【神託】で選ばれた<真実の愛>の相手がくそなんですけど

はなまる

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50誤解だ!

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 広間を出て急いで部屋に戻る。

 カイヤートはずっとそばを離れないようにくっついたままだ。

 「カイヤート様。もう大丈夫です。少し離れて下さい」

 私は恥ずかしくて彼を押しやった。


 「カイヤートさまぁ~。もぉぉ、いつお帰りになったんですか?」

 突然後ろから声を掛けられた。

 いきなりその声の主の手が遠慮なしにカイヤートの腕に触れた。

 二人同時に振り返る。

 金色の髪。大きくつぶらな瞳はピンク色をしている。そして多分彼女は狼族。


 「そうですわ。カイヤート様やっと帰って来られたんですねぇ」

 その隣に白い髪のこれは羊?もこもこの髪の毛にクルンと巻いた角さえも可愛らしい。

 「お前ら、いいからあっちに行け!」

 カイヤートが焦ったように女たちを遠ざける。

 「まあ、この方が聖女様ですの?カイヤート様すごいです。これで王位継承権ナンバー2確定ですね。そうとなったら早速今夜お祝いをしなくては」

 こちらの女性は茶色い髪の毛のシカ獣人?

 「だめです!次は私の番でしょ。カイヤート様ぁ、帰ってきたら私の所に来て下さる約束ですよねぇ~」

 はっ、こっちはごげちゃ色の熊獣人?丸い耳にぬいぐるみのような大きな目をしている。



 ああ、そうか。ピンときた。そういう事だったんだ。

 カイヤートは慌てたように言う。

 「リリン。いい加減にしないか。こんな所で声をかけるなんて不敬だろう」

 リリン?って誰?

 「もぉっ!何カッコつけてるの?いつもみたいにざっくばらんにすればいいのに?あっ、聖女様の前だから?もぉ、獣人じゃない女なんて相手にしないはずでしょ?ああ、でも今は隣国の聖女様をエスコート中でしたわね。ごめんなさい。じゃあ、また連絡してよね。みんな行くわよ」


 はっ?わざとわかってやってんでしょ?

 ピキピキッ!脳内の血管がちぎれそう。


 「「「は~い。かいやーとさまぁ。連絡待ってますぅ」」」

 ぞろぞろと艶っぽい一団が。

 「お前。いい加減にしろ。もう、用はない。さっさと行け!」

 「もう、冷たいんだから‥」

 リリンと呼ばれた女はカイヤートの腕を抓ると去って行った。


 私はさっと距離を置く。

 「あ、あれは違うんだ!」

 カイヤートがさっと腕を伸ばす。私はその手をパンッと払う。

 「あら、気になさらなくていいんですよ。皇族たるもの子孫を残すのも仕事のうちですから、ご安心ください。お邪魔のようですし明日の朝にはスヴェーレに出発します。カイヤート様は私に遠慮などなさらず存分にお楽しみ下さればよろしいですわ」

 最高の所作でそう言ってやる。

 「待ってくれセリ!お前は俺の唯一。俺の番なんだ!!」

 彼は必死で私に食い下がる。金色の瞳の中心。瞳孔が真っ赤に燃え盛るようになっている。

 確かに番なんだろう。唯一。メイン。でも、デザートもありって事だ。

 何?必死になって?それがどうした?

 すっと気持ちは冷えて行く。

 もう二度と騙されまい。そう決めたはずなのに簡単にコロッと騙されて。

 うける。

 誰が信じるもんか!

 「だから?」

 「だからって‥」

 
 *~*~*


 セリの気持ちが冷えて行くのが見えた。

 獣人はそう言う感覚には敏感らしい。

 背筋がぞくりと奮えた。

 どうしてわかってくれない?

 お前と一緒にいたいのに。

 いつもそばに置き他の奴の匂いをつけただけでも吐き気がする。

 いつも他の奴に警戒し番をなったものを守ろうとする。

 恐いほどセリを自分だけのものにしたい。

 無理にでも捕まえて鎖でつないででもそばに置きたいと思う。

 なのに人間のセリにはそんな気持ちは伝わらなくて。

 何よりあの魔力を持ってからは自分の中に別の人格がある感じがして、強く感情が高ぶると飛びそうになる理性を抑え込もうとするような感覚が働いてしまう。

 今もセリを抱きかかえて俺の屋敷に連れ込みたい衝動にかられた。

 けど、衝動的な動きが微妙に出来ない。

 もどかしさだけが空をかいて。

 彼女にあんな事を言われて誤解だと言うのに彼女は全く分かっていなくて。

 だから無理やりでも連れて行こうと思った。けど。



 いや、そうじゃない。

 番を悲しませることは出来ないって古よりの獣人の性なんだ。

 俺はセリを守る。セリの嫌がることはしない。俺は番を愛している。だからこそセリの望むまま事には逆らえない。

 でも、わかってほしい。



 「聞いてくれセリ。確かに今までの俺は適当に関係を持っていた。でも!本当に好きな女なんかいなかった。だから‥」

 「だから?好きでもない女と平気で出来るんだもの。それも見境なく。それはこれからも」

 いいのわかってる。セリがそんな顔で言う。

 俺は潔く今までの行いを認める。だって仕方がない。やって来たことはもう取り返しがつかないんだから。

 でも、これからは違う!

 「ああ、確かに今まではそうだった。でも、お前が現れた。こんな気持ち初めてで自分でも何で今までそんな事をしていたかわからないほどなんだ。ほんとだ。信じてくれ!お前は特別なんだ!」


 ぎゅうと胸の奥が締め付けられる。

 俺はセリをじっと見つめて信じて欲しいと懇願する。

 でも、彼女の瞳には全く熱がこもっていなくて‥


 「確かに今はそうかもね。でも、男はみんな同じよ。オデロ殿下もあなたのお父様もイエンス様もそうなんでしょう?」

 「ああ、確かに皇族の血を絶やさないために。でも、俺はさっき王位継承権を破棄された。これでもう俺にはそんな事をする理由はなくなった。だろう?だからこれからはセリだけ「男はみんなそう言うわ」ちがっ!」
 

 セリの言葉は迷いがなかった。

 スパッと俺なんかに未練はないって態度で。

 そんな態度に俺の気持ちは萎えてその場にふにゃりと頽れそうになる。

 結局セリに置き去りにされて彼女は先に部屋に入ってしまった。

 俺は悶々としたまま部屋の前まで来て侍女に命令した。

 「セリは疲れている。今日はゆっくりさせてやって欲しい。頼んだぞ」


 それから一度深呼吸をして部屋の外から彼女に声をかけた。聞いてくれているといいが‥そんな事を思いながら。

 「セリ、頼む。明日もう一度話し合おう。今日はこれで帰る」

 「気にしないで、私は平気」

 そんなばかな。


 とぼとぼ廊下を歩いているとクラオンが声をかけて来た。

 「殿下」

 「クラオン。俺はもう、殿下じゃないぞ。王位継承権は剥奪された」

 クラオンに事情を話す。

 「そんな事。殿下は殿下です。ですがセリ様はどうされるのです?」

 「聖女としてでなくても俺の婚約者ということにするつもりだ。明日にでも屋敷に連れて行く。後のことはまたそのうちにゆっくり‥」

 「セリ様はそれをご承知なんですね?」

 俺はずっこけそうになる。

 「そこが問題なんだ」

 俺は取りあえず城を出て王都にある自分の屋敷に帰ることにした。





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