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第1章 それぞれ
1話
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「あ……」
暗いビルとビルの間に街の灯りから逃れるように少女はそこにいた。手に持っているのはカッターナイフ。災難なことにリストカットを目撃してしまったらしい。暗くて顔は見えなかったがセーラー服のようなものを身にまとっていた。高校生だろうか。
「いきなり立ち止まって、どうしたの?」
組んでいた腕を引き寄せられると同時にきつめの化粧品の匂いが鼻をついた。
「何でもないですよ。早く行きましょう」
しかめかけた表情筋を間一髪ゆるめ答えた。ふと視線を戻すと少女はもういなかった。
ホテルのベッドの上では裸の男女が抱き合っていた。行為が終わったあとなのかシーツは乱れている。
「やっぱりそうくんとのセックスの方が気持ちいわね」
女は艶めかしくタバコを咥えている。男は満足そうに微笑む。
「ねぇ…いつになったら旦那さんと別れて俺と結婚してくれるの?」
男は女に抱きつき上目遣いで問いかける。2人は所謂不倫関係というやつなのだろう。
「え?旦那と離婚する気はないわよ?」
男は目を丸くして信じられないと言った表情をしている。
「私とそうくんは体だけの関係でしょ?そうくんセックス上手だしこれからもこうして会いたいわ」
男の手元のシーツが歪む。本気だったのであろう男の気持ちはこの一瞬にして砕かれていた。
そこからは逃げるようにホテルを後にした。夜の街は明るく男のことを嘲笑うかのようでもあった。
(また…また俺だけ……俺だけ本気になって。あの人は遊びだったのに…はっ…ほんとばかみたいだな…)
これが初めてではなかった。クラスメイト年下人妻いろんな女に本気になったが本気になるのは自分だけであった。
(もう死のうかな…)
ふとビルを見上げる。10階建てのビルの屋上から飛び降りれば確実に死ねるだろう。
気がつくと足がビルに向かっていた。ビルの間の狭い路地の奥には屋上へ続く外階段がある。
「小野蒼二」
呼ばれた。声は後ろから聞こえていた。
「誰…?」
か弱い声で聞くと声の主は男の前へ回り込んできた。明るめの茶髪が靡いている。マスクで顔は分からないが綺麗な顔をしている。そして見覚えのあるセーラー服だった。
「あ……えっ?同じ学校…?」
思わず呟いた言葉はもう戻っては来なかった。
「あなた死にたいの?」
いきなりの反応に言葉がでなかった。死にたいなんて口に出しただろうか。そんなに死にたそうな顔をしていたのだろうか。そんなことを考えていると少女は笑みを浮かべ顔を近づけてきた。
「な、なんですか」
震える声を必死に抑えながら尋ねる。
「あたし佐藤恵里香。小野蒼二くん……あたしと一緒に死んでくれない?」
暗いビルとビルの間に街の灯りから逃れるように少女はそこにいた。手に持っているのはカッターナイフ。災難なことにリストカットを目撃してしまったらしい。暗くて顔は見えなかったがセーラー服のようなものを身にまとっていた。高校生だろうか。
「いきなり立ち止まって、どうしたの?」
組んでいた腕を引き寄せられると同時にきつめの化粧品の匂いが鼻をついた。
「何でもないですよ。早く行きましょう」
しかめかけた表情筋を間一髪ゆるめ答えた。ふと視線を戻すと少女はもういなかった。
ホテルのベッドの上では裸の男女が抱き合っていた。行為が終わったあとなのかシーツは乱れている。
「やっぱりそうくんとのセックスの方が気持ちいわね」
女は艶めかしくタバコを咥えている。男は満足そうに微笑む。
「ねぇ…いつになったら旦那さんと別れて俺と結婚してくれるの?」
男は女に抱きつき上目遣いで問いかける。2人は所謂不倫関係というやつなのだろう。
「え?旦那と離婚する気はないわよ?」
男は目を丸くして信じられないと言った表情をしている。
「私とそうくんは体だけの関係でしょ?そうくんセックス上手だしこれからもこうして会いたいわ」
男の手元のシーツが歪む。本気だったのであろう男の気持ちはこの一瞬にして砕かれていた。
そこからは逃げるようにホテルを後にした。夜の街は明るく男のことを嘲笑うかのようでもあった。
(また…また俺だけ……俺だけ本気になって。あの人は遊びだったのに…はっ…ほんとばかみたいだな…)
これが初めてではなかった。クラスメイト年下人妻いろんな女に本気になったが本気になるのは自分だけであった。
(もう死のうかな…)
ふとビルを見上げる。10階建てのビルの屋上から飛び降りれば確実に死ねるだろう。
気がつくと足がビルに向かっていた。ビルの間の狭い路地の奥には屋上へ続く外階段がある。
「小野蒼二」
呼ばれた。声は後ろから聞こえていた。
「誰…?」
か弱い声で聞くと声の主は男の前へ回り込んできた。明るめの茶髪が靡いている。マスクで顔は分からないが綺麗な顔をしている。そして見覚えのあるセーラー服だった。
「あ……えっ?同じ学校…?」
思わず呟いた言葉はもう戻っては来なかった。
「あなた死にたいの?」
いきなりの反応に言葉がでなかった。死にたいなんて口に出しただろうか。そんなに死にたそうな顔をしていたのだろうか。そんなことを考えていると少女は笑みを浮かべ顔を近づけてきた。
「な、なんですか」
震える声を必死に抑えながら尋ねる。
「あたし佐藤恵里香。小野蒼二くん……あたしと一緒に死んでくれない?」
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