20 / 21
側妃との対決と婚約者
第二十話 エディックという男性(ひと) sideエディック
sideエディック
「と、いうわけで、カレン・ナルメアを拘束し、衛兵へと渡しました。そして、彼女の証言により、アレクは、あの人に洗脳されていたことが判明しました」
「うむ、そうか。と、なると、今日、全てを終わらせるとしよう」
私の報告に難しい顔をした父上は、どうやら覚悟を決めたようだ。
「はい、もとよりそのつもりです」
ーーそう私が父上に言ったすぐ後だった。
私はアメリアを傷つけようとしたあの人を許すつもりなど毛頭ないのだから。そして、この、腸が煮えくり返りそうなこの気持ちは、あの人を許せそうにない醜い私の感情で、私は皇族の始祖の血を引いているのだと嫌でも理解させられるのだった。
でも、きっと、私のこの君への燃えるようなこの思いを君は知らないのだろう。私はどうしようもなく君を愛しく思っているのだが、きっと君にはその十分の一ほどしか伝わっていないのだから。
ーーあの人、側室エイダ・アハルがこの皇宮のホールに足を踏み入れたのは。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
初めてアメリアに会った時、一人泣いている君を何故か放っておけなかった。泣いている君が初めて私に向かって笑った時、私の手でもっと笑わせたい、そう思ったんだ。
最初は『妹』のような存在に対するただの庇護欲だと思っていた。
でも、アメリアのことを『妹』ではなく、一人の女の子として見だしたのはいつからだっただろうか。私の名前を大切そうに、優しく穏やかな声で呼ぶ、そんなアメリアがいつの間にか、私の中で大きな存在になっていた。『妹』に対してはありえない感情を抱いていることに気づいた時には、もう遅かった。アメリアのことを手放せない、手放したくなくなっていた。
小さな蕾だったアメリアは成長するにつれて、蕾が綻びやがて大輪の花を咲かせるように美しくなっていくことは分かっていた。私ではなくても、他にアメリアの貰い手は山ほどいる。
本当なら、身を引くべきなんだろう。こんな私では、アメリアにはふさわしくないだろう。
アメリアは知らない。私は、アメリアが思っているような“キレイ”な人間ではない。私は、アメリアのためならどこまでも非情になれる人間だ。
そもそも皇帝はキレイなだけではなれない。だから、情が必要ない部分で情を捨てきれないアレクは皇帝に向いていない。
アメリアに言ったことはないが、アメリアはアレクのような男と結婚する方が幸せなのではないかと思っていた。
私と結婚すると皇帝の妻となり、皇妃となる。皇妃となれば、いやでもキレイなままではいられなくなる。だが、アレクは第三皇子だ。第三皇子の妻、という立場なら、皇妃よりも気ままで、まだキレイでいられる。
綺麗なドレスを着て、綺麗なアクセサリーを身につけ、花を愛でて、子を産み、母となり、汚いモノは何も無い、アメリアは本当ならそんな優しい世界で生きられた。好きな人にはそんな優しい世界で生きていて欲しい、そう思う私は普通だろう。今でもそう思っているということは、アメリアには言えない。
でも、純粋に私に好意を寄せてくれて、花が咲いたような笑顔を向けてくるアメリアを、いつの頃からか、私のものだけでいて欲しいと思うようになった。弟達にも渡したくないと思っていった。弟達のアメリアへの恋慕には、弟達が自分の気持ちに気づくより早く分かっていた。だから、私の婚約者という立場に早くして、他の者にも私のものだという印象をつけるようにしていた。
そうして、アメリアを私に縛り付けていた。
アメリアは木漏れ日の下で笑っている方が似合う。でも、そんなアメリアを、私と皇宮という籠に縛り付けたのは他でもない私で、汚い私のエゴだ。
だから、少しでもアメリアにはキレイなままで生きられるように、私がアメリアの障害になるものを潰しておくし、そんな“キレイな私”ではない私を出来ればアメリアには見せたくない。
ねえ、リア。
こんな私を知ったら、君は軽蔑するのだろうか。
そんな風に君に嫌われることに怯えてしまう私は、相当君に惚れているんだな、とそう考えて思わず自嘲じみた苦笑を零した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
頭を切り替えようと今までの思考を一旦振り払う。
ーー目を閉じるとリア、君の笑顔が浮かぶ。私は君の笑顔を守りたかっただけなんだ。今まで、皇太子としての教育を受け、勉学に励み、皇太子として振舞ってきた。それは、本当は、これからも君の隣にいる、ただそれだけのためだった。君と共に時間を過ごすためだった。
ゆっくりと目を閉じる。
ーー後少し、後少しなんだ。四年前からこの時をずっと。だから、リアとの婚約発表も後回しにして。私はひたすらに、君が泣かないでいられるようにと願っていた。そして、そのために行動していた。
再び目を開けて、そして、呼びたくもないが今の義母上ーーエイダへと視線を向ける。
ーーずっとずっと、この時を待っていましたよ、義母上。
「と、いうわけで、カレン・ナルメアを拘束し、衛兵へと渡しました。そして、彼女の証言により、アレクは、あの人に洗脳されていたことが判明しました」
「うむ、そうか。と、なると、今日、全てを終わらせるとしよう」
私の報告に難しい顔をした父上は、どうやら覚悟を決めたようだ。
「はい、もとよりそのつもりです」
ーーそう私が父上に言ったすぐ後だった。
私はアメリアを傷つけようとしたあの人を許すつもりなど毛頭ないのだから。そして、この、腸が煮えくり返りそうなこの気持ちは、あの人を許せそうにない醜い私の感情で、私は皇族の始祖の血を引いているのだと嫌でも理解させられるのだった。
でも、きっと、私のこの君への燃えるようなこの思いを君は知らないのだろう。私はどうしようもなく君を愛しく思っているのだが、きっと君にはその十分の一ほどしか伝わっていないのだから。
ーーあの人、側室エイダ・アハルがこの皇宮のホールに足を踏み入れたのは。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
初めてアメリアに会った時、一人泣いている君を何故か放っておけなかった。泣いている君が初めて私に向かって笑った時、私の手でもっと笑わせたい、そう思ったんだ。
最初は『妹』のような存在に対するただの庇護欲だと思っていた。
でも、アメリアのことを『妹』ではなく、一人の女の子として見だしたのはいつからだっただろうか。私の名前を大切そうに、優しく穏やかな声で呼ぶ、そんなアメリアがいつの間にか、私の中で大きな存在になっていた。『妹』に対してはありえない感情を抱いていることに気づいた時には、もう遅かった。アメリアのことを手放せない、手放したくなくなっていた。
小さな蕾だったアメリアは成長するにつれて、蕾が綻びやがて大輪の花を咲かせるように美しくなっていくことは分かっていた。私ではなくても、他にアメリアの貰い手は山ほどいる。
本当なら、身を引くべきなんだろう。こんな私では、アメリアにはふさわしくないだろう。
アメリアは知らない。私は、アメリアが思っているような“キレイ”な人間ではない。私は、アメリアのためならどこまでも非情になれる人間だ。
そもそも皇帝はキレイなだけではなれない。だから、情が必要ない部分で情を捨てきれないアレクは皇帝に向いていない。
アメリアに言ったことはないが、アメリアはアレクのような男と結婚する方が幸せなのではないかと思っていた。
私と結婚すると皇帝の妻となり、皇妃となる。皇妃となれば、いやでもキレイなままではいられなくなる。だが、アレクは第三皇子だ。第三皇子の妻、という立場なら、皇妃よりも気ままで、まだキレイでいられる。
綺麗なドレスを着て、綺麗なアクセサリーを身につけ、花を愛でて、子を産み、母となり、汚いモノは何も無い、アメリアは本当ならそんな優しい世界で生きられた。好きな人にはそんな優しい世界で生きていて欲しい、そう思う私は普通だろう。今でもそう思っているということは、アメリアには言えない。
でも、純粋に私に好意を寄せてくれて、花が咲いたような笑顔を向けてくるアメリアを、いつの頃からか、私のものだけでいて欲しいと思うようになった。弟達にも渡したくないと思っていった。弟達のアメリアへの恋慕には、弟達が自分の気持ちに気づくより早く分かっていた。だから、私の婚約者という立場に早くして、他の者にも私のものだという印象をつけるようにしていた。
そうして、アメリアを私に縛り付けていた。
アメリアは木漏れ日の下で笑っている方が似合う。でも、そんなアメリアを、私と皇宮という籠に縛り付けたのは他でもない私で、汚い私のエゴだ。
だから、少しでもアメリアにはキレイなままで生きられるように、私がアメリアの障害になるものを潰しておくし、そんな“キレイな私”ではない私を出来ればアメリアには見せたくない。
ねえ、リア。
こんな私を知ったら、君は軽蔑するのだろうか。
そんな風に君に嫌われることに怯えてしまう私は、相当君に惚れているんだな、とそう考えて思わず自嘲じみた苦笑を零した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
頭を切り替えようと今までの思考を一旦振り払う。
ーー目を閉じるとリア、君の笑顔が浮かぶ。私は君の笑顔を守りたかっただけなんだ。今まで、皇太子としての教育を受け、勉学に励み、皇太子として振舞ってきた。それは、本当は、これからも君の隣にいる、ただそれだけのためだった。君と共に時間を過ごすためだった。
ゆっくりと目を閉じる。
ーー後少し、後少しなんだ。四年前からこの時をずっと。だから、リアとの婚約発表も後回しにして。私はひたすらに、君が泣かないでいられるようにと願っていた。そして、そのために行動していた。
再び目を開けて、そして、呼びたくもないが今の義母上ーーエイダへと視線を向ける。
ーーずっとずっと、この時を待っていましたよ、義母上。
あなたにおすすめの小説
良くある事でしょう。
r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。
若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。
けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
【改稿版】婚約破棄は私から
どくりんご
恋愛
ある日、婚約者である殿下が妹へ愛を語っている所を目撃したニナ。ここが乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢、妹がヒロインだということを知っていたけれど、好きな人が妹に愛を語る所を見ていると流石にショックを受けた。
乙女ゲームである死亡エンドは絶対に嫌だし、殿下から婚約破棄を告げられるのも嫌だ。そんな辛いことは耐えられない!
婚約破棄は私から!
※大幅な修正が入っています。登場人物の立ち位置変更など。
◆3/20 恋愛ランキング、人気ランキング7位
◆3/20 HOT6位
短編&拙い私の作品でここまでいけるなんて…!読んでくれた皆さん、感謝感激雨あられです〜!!(´;ω;`)
婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい
麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。
しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。
しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。
第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。