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酒にめちゃくちゃ弱いらしい俺はいつも記憶がない
不健全な甘やかし
しおりを挟む彼に流された関係だから、また想い人が他人と親密や場面を見ることになっても追求することなんて出来やしないのだ。なんて虚しい。なんて悲しい。だが、それも仕方の無いことだ。
「ベル先輩ありがとうございました!」
「うん。じゃあまたね」
キッチンの窓から玄関前で知らない女の頭を撫でているベルンハルトを見つける。あんな触り方恋人の俺にすらしないのに。やっぱり俺は本命じゃないのかな。
ぐちゃり。手元のハンバーグが不快な音を立てた。
俺としては弁当を丸ごとゴミに捨てた後、仕事に戻った。気が気ではなかったが仕事を放っておく訳にもいかず、闇雲にやって帰ってきたのだ。
そして、今は夜ご飯としてハンバーグと付け合せの蒸し野菜、バゲットを用意し始めていた。ベルンハルトは騎士で食べるから量を増やさなきゃとかあいつは野菜より肉ばかり食べるから野菜もちゃんと取ってもらわないとか。彼の為に色々考えて、作っていて、ため息を吐く。なんでまたこっちのこと気にしてない男に尽くしてるんだろ。段々と惨めな自分が浮き彫りになっていく。
「ただいま、エル」
「……おかえり」
「わぁ、美味しそうだね、エルンスト。いつもありがとう。それに、ごめんね、そんなことさせてて」
玄関を開けて俺に駆け寄ってきたと思えば、可愛子ぶった声を出すベルンハルトに後ろから抱きしめられる。
その声と体温にふと自分が自分でないような感覚が生まれた。その瞬間彼を突き飛ばしていた。
彼には体幹のあるので全くよろける様子はなかったが、残念そうな顔で数歩下がった。彼は自分のした事が俺にまだ気づかれていないと思っているのだろう。俺を差し置いて他の女を可愛がってるなんて。
「……お前、他のやつと仲良くやってるのにやめろよ。浮気なんてクソなことするな」
「え?」
「お前のせいだからな。お前が、言わないから……言わないから、ずっと俺、間違って……」
俺は頭をガシガシとかき混ぜ呆然とぼやけた声を上げていく。
あの女はだれと直接問い詰めればいいのにそれが怖くて、あの子は恋人だと想い人だと言われたくなくて自分の中に感情を抑え込む。
自分の闇に沈み込むようなのに、好きだと思う気持ちが彼に引っ張っぱられていて自分がぐるぐると可笑しくなっていったような気持ちになった。
「……ごめん。何か勘違いさせてたのかな」
「っ、何が勘違いだよ。反省しろ」
「うん。ごめん」
再度抱きしめてくる体に腰に当たる違和感。
ベルンハルトはやっぱり色恋しか考えてないと思っても彼に求められているというのが嬉しくてそのまま流されていく。
「……なぁ、腰のなんだよ?」
「……ごめん。本当に勘違いだ。僕は君しか見てないし、邪な目でしか見てない訳じゃない。ただ、泣いてるのなんて初めて見たから可愛いなって思っちゃって」
「嘘」
「嘘じゃないよ。どうやったら信じてくれる?」
「キスをして、俺を安心させてくれ」
ソースを作るために机に置かれたワイン瓶を掲げ一呑み。
自分の底に沈む後悔を流し込み、いつものように記憶を飛ばした。
頭がガンガンしている。
やっぱり、いつも通りだ。
分かっていた。呑まなきゃいいって。でも、何を言われるのか、愛を注ぎ込まれて自分が浮かれてしまわないか、自分が捨てられないか怖くて堪らないのだ。
現に彼は名前だって一度も呼んでくれてない。これじゃセフレだろう。
涙が出ても、今のベルンハルトは気づかない。
だってベルは直ぐに外に出てしまうから。仕事のせいだって分かっているけれど、俺はもう。もう、どうしたらいいんだ。
机の上には、『ごめん。エルンスト、愛してるよ』とだけ書かれたメモが残されていた。
虚しい。そんな感情も飲み込むしか無かった。
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