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私の選択
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シャーロット・エステルの選択。
『エステルって私の名前?』
私がそう言うと
少女は酷く悲しそうな顔をしつつ
『えっ…』と言葉を詰まらせた。
構わず私は少女に
『エステルって
私の名前なの?』と言った。
すると、
少女は『…うん。
お姉ちゃん…いえ、
シャーロット・エステル あなたは
どこまで思い出したの?』と言った。
シャーロット・エステル…何故だろう。
そう呼ばれた瞬間、
とても懐かしい気持ちになった。
『全部じゃない…けど、
衝突事故の半死者の時から
ちょっと思い出したというか…。
エリスって女の子に私は
エステルって呼ばれてたことを
思い出したの』
私がそう言うと
少女は『エリス…』と呟き俯いた。
『もしかして
エリスって女の子は…』
私がそこまで言うと
俯いていた少女が
少し泣き声混じりに
『うん…』と言った。
『…もしかして…エリス?』
何故だろう 目の前の少女は
いつも私やみんなと一緒に
半死者について話す少女…のはず。
なのに、
俯き肩を震わせる少女を見て
私はそう言葉が出ていた。
『…ずっと呼んで欲しかった。
けど、
あなたが私の名前を呼んだら…
エステルが記憶を取り戻したら
私の前からいなくなっちゃうから…私…私…』
少女がそう言って私に泣きつくと
私はそれ以上何も言えなかった。
しばらくして
泣き疲れて眠る少女に膝枕をしつつ
私は他の記憶も思い出そうとした。
けど、
どれだけ思い出そうとしても
私の名前と少女の名前以外の記憶を
思い出すことは出来なかった。
『私ってどうやってここに来たんだろう…』
私がそう呟くと
私と少女の居る資料室の外から
男の人とも女の人ともわからない声で
『偶然が重なり作られた世界は
果たして本当に
全て偶然と言えるのだろうか…』と聞こえた。
『えっ?』
私は少女の頭をそっと下ろし
声の聞こえた方へ歩き出した。
資料室を出ると
声は少しだけはっきり聞こえ
私は導かれるように
廊下の奥の部屋へ歩みを進めた。
名前は思い出せても
どうやってここに来たのかも
生きてた時の記憶も
何も思い出せない…けど
何故かこの声の主に会えば
何か思い出す気がして
遂に廊下の奥の部屋の扉の
ノブに手をかけた。
すると、
扉の向こうから
男の人の声で『入りたまえ』と聞こえ
私は深呼吸をすると
『失礼します』と言って
扉の向こうに入った。
『ここは…』
部屋の中は真っ暗で
中央に金色に輝く椅子が置かれていた。
『こんな部屋があるなんて
聞いた事が無い…』
そう言いつつ
金色の椅子に近づくと
扉の前で聞いた声で
『汝の名を示し座るが良い』と聞こえた。
『私の名は…
シャーロット・エステルで良いのかな』
そう言いつつ座ると
一斉に部屋の蝋燭が灯り
私の前に置かれた三脚椅子に
知らない男の人が座っていた。
『やぁ、
元気でやってるかい?』
知らない男の人が私に言うが
男の人の事を知らなかった私は
男の人に『あなたは誰?』と言った。
『ふ~ん、
僕の事を知らないか…うむ わかった。
じゃあ、
僕のことは
アラン・スミシーと呼べばいいよ。
さて、
君はどうしてここに来たんだい?』
知らない男の人 改め
アラン・スミシーは
私にそう言うと足を組んだ。
『えっ…えっと、
声が聞こえたから…』
そう言いかけて
アラン・スミシーは突然笑い出し
『そうなの?
ふ~ん、
声が聞こえたんだ…そっかそっか。
じゃあ、
君には権利がありそうだね』と言った。
『権利?』
私がそう言うと
アラン・スミシーは
『そう。
君がどれだけ思い出したかわからないが
声が聞こえその椅子に座り
僕の姿を見れたと言うことは
君には知る権利があるということだ』と
言葉を返した。
『知る権利って…』
言いかけて
アラン・スミシーが
組んでた足を元に戻しつつ
『あぁ、
君にはもう言ったと思うが…あっ 失礼。
君の記憶は消えているから
その部分はわからないんだったね。
なら、
1から教えてあげるよ』と言い
指を鳴らした。
すると
暗かった部屋の風景が
草原のような風景になり
遠くに懐かしい建物が見えた。
『ここは?』
目の前の椅子に座る
アラン・スミシーに聞くと
『ここは、
君の故郷さ』と言い 話を続けた。
『君は貧乏貴族の1人娘として産まれ
母と死別する13歳まで
あの建物で暮らしていた』
アラン・スミシーが言い終えると
私は『そうなんだ…』と言った。
『うむ…その様子だと
その部分の記憶は取り戻せてないようだね。
さて…どうしたものか。
いつもなら記憶の糸口から辿って
思い出させていたが
今回 その方法は取れないみたいだし…』
腕組みをしつつ考えながら言う
アラン・スミシーに
私が『ねぇ、
私のお母さんってどんな人?』と言った。
『うん?
君のお母さん?
えっと…君のお母さんは…』
何処から取り出したか
手元の本を開き調べ始めた。
『ねぇ、
アランさん。
もう1つ質問良い?』
私がそう言うと
調べ物をしつつ
アラン・スミシーが
『良いよ。
なんだい?』と言った。
『ありがとう。
えっと…私って
ここへ来る前に何かしたんだよね…』
私がそう言うと
アラン・スミシーは
『そうだね。
何をしたかは
自分で思い出してもらわないとだけど』と
言葉を返した。
『うん、
今の家族に
ここに来る前の話を聞かせてもらって
少しは理解してるから大丈夫』
私がそう言うと
アラン・スミシーは
『うん、
記憶を取り戻す為
いろいろな努力をしたようだね。
関心関心!!』と言い
『さてと、
君の母親のことだけど
何かある訳じゃなく
一言で言うなら
子供をとても可愛がる人だった。
って感じかな』と言った。
『お母さん…』
『そうだ。
母親の名前は エマらしい』
アラン・スミシーが言った言葉に
どこか懐かしさを感じた。
『さっき、
死別って言ってたけど
お母さんはどうして…』
私が言いかけて
先読みしたように
アラン・スミシーが
『病死だよ』と言い 話を続けた。
『君のお母さんは
君に知られないように
最後まで隠していたようだけどね』
そう言うと
私はアラン・スミシーに
『そうだったんだ…
私、
何も覚えてなくて…』と言い
アラン・スミシーが私に
『気にすることはないさ。
何より、
記憶を忘れなければいけない理由もあったし
君1人の所為にしたら
私も彼女も罪に問われてしまう』と言った。
『彼女って?』
私がそう言うと
アラン・スミシーは
『あ~、
今回の君は
その部分覚えてなかったか。
最初にも話したけど
君は何度も記憶を取り戻しているんだよ。
ただ、
記憶を取り戻すことで
シャーロット・エステルという人物の
バランスが崩れ崩壊してしまうからと
僕がお願いして
君の友人であるエリスに
君の記憶を奪ってもらってたのさ』と
言った。
『バランスが崩れる?
それって…』
私がそう言うと
アラン・スミシーは椅子から立ち上がり
私の座る椅子の周りをぐるぐる回りながら
『ここでは、
記憶が魂の形を作るんだ。
手足の無い魂状態では
資料も読めないだろうし
話し合いにもならないだろ?
けど、
稀に君のように
記憶を取り戻した瞬間
バランスが取れず崩壊する魂もあるんだ。
その場合、
記憶を失わせてから
新しい記憶…そうだな…偽の記憶を入れ
一時的に形を保つんだけど…』と
そこまで言ったところで
私が『…つまり、
今の私は 偽の記憶によって
形を作られてるってこと?』と
言葉を返した。
『うむ…その表現だと
間違いであり正解というところかな。
まぁ、
その部分は自ずと分かると思うから
そう焦らないでいいよ』
アラン・スミシーがそう言うと
私は『わからないような…
わかるような…』と言葉を返した。
『うむ…今は、
それでいいと思うよ。
それより、
他に質問は無いのかい?』
アラン・スミシーが
再び椅子に座り足を組みつつ言った。
『えっと…』
考えていると
アラン・スミシーが
『ところで、
君は自分が何をしたのか知ってるかい?』と
言った
『私がした事?』
私がそう言うと
アラン・スミシーが
『そう。
君がした事だよ』と言い
指を鳴らした。
鳴らされた指に反応するかのように
さっきまでの草原のような風景から
どこかのお風呂場のような風景に
切り替わった。
もちろん、
私はこの場所の記憶が無い…はず。
だけど…
『なんか、
この風景というか
この場所…悲しい気持ちになってくる…』
周りを見つつ私がそういうと
アラン・スミシーが
『悲しい気持ち?
あ~そうだったね。
君はこの場所で
ある男を殺したんだ』と言った。
『えっ…私が 人殺しって…』
動揺する私にアラン・スミシーが
『動揺することじゃないと思うよ。
君はここで 山岳派リーダー
セバスチャン・リュカを刺殺した。
理由は、
家族を殺されたこと』と言い
言葉の出ない私を見つつ 話を続けた。
『母と死別した後
君はすぐに孤児院に引き取られた。
そこで出会ったのがシスターや子供達 そして
君にとってもっとも大切な友人であるエリス。
そうだね、
君にとって孤児院の人々は
寂しさで冷え固まった心を溶かしてくれた
大切な家族だった』
言い終えると
私はアラン・スミシーに
『…そのリュカって人は
私の家族を殺して何をしたかったの…』と
言葉を返した。
『うん?
君の家族を殺して何をじゃなく
彼は…』
アラン・スミシーが言いかけ
ふと何かが噛み合うような感覚して
私は『何を…違う。
彼は 私の大事な家族を殺し
私から大切な居場所を奪い
沢山の人の命を奪った…可哀想な人』と
言った。
『…うん?
記憶が戻ったのかい?』
アラン・スミシーがそう言うと
私は『うんうん、
ただリュカって名前を口にした瞬間
流れてきたというか…』と言葉を返した。
『なるほど…やはり、
君はとても興味深いなぁ』
関心するように頷くアラン・スミシーに
私は『それに私は
ここに何度も来てる…よね?』と言った。
『何度も?
…うん、まぁね。
けど、
どの時も君は記憶を思い出そうとして
記憶崩壊を起こし 記憶を剥奪され
偽の記憶で生かされてきた。
まぁ、
全て君の事を大切に思うエリスのおかげさ』
言い終えると
アラン・スミシーに私は
『うん…今思い出した。
それと、
あなたの事も思い出したよ。
アランスミシー…いえ、
至上者さん』と言った。
『フフフ…そっか、
じゃあ小芝居はおしまいだね。
さて、
現在 君は記憶崩壊を起こす事なく
自分の名前を思い出したみたいだし
そろそろ先の話をしてもいいかな』
そう言うと指を鳴らし
お風呂場だった風景から
断頭台が置かれた広場の風景に変わった。
『ここは、
私が処刑された広場…』
そう言うと
アラン・スミシーが
『うん 正解。
ここは、
君 シャーロット・エステルが
革命家 セバスチャン・リュカを殺し
殺人罪で処刑された広場』と言った。
『どうしてここを…』
言いかけて
アランスミシーが
『どうしてここを写したのか…って
言いたいのかい?
それは、
君がよくわかってるはずさ』と言った。
『私がよくわかってるはず?
それってどういう…』
言いかけて
縄が切れる音と
ギロチンが滑り降りる音が聞こえ
集まった人々の中から
よく知ってる女の子の
「殺さないで!!
あぁ…エステル…いやぁぁぁ!!!!」と
泣き叫ぶ声が聞こえた。
『エリス…?』
至上者によって映された風景なのは
十分わかってる。
けど、
集まった人々をかき分け
背の低い女の子が飛び出したかと思うと
ギロチンで首を落とされた私に駆け寄り
言葉にならない悲鳴を上げ
ずっと泣いていた。
『そんな…』
処刑人や兵士が
私の遺体から離そうとするも
背の低い女の子は「嫌!!」と叫び
いつまでも私の遺体に
しがみついたまま離れなかった。
『ごめん、
エリス。
私はやっぱり、
あなたとの約束を守れなかったよ』
至上者によって映された
私の遺体にしがみついたまま離れない
背の低い女の子の方を見て
呟くように言った。
ふと、
そこで初めて
自分が泣いていることに気づいた。
しばらくして雨が降り出し
私の遺体にしがみついたまま離れない
彼女を濡らしていく。
寒さかそれとも…震える彼女を見て
私は『エリス…』と言い
映された風景とわかっていながら
彼女を抱き寄せようとした。
すると、
アラン・スミシーが
『うん。
やっぱり 君は
彼女に謝りたかったんだね』と言った。
『うん…けど、
ずっと謝れなかった。
エリスはこんなに
辛い思いをしたのに私は…』
重ねた手に熱は感じず
抱きしめた彼女が彼女じゃないことくらい
わかってた…けど
私は 構わず彼女を抱きしめた。
あの日別れた 彼女が…エリスが
どれだけの苦労をしてきたか…
それなのに私は…
震えるエリスを抱きしめ
何度も『ごめんなさい…エリス』と
謝り続けた。
『うむ…実に興味深いよ。
君という人間は…』
そう呟くと
アラン・スミシーは
彼女を抱きしめ泣く私を
暫し見続けた。
それからしばらくして
涙を袖で拭う私を見て
ハンカチを差し出しつつ
『気は済んだかい?』と
微笑みつつアラン・スミシーが言った。
『えぇ、
ありがとう…』
そう言いつつ
ハンカチを受け取ると
アラン・スミシーが
『いえいえ、
さてと 前置きが長くなったけど
そろそろ本題に
入らせてもらおうかな』と言った。
『本題?』
首を傾げつつ言うと
アラン・スミシーが
『君は 剥奪された名前を取り戻し
まだ忘れてる記憶はあるだろうけど
自らの記憶を思い出すことが出来た』と言い
拍手するように手を叩くと
『そんな君には
この先 2つの選択肢が用意されている』と
言った。
『2つの選択肢…』
『そう 2つの選択肢。
1つ目は、
名を取り戻し
自らの罪と向き合った君は
自らの罪を償い終えたのと同じ。
だから、
ここを出て現世にまた産まれ直すも良いし…
2つ目は、
名を取り戻し
自らの罪と向き合った君だけど
まだ完全に記憶を取り戻した訳じゃない。
だから、
完全に記憶を取り戻すまで
ここに残る…なんてどうだい?』
そう言うと
私の顔を見ながら
『重要な選択だし
この部屋は他の部屋と違い
時間が止まっていてね。
だから、
ゆっくり考え決めれば
良いと思うよ』と言った。
『重要な選択…』
私の選択…
私は…
それからしばらくして
私は部屋を出た。
アラン・スミシーの言う通り
部屋の外の時間は止まっていたのか
資料室に戻ると少女が眠っていた。
少し前、
資料室に戻る前 至上者の間にて…
少し考えた後、
『至上者さん、
私をもう少しだけ雇ってくれない?』と
私が言うとアラン・スミシーが
『それは 記憶を取り戻すためかい?
それとも、
エリスのためかい?』と言った。
『う~ん、
どっちも正解だけど
どっちも不正解かな…』
私がそう言うと
そんな解答が
返ってくるとは思ってなかった
アラン・スミシーが
『それはどういうことだい?』と言った。
『これは私の考え。
ここに来て、
ずっと私は記憶喪失だった。
けど、
今日 至上者さんと話していくうちに
いろいろな事を思い出して
改めて 思ったんだ。
もう少しだけ
みんな(家族)と一緒に居たい って。
だから、
忘れた記憶を取り戻すのも
エリスのためも
どちらも正解だしどちらも不正解』
私がそう言うと
アラン・スミシーは
『ふ~ん』と言って
私の足先から頭のてっぺんまで見ると
『その選択に後悔は無いかい?』と言った。
『うん。
ここに来たこと…
私は後悔してないから』
『うん…わかった。
許可するよ』
『ありがとう!!』
感謝する私を見て
『普通は、
ここから出たいって言うんだけどね』と呟き
アラン・スミシーは
『さぁ、
そうと決まれば
資料室に戻りな』と言った。
資料室に戻り
眠る少女の頭を撫でながら
私は『エリス、
今度は私があなたを守るから』と呟いた。
~~~私の選択~~~
END
『エステルって私の名前?』
私がそう言うと
少女は酷く悲しそうな顔をしつつ
『えっ…』と言葉を詰まらせた。
構わず私は少女に
『エステルって
私の名前なの?』と言った。
すると、
少女は『…うん。
お姉ちゃん…いえ、
シャーロット・エステル あなたは
どこまで思い出したの?』と言った。
シャーロット・エステル…何故だろう。
そう呼ばれた瞬間、
とても懐かしい気持ちになった。
『全部じゃない…けど、
衝突事故の半死者の時から
ちょっと思い出したというか…。
エリスって女の子に私は
エステルって呼ばれてたことを
思い出したの』
私がそう言うと
少女は『エリス…』と呟き俯いた。
『もしかして
エリスって女の子は…』
私がそこまで言うと
俯いていた少女が
少し泣き声混じりに
『うん…』と言った。
『…もしかして…エリス?』
何故だろう 目の前の少女は
いつも私やみんなと一緒に
半死者について話す少女…のはず。
なのに、
俯き肩を震わせる少女を見て
私はそう言葉が出ていた。
『…ずっと呼んで欲しかった。
けど、
あなたが私の名前を呼んだら…
エステルが記憶を取り戻したら
私の前からいなくなっちゃうから…私…私…』
少女がそう言って私に泣きつくと
私はそれ以上何も言えなかった。
しばらくして
泣き疲れて眠る少女に膝枕をしつつ
私は他の記憶も思い出そうとした。
けど、
どれだけ思い出そうとしても
私の名前と少女の名前以外の記憶を
思い出すことは出来なかった。
『私ってどうやってここに来たんだろう…』
私がそう呟くと
私と少女の居る資料室の外から
男の人とも女の人ともわからない声で
『偶然が重なり作られた世界は
果たして本当に
全て偶然と言えるのだろうか…』と聞こえた。
『えっ?』
私は少女の頭をそっと下ろし
声の聞こえた方へ歩き出した。
資料室を出ると
声は少しだけはっきり聞こえ
私は導かれるように
廊下の奥の部屋へ歩みを進めた。
名前は思い出せても
どうやってここに来たのかも
生きてた時の記憶も
何も思い出せない…けど
何故かこの声の主に会えば
何か思い出す気がして
遂に廊下の奥の部屋の扉の
ノブに手をかけた。
すると、
扉の向こうから
男の人の声で『入りたまえ』と聞こえ
私は深呼吸をすると
『失礼します』と言って
扉の向こうに入った。
『ここは…』
部屋の中は真っ暗で
中央に金色に輝く椅子が置かれていた。
『こんな部屋があるなんて
聞いた事が無い…』
そう言いつつ
金色の椅子に近づくと
扉の前で聞いた声で
『汝の名を示し座るが良い』と聞こえた。
『私の名は…
シャーロット・エステルで良いのかな』
そう言いつつ座ると
一斉に部屋の蝋燭が灯り
私の前に置かれた三脚椅子に
知らない男の人が座っていた。
『やぁ、
元気でやってるかい?』
知らない男の人が私に言うが
男の人の事を知らなかった私は
男の人に『あなたは誰?』と言った。
『ふ~ん、
僕の事を知らないか…うむ わかった。
じゃあ、
僕のことは
アラン・スミシーと呼べばいいよ。
さて、
君はどうしてここに来たんだい?』
知らない男の人 改め
アラン・スミシーは
私にそう言うと足を組んだ。
『えっ…えっと、
声が聞こえたから…』
そう言いかけて
アラン・スミシーは突然笑い出し
『そうなの?
ふ~ん、
声が聞こえたんだ…そっかそっか。
じゃあ、
君には権利がありそうだね』と言った。
『権利?』
私がそう言うと
アラン・スミシーは
『そう。
君がどれだけ思い出したかわからないが
声が聞こえその椅子に座り
僕の姿を見れたと言うことは
君には知る権利があるということだ』と
言葉を返した。
『知る権利って…』
言いかけて
アラン・スミシーが
組んでた足を元に戻しつつ
『あぁ、
君にはもう言ったと思うが…あっ 失礼。
君の記憶は消えているから
その部分はわからないんだったね。
なら、
1から教えてあげるよ』と言い
指を鳴らした。
すると
暗かった部屋の風景が
草原のような風景になり
遠くに懐かしい建物が見えた。
『ここは?』
目の前の椅子に座る
アラン・スミシーに聞くと
『ここは、
君の故郷さ』と言い 話を続けた。
『君は貧乏貴族の1人娘として産まれ
母と死別する13歳まで
あの建物で暮らしていた』
アラン・スミシーが言い終えると
私は『そうなんだ…』と言った。
『うむ…その様子だと
その部分の記憶は取り戻せてないようだね。
さて…どうしたものか。
いつもなら記憶の糸口から辿って
思い出させていたが
今回 その方法は取れないみたいだし…』
腕組みをしつつ考えながら言う
アラン・スミシーに
私が『ねぇ、
私のお母さんってどんな人?』と言った。
『うん?
君のお母さん?
えっと…君のお母さんは…』
何処から取り出したか
手元の本を開き調べ始めた。
『ねぇ、
アランさん。
もう1つ質問良い?』
私がそう言うと
調べ物をしつつ
アラン・スミシーが
『良いよ。
なんだい?』と言った。
『ありがとう。
えっと…私って
ここへ来る前に何かしたんだよね…』
私がそう言うと
アラン・スミシーは
『そうだね。
何をしたかは
自分で思い出してもらわないとだけど』と
言葉を返した。
『うん、
今の家族に
ここに来る前の話を聞かせてもらって
少しは理解してるから大丈夫』
私がそう言うと
アラン・スミシーは
『うん、
記憶を取り戻す為
いろいろな努力をしたようだね。
関心関心!!』と言い
『さてと、
君の母親のことだけど
何かある訳じゃなく
一言で言うなら
子供をとても可愛がる人だった。
って感じかな』と言った。
『お母さん…』
『そうだ。
母親の名前は エマらしい』
アラン・スミシーが言った言葉に
どこか懐かしさを感じた。
『さっき、
死別って言ってたけど
お母さんはどうして…』
私が言いかけて
先読みしたように
アラン・スミシーが
『病死だよ』と言い 話を続けた。
『君のお母さんは
君に知られないように
最後まで隠していたようだけどね』
そう言うと
私はアラン・スミシーに
『そうだったんだ…
私、
何も覚えてなくて…』と言い
アラン・スミシーが私に
『気にすることはないさ。
何より、
記憶を忘れなければいけない理由もあったし
君1人の所為にしたら
私も彼女も罪に問われてしまう』と言った。
『彼女って?』
私がそう言うと
アラン・スミシーは
『あ~、
今回の君は
その部分覚えてなかったか。
最初にも話したけど
君は何度も記憶を取り戻しているんだよ。
ただ、
記憶を取り戻すことで
シャーロット・エステルという人物の
バランスが崩れ崩壊してしまうからと
僕がお願いして
君の友人であるエリスに
君の記憶を奪ってもらってたのさ』と
言った。
『バランスが崩れる?
それって…』
私がそう言うと
アラン・スミシーは椅子から立ち上がり
私の座る椅子の周りをぐるぐる回りながら
『ここでは、
記憶が魂の形を作るんだ。
手足の無い魂状態では
資料も読めないだろうし
話し合いにもならないだろ?
けど、
稀に君のように
記憶を取り戻した瞬間
バランスが取れず崩壊する魂もあるんだ。
その場合、
記憶を失わせてから
新しい記憶…そうだな…偽の記憶を入れ
一時的に形を保つんだけど…』と
そこまで言ったところで
私が『…つまり、
今の私は 偽の記憶によって
形を作られてるってこと?』と
言葉を返した。
『うむ…その表現だと
間違いであり正解というところかな。
まぁ、
その部分は自ずと分かると思うから
そう焦らないでいいよ』
アラン・スミシーがそう言うと
私は『わからないような…
わかるような…』と言葉を返した。
『うむ…今は、
それでいいと思うよ。
それより、
他に質問は無いのかい?』
アラン・スミシーが
再び椅子に座り足を組みつつ言った。
『えっと…』
考えていると
アラン・スミシーが
『ところで、
君は自分が何をしたのか知ってるかい?』と
言った
『私がした事?』
私がそう言うと
アラン・スミシーが
『そう。
君がした事だよ』と言い
指を鳴らした。
鳴らされた指に反応するかのように
さっきまでの草原のような風景から
どこかのお風呂場のような風景に
切り替わった。
もちろん、
私はこの場所の記憶が無い…はず。
だけど…
『なんか、
この風景というか
この場所…悲しい気持ちになってくる…』
周りを見つつ私がそういうと
アラン・スミシーが
『悲しい気持ち?
あ~そうだったね。
君はこの場所で
ある男を殺したんだ』と言った。
『えっ…私が 人殺しって…』
動揺する私にアラン・スミシーが
『動揺することじゃないと思うよ。
君はここで 山岳派リーダー
セバスチャン・リュカを刺殺した。
理由は、
家族を殺されたこと』と言い
言葉の出ない私を見つつ 話を続けた。
『母と死別した後
君はすぐに孤児院に引き取られた。
そこで出会ったのがシスターや子供達 そして
君にとってもっとも大切な友人であるエリス。
そうだね、
君にとって孤児院の人々は
寂しさで冷え固まった心を溶かしてくれた
大切な家族だった』
言い終えると
私はアラン・スミシーに
『…そのリュカって人は
私の家族を殺して何をしたかったの…』と
言葉を返した。
『うん?
君の家族を殺して何をじゃなく
彼は…』
アラン・スミシーが言いかけ
ふと何かが噛み合うような感覚して
私は『何を…違う。
彼は 私の大事な家族を殺し
私から大切な居場所を奪い
沢山の人の命を奪った…可哀想な人』と
言った。
『…うん?
記憶が戻ったのかい?』
アラン・スミシーがそう言うと
私は『うんうん、
ただリュカって名前を口にした瞬間
流れてきたというか…』と言葉を返した。
『なるほど…やはり、
君はとても興味深いなぁ』
関心するように頷くアラン・スミシーに
私は『それに私は
ここに何度も来てる…よね?』と言った。
『何度も?
…うん、まぁね。
けど、
どの時も君は記憶を思い出そうとして
記憶崩壊を起こし 記憶を剥奪され
偽の記憶で生かされてきた。
まぁ、
全て君の事を大切に思うエリスのおかげさ』
言い終えると
アラン・スミシーに私は
『うん…今思い出した。
それと、
あなたの事も思い出したよ。
アランスミシー…いえ、
至上者さん』と言った。
『フフフ…そっか、
じゃあ小芝居はおしまいだね。
さて、
現在 君は記憶崩壊を起こす事なく
自分の名前を思い出したみたいだし
そろそろ先の話をしてもいいかな』
そう言うと指を鳴らし
お風呂場だった風景から
断頭台が置かれた広場の風景に変わった。
『ここは、
私が処刑された広場…』
そう言うと
アラン・スミシーが
『うん 正解。
ここは、
君 シャーロット・エステルが
革命家 セバスチャン・リュカを殺し
殺人罪で処刑された広場』と言った。
『どうしてここを…』
言いかけて
アランスミシーが
『どうしてここを写したのか…って
言いたいのかい?
それは、
君がよくわかってるはずさ』と言った。
『私がよくわかってるはず?
それってどういう…』
言いかけて
縄が切れる音と
ギロチンが滑り降りる音が聞こえ
集まった人々の中から
よく知ってる女の子の
「殺さないで!!
あぁ…エステル…いやぁぁぁ!!!!」と
泣き叫ぶ声が聞こえた。
『エリス…?』
至上者によって映された風景なのは
十分わかってる。
けど、
集まった人々をかき分け
背の低い女の子が飛び出したかと思うと
ギロチンで首を落とされた私に駆け寄り
言葉にならない悲鳴を上げ
ずっと泣いていた。
『そんな…』
処刑人や兵士が
私の遺体から離そうとするも
背の低い女の子は「嫌!!」と叫び
いつまでも私の遺体に
しがみついたまま離れなかった。
『ごめん、
エリス。
私はやっぱり、
あなたとの約束を守れなかったよ』
至上者によって映された
私の遺体にしがみついたまま離れない
背の低い女の子の方を見て
呟くように言った。
ふと、
そこで初めて
自分が泣いていることに気づいた。
しばらくして雨が降り出し
私の遺体にしがみついたまま離れない
彼女を濡らしていく。
寒さかそれとも…震える彼女を見て
私は『エリス…』と言い
映された風景とわかっていながら
彼女を抱き寄せようとした。
すると、
アラン・スミシーが
『うん。
やっぱり 君は
彼女に謝りたかったんだね』と言った。
『うん…けど、
ずっと謝れなかった。
エリスはこんなに
辛い思いをしたのに私は…』
重ねた手に熱は感じず
抱きしめた彼女が彼女じゃないことくらい
わかってた…けど
私は 構わず彼女を抱きしめた。
あの日別れた 彼女が…エリスが
どれだけの苦労をしてきたか…
それなのに私は…
震えるエリスを抱きしめ
何度も『ごめんなさい…エリス』と
謝り続けた。
『うむ…実に興味深いよ。
君という人間は…』
そう呟くと
アラン・スミシーは
彼女を抱きしめ泣く私を
暫し見続けた。
それからしばらくして
涙を袖で拭う私を見て
ハンカチを差し出しつつ
『気は済んだかい?』と
微笑みつつアラン・スミシーが言った。
『えぇ、
ありがとう…』
そう言いつつ
ハンカチを受け取ると
アラン・スミシーが
『いえいえ、
さてと 前置きが長くなったけど
そろそろ本題に
入らせてもらおうかな』と言った。
『本題?』
首を傾げつつ言うと
アラン・スミシーが
『君は 剥奪された名前を取り戻し
まだ忘れてる記憶はあるだろうけど
自らの記憶を思い出すことが出来た』と言い
拍手するように手を叩くと
『そんな君には
この先 2つの選択肢が用意されている』と
言った。
『2つの選択肢…』
『そう 2つの選択肢。
1つ目は、
名を取り戻し
自らの罪と向き合った君は
自らの罪を償い終えたのと同じ。
だから、
ここを出て現世にまた産まれ直すも良いし…
2つ目は、
名を取り戻し
自らの罪と向き合った君だけど
まだ完全に記憶を取り戻した訳じゃない。
だから、
完全に記憶を取り戻すまで
ここに残る…なんてどうだい?』
そう言うと
私の顔を見ながら
『重要な選択だし
この部屋は他の部屋と違い
時間が止まっていてね。
だから、
ゆっくり考え決めれば
良いと思うよ』と言った。
『重要な選択…』
私の選択…
私は…
それからしばらくして
私は部屋を出た。
アラン・スミシーの言う通り
部屋の外の時間は止まっていたのか
資料室に戻ると少女が眠っていた。
少し前、
資料室に戻る前 至上者の間にて…
少し考えた後、
『至上者さん、
私をもう少しだけ雇ってくれない?』と
私が言うとアラン・スミシーが
『それは 記憶を取り戻すためかい?
それとも、
エリスのためかい?』と言った。
『う~ん、
どっちも正解だけど
どっちも不正解かな…』
私がそう言うと
そんな解答が
返ってくるとは思ってなかった
アラン・スミシーが
『それはどういうことだい?』と言った。
『これは私の考え。
ここに来て、
ずっと私は記憶喪失だった。
けど、
今日 至上者さんと話していくうちに
いろいろな事を思い出して
改めて 思ったんだ。
もう少しだけ
みんな(家族)と一緒に居たい って。
だから、
忘れた記憶を取り戻すのも
エリスのためも
どちらも正解だしどちらも不正解』
私がそう言うと
アラン・スミシーは
『ふ~ん』と言って
私の足先から頭のてっぺんまで見ると
『その選択に後悔は無いかい?』と言った。
『うん。
ここに来たこと…
私は後悔してないから』
『うん…わかった。
許可するよ』
『ありがとう!!』
感謝する私を見て
『普通は、
ここから出たいって言うんだけどね』と呟き
アラン・スミシーは
『さぁ、
そうと決まれば
資料室に戻りな』と言った。
資料室に戻り
眠る少女の頭を撫でながら
私は『エリス、
今度は私があなたを守るから』と呟いた。
~~~私の選択~~~
END
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