続・陰陽神(いよかん)とポンの不思議な冒険

マシュー

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第十九話

成長と成功

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ポンが変化へんげじゅつを行って出た白い煙が徐々に晴れた。

するとそこには、1人の少年がいた。
その少年は、ジョーが子供の頃の姿だった。

「ポンの変化へんげじゅつが成功したわ!」

「やるにゃ~!ポン!ちゃんとジョーさんに変化できたにゃ!」

「ポン・・・、お前!」
ジョーは、ポンの成長を目の当たりにして、驚き、感動している。


そんなみんなの反応をよそに、ジョーに変化したポンはソウコウにゆっくり近寄り、正面に立つと、無言で、そっとソウコウの両手を優しく手に取り、その手の冷たさに気付いた。

「あぁ、ごめんね。私の手、冷たいだろう?冷え性なものでね。」

そして、ジョーの姿のポンは、その冷たい両手を、自分の腰に包むように引き寄せた後、その手を離すと、ソウコウの背中へと手を伸ばそうとしたが、身長が足らず腰までしか届かなかった。

すると、それに感づいたソウコウは、スッと膝を曲げて、片膝を地面につけた事で丁度目線が同じくらいになり、ソウコウの背中に手が届いた。

そしてそのまま互いに包み込む様に、優しく抱擁した。

「あぁ、温かい。ずっとこうしたかった。」
ソウコウの冷たい手は、ジョーになったポンの体温によって、温まっていくのを感じながら、これまでの事を思い返した。

「わたしは、長い間、本当の父親であるという事を秘密にして生きてきた。辛かった。何より、ジョーにウソを付いていた事が一番辛かった。」

ポンは何も喋る事なく、ソウコウ背中をポンポンと優しくたたいた。

「本当にすまなかった!約束だったとは言え、君を騙していた事には違いはないから!どうかこんな父親を許してくれ!」

すると、ジョーは、ポンの背中へとスーッと憑依はいっていった。

そして、ポンの表情がキリッと変わった。

「何言ってるんですか!どんな時も、僕の事をずっと見守ってくれてたじゃないですか!僕はそれだけで充分でしたよ!それだけで父親としての役目は果たしていましたよ!」
無言だったポンはジョーが憑依はいったことによって、見た目は子供だが、声だけは大人のジョーの声になった。


「うおおぁおおお!!」
ソウコウはジョーの言葉に、今まで抑えていた感情をあらわにした。

「本当にありがとうございました!」

「ジョー、わたしの方こそ、すべてを受け入れてくれて、ありがとう。」
ソウコウがジョーを抱きしめる強さが少し強くなる。

「そして、母を愛してくれてありがとう。2人の子供で良かった。本当に良かった。感謝しています。」


すると、良い雰囲気の中、突然、「ボン!!!」という音と共に、また白い煙に包まれた。


やがて、白い煙が開けると、ポンは元の白狸の姿に戻っていた。

「やはり変化時間にはまだまだ制限があるわね。ポンくんお疲れ様。」

「はぁ、はぁ、はぁ。これ結構体力使いますねぇ。はぁ、はぁ、はぁ。」
変化の術はかなりのエネルギーを消費するようだ。

「ポン!大丈夫かにゃ!!」

「うん、ありがとう。大丈夫だよ。」


「ポンくん、ありがとう。とても懐かしくて嬉しかったよ。」


「えへへへ。喜んでもらえて良かったです。」

「2人とも、良い弟子を持ったね。」

「はい!そうですね!」
ジョーは清々しい表情で言った。

「とても頼もしいです。」
ヨーコは優しい表情で言った。

「オイラもポンに負けてられないにゃ~。」
りりはポンの肩に手を乗せて言った。

「最高の先生のお陰です。まさか成功するとは思わなかったけど。こんなぽくだって、やれば出来るって事を学べました。」

「ポン。お前、成長期が半端ないにゃ~!でもオイラも嬉しいにゃ!」

「あはははは!良いコンビだね。そうだ!そういえば、君たちがここに来たのにはわたしに用事があったからじゃなかったかな?わたしに出来る事ならなんでも言ってくれ。さっきのお礼だ。」

「そうだ!忘れてました!えっと、実は最近、ぽくとりりがよく、同じような悪い夢を見るんです。そこには必ず大きな狐みたいなヤツが現れて、ぽくの夢では母ちゃんを、りりの夢では奥さんのシイちゃんを連れてっちゃうんです。これってどういう意味か分かりますか?」

「そうか・・・。分かった。そういうことなら、良いものを見せてあげよう。
あ、そうだ。その前に腹が減っただろう?何か食べていきなさい。さぁ、わたしの研究所の中へ。」
ソウコウは研究室のドアを開けると、みんなと中に入っていった。

ポンとりり達がソウコウの研究所の中に入ると、1番に目の前に飛び込んできたのは、部屋の中心にそびえ立つ太めの柱だった。その柱には、よく見ると『封印の書』と書かれた本が、柱全体をおおう様に無数にビッシリとめ込まれている。

「普段来客なんて無いもんだから、ろくな食べ物は無いんだがね。カエルとトカゲの干物、薬草ジュース、豆苗そうめん。何が良いかな?」
ソウコウは瓶詰めされた食材を吟味しながら言った。

「いえいえ、お気遣いなく。」
ポンは遠慮気味に言った。

「せっかくご馳走してくれるってんだから、ここはお言葉に甘えて。オイラはカエルとトカゲの干物が良いにゃ。」

「りりくんはカエルの干物だね。一応、冷却保存してるから、温めるね。」
ソウコウは台所の様な場所に移動すると、カエルの干物を鉄のフライパンに乗せると、レンガで作られた釜の中にそのまま入れた。

りりは遠慮する陰もなくソウコウに擦り寄り食料にありついた。

「もぐもぐ、もぐもぐ、うんめ~~~にゃ~!!こんなに旨い肉食べたこと無いにゃ~!!」

「えぇ?そんなに美味しいの?」
ポンはりりのリアクションを見ると、お腹が空いてきたのか、ぐ~~ぅと腹の鳴る音がした。

「ポンも食ってみるにゃ!ほれっ!」
りりはトカゲの干物をポンに与えた。

もぐもぐ、もぐもぐ・・・。

「ん~~!美~味しい~~!!!」

「だろ?だから言ったにゃ。」

「嬉しいなぁ。こんなに美味しそうに食べてくれたら、作った甲斐かいがあるよ。」

その光景を見ていたジョーとヨーコも優しく微笑ほほえんでいる。


「さて、そろそろ本題に入ろうか。先程言っていた、『見せたいもの』があるんだが。」
ソウコウはそういうと、柱に嵌め込まれたれたたくさんの封印の書の中から一冊だけ剥ぐように取り出した。

その封印の書には他のものとは1つだけ違う所があった。それは他の封印の書には、開かない様にするために、紐で結ばれているのに対して、その封印の書には、その紐がされていないという点だ。

ソウコウはこれを見せて何をしようとしているのだろうか?

ポンとりりはまだ食事をしながら聞いている。
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