ジャッジメント〜許されるべき魂〜

ノア

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原罪

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………の結果。


『やぁ、
僕の名前は 沢山ありすぎて
どれを名乗れば良いか…だけど
初めはこう呼ばれていた』

白いタキシードを着た男の人が
こちらを向き会釈をしながら
『カイン』と言った。

『知らない?
そっかそっか、
まぁ知らないのも無理は無いし
この名前もずっと昔に剥奪されたから
今はもう僕の名前では無いんだけどね。
あっ…僕にはずっと昔の事だけど
君達には明日の出来事だったか…。
さてと、
僕にはいろいろな顔がある。
生者と死者の境
半死者となった者の裁きを下す者だったり…
天と地を司る者だったり…
人類史初の殺人を犯した者だったり…
呼ばれもその度に変わり
様々な呼ばれ方があるけど
今はアラン・スミシーと名乗っている。
うん?
本当に殺人を犯したのかって?
フフフ…さてどうだったかな。
気になるなら、
僕の過去を少しだけ見せてあげよう』


ある村に
信心深き2人の兄弟がいた。

兄の名は………で
弟の名は………と言い
兄は農耕で生計を立て
弟は羊の放牧で生計を立てていた。

夏の始まりに
兄弟は自分のところで取れた収穫物を
実りの神である………に捧げた。

兄は 穀物を…

弟は 羊の初子を…

ですが、
ある年の夏の始まり
………は 弟である………の捧げた
羊の初子を気に入り
兄である………の
穀物に見向きをしなかった。

これを恨んだ兄はその後、
弟を丘の上に誘い出し
そのまま殺してしまった。

それからしばらくして
………は兄に
弟の行方を尋ねたところ
兄は「知りません。
僕は弟の番人なのですか?」と応えた。

が、
大地に流れた兄の血が
………に向かって語りかけ
弟は兄を殺した罪により
暗闇へ落とされた。


『ここは…』


気がつくと白いタキシードを着た男の人は
真っ暗闇に倒れていた。

背後に金色に輝く椅子が置かれていて
どこからともなく男の人の声で
『罪人よ…座りたまえ…』と聞こえた。

言われるままに
白いタキシードを着た男の人が座ると
再びさっきの男の人の声で
『罪人よ、
汝の罪は殺人だ』と聞こえた。

『殺人…そうか、
どおりで真っ暗闇に落ちた訳だ。
それで、
ここは僕を裁くためのあの世なのかい?』

白いタキシードを着た男の人が言うと
声の主は『そうでありそうでない場所…
或いは、
名無し達の法廷』と言った。

『名無し達の法廷?
君の姿は見えないが
君以外にも誰かここには居るのかい?』

白いタキシードの男の人が言うと
声の主は『否…或いは 是』と言葉を返した。

『居るけど居ない…ふ~ん、
まぁ 僕にはどちらでもいいことって
解釈で良いんだよね?』

白いタキシードの男の人がそう言うと
声の主は『是』と言った。

『さてと、
法廷という事は
僕はここで然るべき
裁きを受けなければいけない。
だけど、
あいにく君の言う
僕が人を殺したって記憶が無くてね。
悪いんだけど、
僕はいったい誰を殺したんだ?』

白いタキシードを着た男の人が言うと
声の主は『被害者は、
汝の弟であるアベル』と言い
白いタキシードを着た男の人が
『アベル?
知らない名前だ…だけど、
どこか懐かしい気がする』と
言葉を返した。

『然り、
アベルの兄である汝は
神であるヤハスクが弟が育てた羊の初子を
気に入ったことに嫉妬し
何故 自分の育てた穀物は
選ばれなかったのかと怒り そして
丘の上へ アベルを呼び出し
「やめてくれ!!兄さん」と叫ぶ
アベルの声を無視し
何度も何度も殴り 殴殺した。
そして、
アベルの遺体をセナド(川)に流し
隠した帰り道に
汝はヤハスクに出会い 問われた』

声の主がそこまで言うと
白いタキシードの男の人が
『僕はそんなに
嫉妬深い人間だったのかい?』と言い
声の主が『是。
汝、
始まりの人間の子として
地上に産まれし時から
傲慢 嫉妬 憤怒 怠惰 強欲 暴食 色欲と
様々な罪を身に受けている。
それ故、
汝の行動は人間本来の罪の一つと言える』
と言葉を返した。

『人間本来の罪か…
それで、
殺人を犯した僕は
この後 どうなるの?』

白いタキシードの男の人がそう言うと
突然 周りが昼間のように光り
目の前に白い翼を生やした
男の人とも女の人ともわからない
中性的な顔立ちの人が現れ
被っていた帽子を取り会釈すると
『汝、
血肉を分けし兄弟を殺した者よ…
その罪は 全ての人類にとっての
始まりの罪であり
永劫 許される事は無いでしょう』と言った。

『すべての人類にとっての始まりの罪?
なるほど…だけど、
僕以上に大きな罪を犯している人間は
たくさんいると思うけど
僕はその人達より
許されないことをしたって認識でいいの?』

白いタキシードの男の人が言うと
白い翼を生やした人は
『否…汝、
人類の始まりの罪として
その身に背負いし罪を償うため
この地にて
半死者へ裁きを与えよ』と言った。

『罪を償う為に
半死者に裁きを…?
半死者ってなんだい?
それに、
罪を償うっていつまで…』

白いタキシードの男の人が言いかけて
白い翼を生やした人は
『汝に問いと拒みは許されない』と
言葉を返し
再び周りが眩い光りに包まれ
光りが止むと
白い翼を生やした人は消えていた。


それからずっと、
僕はこの暗闇で半死した人間を裁き続けた。

人殺しに…自殺の失敗に…事故に…陰謀に…
半死者は様々な罪を犯し そして
僕は 半死者の生き死にを決め裁き…
どれだけの時間が流れたか…
ある日、
半死ではない人間がここに来た。

『ここは…』

その人間は 周りを見回し
大きな声で 
『すいません!!
誰かいませんか?』と言った。

普通、
怖がるだろ?なんて思ったけど
僕はそんな変な言動をする人間に興味を持ち
姿を隠す為にピエロの格好をして
彼女の前に姿を現した。

『やぁ、
半死者ではないみたいだし
君はお客さんかい?』

僕がそう言うと
彼女はキョトンとした顔で僕の顔を見て
3秒後に『はじめまして、
私は ベル。
家の掃除をしてたら
いつのまにかここに居て…って
あなた アラン・スミシーのピエロ?』と
言った。

『アラン・スミシー?
なんだいそれは?』

僕がそう言うと
ベルは 僕の格好に
よく似たピエロが出る映画があり
その映画の監督が
アラン・スミシーであると教えてくれた。

『…そして、
ピエロはこういうの。
「お願いします。
僕を本当の人間にしてください」って。
けど、
神様はピエロが
親友だった鳥を殺したことを決して許さず
殺した罪を償い終えるまで
木人として踊らせました』

映画の話をするベルに
僕は『ピエロはきっと
神様の親友を殺してしまったことを
後悔したんだろうな…』と言い
ベルが『うん。
そして、
神様は罪を償い終えたピエロに
「痛みを知れたか?
苦しみを知れたか?
それが おまえの欲していた人間の心だ」と
言って ピエロを人間にするの』と言葉を返し
僕は『それって嫌味じゃないかな?
だって、
ピエロは人間に憧れてたのに
その人間達の嫌な部分を見せるなんて…』と
言った。

『うんうん。
神様はね、
ピエロに知って欲しかったんだよ。
大切なモノを失う痛みや苦しみを。
そして、
2度と悲しいことを繰り返さないで欲しかったんだと思う』

ベルはまっすぐ僕を見て言った。

そっか、
ほとんど覚えていないけど
アベルを殺した僕に
白い翼を生やした人は
こういうことが言いたかったんだな…

そんなことを思っていると
ベルが僕に
『ねぇ、
そう言えば あなた お名前は?』と言い
僕は『昔はあったけど
今は僕に名前は無いよ』と言葉を返した。

『名前が無いなんて可哀想…そうだ!!
アラン・スミシーのピエロに似てるから
あなたは今日から アラン・スミシー…
なんて どうかな?』

照れつつ言うベルに
僕は『気に入ったよ ありがとう』と言った。


それからどれだけ時間が経ったか…

ベルは さよなら も言わずに
突然霧のように 僕の前から消えた。

後で知ったことだけど
あの世へ向かう死者の中には
偶然 ここに迷い込んでしまう者が居て
ベルもその1人だった。


『それから、
僕は ここに 半死者を裁く為の
話し合い室を作り
あの世に行く予定だった死者を
権限で雇った。
まぁ、
僕が楽をする為って見る連中も居たけど
残念ながらそんなんじゃない。
簡単に言えば、
僕以外の意見を聞く為…なんてね』

言い終えると白いタキシードの男は
金色に輝く椅子の上に
【後任状
シャルロット・エステルに
全ての権限を譲り渡す】と書かれた
手紙を置き暗闇へ去って行った。



『偶然が重なり作られた世界は
果たして本当に
全て偶然と言えるのだろうか…
避けられない必然が重なり彩られた世界は
果たして本当に
全て無かったと言えるのだろうか…
全ての人類(兄弟)よ。
芽吹きの時はまもなく来れり…』




~~~原罪~~~

END

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