドの人が言う事故だとしたら…

『けど、
蒸発現象と違って
完全に見えない訳じゃないんだろ?』

男の人が言うと
眼鏡をかけた女の人が
『もしかして…』と呟き
『車の運転手は
仕事の疲れからか
気というか集中力が
切れてたんじゃないですか?
事実、
車の運転手の資料に
彼女を落とした事は
一切書かれていません』と言った。

確かに、
資料は半死になるまでの経緯など
半死者についての詳しい事が書かれている。

もし、
車の運転手が
彼女の存在に気づいていたなら
きっと資料にも書かれていたはず…

なのに、
書かれていないって事は
疲れや集中力が切れていて
気づけなかった…

『なるほど…
ヘッドライトの眩しさと
集中力の低下で見えなくなる的な奴か…』

男の人がそう言うと
ギャル男が
『何にしても
車の運転手が悪いじゃん。
車の運転手は蘇らせなくて
良いんじゃね?』と言った。

『いや、
人を殺しかけただけで
彼女はまだ死んでないから
車の運転手も 死 の値じゃないよ』

アンジェラアキ風の女の人が言うと
マシュマロヘアーの女の人が
『うん?
轢かれそうになって
彼女が車を避けたから
そもそも殺しかけたも違うかも…』と言った。

『あ~、
確かに 轢き殺した訳じゃないし
人殺しじゃないな』

スキンヘッドの男の人が言うと
ギャル男が
『確かにそうだけど…』と言いかけて
男の人がギャル男に
『気持ちはわかるけどな』と言った。

確かに
彼女は轢かれた訳じゃなく
車を避け足を踏み外し河原に落ちた。

だから、
車の運転手は
至上者の定めた半死者のルールの
自殺や殺人に当てはまる訳じゃない。

『うん。
私も気持ちはわかるけど
車の運転手は蘇らせないとダメだよ』

私がそう言うと
ギャル男が『やるせないな…』と言った。

すると、
眼鏡をかけた女の人が手を叩き
全員の視線を集めつつ
『では、
彼女と運転手の採決を採ります』と言った。


しばらくして、
偶然土地分類調査を行なっていた職員が
ガードレールにぶつかった車の音を聞き
見に来たところ 車の運転手を発見し
その数分後に
河原で倒れていた彼女が発見された。


『お姉ちゃん 良かったね』

その様子を見ていた少女が
私に微笑みつつ言った。

『うん…』

そういえば、
いつかに私に謝りたいことがあるって
言ってたような…。

ふと、
少女なら
イメージに現れる少女の正体と
彼女の言うエステルについて
何か知っている気がした。

『どうしたの?お姉ちゃん』

少女が私を心配して言うと
私は『ねぇ…
1つ聞いて良い?』と少女に言った。

『…どうしたの?』

そう言う少女に
『エステルって私の名前?』と言った。

確信を持っていた訳じゃないけど
何故だろう…エステルって名前が
私に関する何かな気がして
少女に冗談っぽく言った。

『えっ…』


それからしばらくして
緊急搬送された彼女は
病室にて目を覚ました。

「あれ…私…」

起きあがろうとして力が入らず
なんとか状況を理解しようと
目だけを動かして周りを見るも
視界に見えるのは
管に繋がれた自分の腕と
どこかの病院の個室を
想像させるような室内…

何故、
私はここにいるのかわからなかった。

ふと、
病室の扉が開き
看護婦が入ってくると
目を開けていた私を見て
「なっ…先生!!
奏音さんが!!」と言って飛び出していき
しばらくして慌てた様子の
医者と看護婦2人が入ってくるなり
私の顔に光を当て
「聞こえますか?
奏音さん、
聞こえたら瞬きをしてください!!」と
何度も言った。

声は…出ない。

出したくても
さっきみたいには出ず
うまく瞬きも出来なかった。

だから、
何度も何度も眼球を動かした。

すると、
その様子を見ていた医者が
「奇跡だ…奇跡が起きたぞ!!」と叫び
周りの看護婦は泣いて喜んだ。

何が起きてるのかわからず
医者と看護婦を見ていると
1人の看護婦が
「男の人はダメだったけど
あなたが意識を取り戻して良かった」と
言った。

数ヶ月後、
まだリハビリ中で
体をうまく動かせない私に
手術を担当した医者が話してくれた。

私ともう1人の男の人が
救急車で搬送される予定だったこと…

搬送中に事故が起きて
私は全身火傷を負ったこと…

もう1人の男の人の火傷は酷く
搬送された時には既に亡くなっていたこと…

「あなたが無事で良かった」

看護婦が微笑みそう言うと
医者が「今後の治療方針ですが…」と言い
言葉を返せない私に
医者は一方的だったけど
いろいろな話をしてくれた。

そして、
話を終えると
医者は私に「では、
これからよろしくお願いします」と言い
病室から出て行った。

医者と看護婦が出ていき
病室は静かになり
声の出せない私は
何故こうなったのか
一生懸命思い出そうとしたけど
何も思い出せなくて
ただただ虚しくなり目を閉じた。




~~~急変~~~

END
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