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52ただでは置かない(アーネ・イエンス)
しおりを挟む私は気が付くとイエンス様がそばにいた。
「気づいたか?アーネ?」
「ええ、わたし‥」
「君はあの魔女の魔法で気を失った。ごめん。あんな事をさせるべきではなかった」
私はベッドからすぐに起き上がる。
「イエンス様が悪いのではありませんわ。すべてあの女セリーヌが悪いんです。シェルビ国でもオデロ殿下の婚約者だと言ってみんなにひどい仕打ちをしていましたから、今もそれは変わっていないのだと思います。先だってわざと私に攻撃魔法をかけたんですよぉ」
「それでアーネが倒れたのか?」
「はい‥でも私ったら聖女なのに‥」
「心配ない。父は君を信頼している。しかし、あんな女が王太子の婚約者だったとは‥」
「シェルビ国のお相手選びは魔法の力がすべてなんですぅ」
「では、あの女はかなりの魔法が使えると?」
「はい、ですから危険だと思います。もうすぐ月喰いの日が来るんですよ。ね?」
私はイエンス様に縋り彼の胸元辺りからすっと顔を上げる。もちろん頬は胸に摺り寄せる。
完璧なおねだり!眦からは、すぅっと一筋涙を流して見せる。
彼の瞳の中心。瞳孔がすっと細待ってごくりと喉を鳴らす音まで聞こえた。
「‥ああ、あ、明後日だ」
「わたし‥こわぃ‥」
さらにぎゅっと彼の腕を握りしめる。
彼は何だかもぞもぞと身体をずらす。
あと一押し!
「もし、セリーヌが悪い魔力を出せば大変な事になりますよぉ~」
彼の眉間に皺が寄る。
「ああ、そうだな。明日の朝一番に国外追放を言い渡そう」
「イエンス様。それだけでは足りません。あの女は完全に排除した方が安全です。わかりますよね?」
イエンス様にこてんと顔を傾けてお願いする。もちろん手は合わせてぎゅっと握って。
私の思い通りにしてよぉ。って。
「アーネの言う通りだ。すぐに手配しよう」
「ええ、これで私、安心です。イエンス様やっぱり素敵ですぅ~」
私は破顔してイエンスにしがみつきその頬に唇で触れる。
もちろん演技。
「はぁはぁ~アーネ。そんな事して‥私にも限界があるんだよ」
「もぉ、イエンス様~。全部上げるのは‥‥結婚してからですよ。その時は身も心もすべてイエンス様の物ですぅ~」
私はイエンス様から少し距離を置き腕を胸の前で交差してぎゅっと胸の膨らみを寄せる。
イエンス様の視線が胸の谷間に釘付けになる。
彼の息がはくはくとして急いで席を立った。
「くぅ‥アーネ。すまんちょっと席を外す」
イエンス様はそう言って部屋から出て行った。
「イエンス様、セリーヌの事お願いしますよぉ~」
「ああ、任せてくれ、アーネは心配せず休んで」
「は~い」
これで良し!!
後はイエンス様にお任せぇ~。
私は侍女に頼んで紅茶とお菓子をたくさん持って来てもらう。
聖女として教会にいるべきだけどイエンス様が特別にって彼の部屋の隣に私の部屋を準備してくれた。
もちろんまだ、私達はきれいな関係。聖女としてそれはきちんとしておくべきだから。
でも、私初めてじゃないから、それもあって色々理由をつけて彼との関係に待ったをかけているんだけど、いつまで我慢できるかな?彼。
*~*~*
私はアーネを見た瞬間心が躍った。
これが番という奴か?
訳の分からない衝動。いきなり目の前にいるアーネが好きでたまらなくなった。
やっと私にも春が来た。
ずっと皇太子としても責任だと言われて降誕祭の儀式に婚約者。子を成すのは義務だと言われ精通してからは定期的に女を当てがわれた。
気に入った女がいれば指名も出来たが、ずっと同じ女というわけには行かなかった。
自分は次期皇王。相手の女に勘違いを差せるわけには行かなかった。
ただ、欲を吐き出すだけの行為。
婚約者のミリエルとは表面上だけの取り繕った関係。
昨年降誕祭での儀式で私はやっと皇太子を言う立場を与えられた。
これでやっと自由になれると思った。
番にはずっと憧れていた。
自分の唯一。半身。胸が焦がれるような思い。
だが、翌年には百年の一度の月喰いの日があると言うことで国内はざわついていた。
暴動やいさかい。王都でも貴族の内輪もめや弟たちの揉め事もあった。
そんな時私はアーネと出会った。
私に遅い春が来たと思った。
おまけにアーネには魔力があり聖女としての浄化が出来るとわかった。素晴らしい!
そんなアーネの願いを聞かないわけがない。あんなにセリ、いや、セリーヌを恐れて可哀想で見ていられない。
私があの女を始末する。
アーネの甘いかぐわしい匂いに本能が疼いてこのままではアーネを襲ってしまうと急いで部屋を出た。
すぐに処理の女を呼びつけ事を済ませる。もちろん欲を吐き出すだけの行為。何の感情もない。
側近のムーンドールを呼びセリをお茶に呼ぶよう指示する。
毒薬は私が特別に手に入れたもので匂いもないし色もない優れもの。これをセリとか言う女のお茶に混ぜ込めば問題ない。
これで今日中には片が付くはず。
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