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第三十話
タマモ帰還
しおりを挟む白虎の回想シーン終わり
【風穴・ソウコウの研究所】
「こうしてタマモは、不動明王様による、『生き地獄』と呼ばれているだけあって、まさに生きた心地がしないほどの厳しい地獄とも違わぬ修行を終え、そしてようやくこちらの世界に戻って来たのだ。」
白虎は神妙な面持ちで話した。
「悪狐っていうくらいだから悪者だと思ってたけど白虎さまのお話を聞く限り、タマモって実は良いヤツだったんだにゃ。」
リリは安堵の表情で言った。
「白い狸の一族。もしかしてぽくと関係あるのかな?」
ポンは白虎に聞いた。
「ああ、そうだ。ポン、お前がリリと出会ったのは、偶然では無い、必然だ。 ふたりが出会うことは決まっていたんだよ。」
「そうなんだぁ。ぽくもそう思ってた!やっぱりそうだったのかぁ!」
ポンは嬉しくてニヤニヤしている。
「なるほどにゃ、そういうことかにゃ!
ということは、オイラがヨーコさんに助けられたのも、シーがジョーさんと出会ったのも、全部決まったってことなんだにゃ!」
「ああ、そうだ。全てはこの日のためにすでに、あの日から運命の歯車はかみ合い、回り始めていたのだ。」
「白虎様、私とジョーさんにも関係のある話というのは、もしかして・・・。」
「気づいたか?ヨーコは赤子だったから覚えていないだろうが、タマモが出会った少女はお前だ。だがあれは不動明王様が忠実に作った幻像だがな。」
「ということは?私の父親って、タマモなんですか?」
「そうだ、そして母親は今もタマモの第2の胃の中で生きている。」
「白虎様!僕の母上はタマモに喰われました!ということは母上もタマモの第2の胃の中で生きているんでしょうか?!」
「ジョー、その通りだ。そして、もう一つ伝えなければならない事がある。」
「な、なんでしょうか?」
ジョーは真剣な表情で言った。
「ジョーの父クウコウは、あの日、俺に頼み込んできた・・・」
白虎の回想~
「白虎様、弟ソウコウの最近の研究によると、タマモは第2の胃の中に、喰べた人間の女を保存する習性がある事が分かってきました!僕の妻はタマモに喰われました。ですがもし、まだ妻が生きているならタマモを生捕りにして欲しいのです!どうかお願いします!」
クウコウは白虎の目の前で土下座をしている。
~回想終わり
「クウコウは、我が妻が生きていると信じ、タマモを生かして欲しいと頼んできた。
俺たちとしても人間の命を守るのが任務。その頼みを聞かない理由は無かった。
だが、ただで生かしておくのも面白くないと、生かすことを条件に、今後俺たちの役に立つ存在に育てておいた方が都合が良いだろうと、『生き地獄』で不動明王様に修行をつけてもらった。」
「そうだったんですか!?父上が、そんなことを?!知らなかった。」
「だから安心しろ。そのお陰で、ヨーコの母親同様、お前の母親もヤツの第2の胃の中で生きている。」
「良かった!良かった!
僕らは先に死んでしまったけど、母上が生きてくれていて、本当に良かった。」
「ジョーくん、ヨーコさん、会いに行っておいで。」
ソウコウは優しく言った、
「はい!!」
「もちろん!!」
2人は満面の笑顔でいった。
「ソウコウさんも嬉しいにゃ?」
リリはおもむろにソウコウに聞いた。
「な、何がだい?」
「とぼけてもダメだにゃ!ジョーさんのお母さんの事が好きだったんでしょ?
しかもジョーさんの本当のお父さんにゃんだしー!」
「もちろん!めちゃくちゃ嬉しいさ!!僕も今すぐにでも会いに行きたいよ!」
「だったらさ!ソウコウさんも一緒にぽくたちと一緒に行きましょうよ!」
「そうしたいんだが、すまない、それは出来ないんだ。」
「えー!何でだにゃー?!」
「どうしてどうしてー??」
「リリ、ポン!ソウコウさんはここから動けないんだ。花と精霊たちがいるから。」
「すまないね。わたしがいなくなると、冷気の温度管理が出来なくなって花が枯れてしまうんだよ。だから行きたいけど行けないんだ。」
「そういうことなら仕方がないにゃぁ。」
「だったらさ!ここにジョーさんの連れてくるよ!それなら良いでしょ??」
「君たちは本当に優しい子たちだね。ありがとう。それじゃ、お願いしても良いかな?」
「もちろんだにゃ!」
「任せて下さい!」
「そうと決まれば、とりあえずタマモを探しに行くとしようか!」
ジョーは希望に満ちた表情で言った。
「私のお父さんとお母さんか。どんな方だろう。楽しみだなぁ。」
ヨーコはワクワクしたにこやかな表情で言った。
「ところでタマモは今どこにいるんだっけ?」
「よーし、ちょっと待ってね。」
ソウコウは人差し指と中指を立てると、ピースサインのようにして、閉じた両瞼の上に指先をピトッと付けた。
「神護眼!万里眼!!」
すると両瞼から2本の指を離すと、人差し指と中指の先端に青白く光る球体がくっついているように見える。
指はピースサインのまま、今度は外に向かってダウジングをするようにぐるーっとゆっくり180度まわっている。
「おっ!意外と早く見つかりましたよ。白虎様、ここはどこでしょうか?」
「あぁ、間違いないタマモだ。かなり疲弊しているようだが、どうやらここは讃岐ノ国のようだな。居場所は捉えた。」
「ソウコウさん!白虎様!色々とありがとうございました!!また母を連れてお戻って来ますので!楽しみにして待っていて下さい!」
「あぁ、みんな気を付けて行くんだよ。」
「はーい!行ってきまーす!!」
「そうだ、リリくんだっけ。ちょっとおいで?」
「うん?なんだにゃ??」
リリは言われた通りソウコウのところに行った。
「僕の力を少し分けてあげるよ。君がみんなの道標になるんだ。目を閉じて?」
「オイラが道標に?どういうことだにゃ?」
リリはわけがわからないまま言われた通り目を閉じた。
すると、リリの両瞼の上には、ヒンヤリとした感覚があった。
「目を開けて良いよ。さぁ言っておいで。」
「一体何をされたんだかにゃ~。」
リリはまだわけがわからない状態でいた。
その時だった。
「うおおおーー!!」
リリは突然叫んだ。
「どうしたの??リリ?!
ポンは心配してリリに駆け寄った。
「見えるにや!オイラ全部見えるにゃ!!」
「やっぱり素質アリだったね。」
「ソウコウさん!ありがとうございます!でも、なんでオイラに?」
「リリは尻尾の先端が曲がっているでしょう?俗に言う『鍵尻尾』と言われていて、神様の使いは、その目印として尻尾の先端が曲がっているんだよ。
ただそれを自覚なく生まれている者も多いのも事実。」
「ってことはオイラ、神様の使いってことなのかにゃ?思いっきり自覚無かったにゃ!!」
「でも昔、猫の神様の真似してぽくと遊んでだよね!」
「あれはただのお遊びだにゃ!まさか自分が神様の使いだったにゃんて。こんなにも光栄な事はないにゃ!」
「リリ、良かったね!」
ポンはリリに笑顔で言った。
「今日からオイラが神様の使いとして、みんなの道標になるにゃ!」
「はははは!リリって面白いねぇ。とにかく飲み込みが早い。流石だね!」
ソウコウは今までにないほどの笑顔を見せた。
「ソウコウさん、ありがとうございます。これで安心してタマモに会いに行けます。では行って来ます!」
「そうだ、監視役の妹の紅虎にも宜しくな!兄が待っていると伝えてくれ。」
「はい!もちろんです!!」
こうして、一行は、ヨーコの父親のタマモと、その第2の胃の中にいる、ヨーコの母親、ジョーの母親、そして白虎の妹紅虎に会いに、ジョーが出した時空間移動術で、胃空間隧道の中へと入って行ったのだった。
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