【神託】で選ばれた<真実の愛>の相手がくそなんですけど

はなまる

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73カイヤートが皇太子に?

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 私とカイヤートは護衛騎士に案内されて城に向かった。

 皇王と謁見するらしい。もちろん大司教も一緒に。

 「カイヤート、でも、毒の被害者が出てるかも、心配だわ。急いで謁見を終わらせて様子を聞かなきゃ」

 「ああ、その辺りはライノスとクラオンに任せておけばいい。ハチミツも準備してあるしな」

 「ねぇ、そう言えばアーネを見かけなかったわ。彼女も浄化するんじゃなかったの?」

 やっとアーネの事も思い出す。

 「アーネ?ああ、兄上が聖女だって言ってた。知らんぞ」

 「そう。おかしいわ。こんな大舞台で姿を現さないなんてあの人こういうイベント大好きだと思うけど」

 ほんと、自分を売り込む事には抜かりがないって言うか、騙すのがうまいんだから。



 城の客間に案内されて皇王を待つ。

 もちろんカイヤートは私の隣にべったり座る。

 その間にお茶やお菓子が出される。

 おいしそうな焼き菓子のオンパレードに、これ、包んでいただけますって言いたくなる。

 「セリ?何か食べるか?」

 物欲しそうな顔をしてたのかな?でも、一つくらいならと。

 「あの、クリームが乗ったお菓子を」

 「そうか、ほら。俺が食べさせてやる」

 彼は言われた菓子を皿に取り分けるとすぐにそれを一口差し出した。

 「そ、そんなのこんな所で無理だから」

 カイヤートは私に何かと食べさせたがる。獣人の番は給餌も愛情表現らしいとヨールさんから聞いた。

 「‥‥‥」しょぼ~ん。耳が垂れる。

 「じゃ、代わりに私が。はいっ」

 「セリが俺に?はっ、はい。あ~ん」

 あはっ、可愛すぎるモグモグ期?彼の意外な可愛さに胸がきゅんとなってしまう。



 「皇王がお越しです」

 騎士が声をかけた。

 大司教が立ちあがる。私達もついて立ちあがった。

 サクト皇王陛下にミヒル皇妃。イエンス殿下が続いた。

 あれ?アーネがいない。

 「カイヤート。セリ殿。いやぁあの浄化は素晴らしかった。月喰いの厄災が吹き飛んだ。ハハハ。実に素晴らしい!」

 上機嫌の皇王陛下がそう言ってソファーに座り続いてみんなが座った。



 早速ミヒル皇妃はセリをほめたたえた。

 イエンスはむすっと黙ったままだ。

 サクト皇王は終始上機嫌で話を始めた。

 「セリ殿あなたの浄化は凄い。今も報告があったが呪いの被害はほとんど出ていない。出ていても軽い症状。ほんとにセリ殿には驚かされたな」

 「いえ、被害者が出ていなくて本当に良かったです。これも昨日みんなが頑張ってくれたおかげです」

 「ああ、確かに。だがそれもあなたのおかげ‥それでだが、わが国にはもう一つ厄介な呪いがあって、一カ月先の満月にも魔呪光の呪いがあるんだ。ぜひ、その浄化もお願いできないか?」

 「お言葉ですが陛下、今回の月喰いの日にはザンクの花という猛毒が原因で何とか出来たのです。ですが魔呪光は‥」

 これこそアード神にしか浄化出来ない奴でしょ!私?無理無理。

 「そこを何とかお願いできないかと」更に畳みかけられる。

 とうとう「そんなの無理に決まってんだろう!」カイヤートが声を荒げる。

 

 ~補足説明~

 今さらだがこの世界の月は年に四回満月になる。一回満月になるまでに三カ月かかるのだ。

 だから今日の月はほんとなら光の関係で見えるのは丸くはないが。太陽を遮った月は本体が重なったので丸かった。

 普通ならおかしいと思うはず。でも、そんな天体知識のないこの世界ではそんな事に気づく人もいない訳だ。

 まあ、そんな知識が魔呪光をどうにか出来るって話にはならないんだけど‥



 イエンス様がにやりとした。

 「いや、カイヤート。セリ殿ならきっと出来る。それに父上聞いてください。この二人は番でどうやら証刻印が現れたらしいんです」

 皇王の眉が上がる。

 「それは本当か?カイヤート刻印を見せて見ろ」

 皇王がカイヤートの手をぐっとつかむ。

 「おお、これは‥セリ殿も手を」

 こうなると差し出さないわけには行かない。

 皇王が証刻印を重ねると月の形に。

 「「「すごい!」」」

 その場にいた全員が声を揃えた。



 「わかったでしょう。この二人なら魔呪光もきっと浄化できるはずです」

 イエンス様やり方が汚いですね。

 私達が失敗して皇王の期待を裏切ればいいと思ってるのね。ほんとに嫌な奴。はぁ、無駄に助けるんじゃなかったな。

 
 「ああ、そうかもしれん。何しろ初代の皇王に会ったとされる究極の愛の証だ」

 皇王は当然食いついた。


 「ですが、それとこれは別で‥それよりアーネ様はどちらに?イエンス様あんなにアーネ様を押してらしたじゃありませんか。アーネ様こそ大聖女。彼女にやって頂けばよろしいのでは?」

 私は話を反らしたくてアーネの事を話す。

 「アーネか。あれはどこかに消えた。まあ、あんな役立たずいなくなってくれて良かったが」

 イエンス様がそっけなく答える。

 ああ‥逃げ足も速かった事を忘れてた。

 

 「とにかく父上。私とセリは出来る限りの事はしますが期待はしないで下さい。今回出来たからと言って次もうまく行くとは限りません。それでいいなら今度の満月も浄化をやりましょう。でも、出来なかったとしてもその責任を問うことは止めて頂きたい。そして私は成人の儀式を終えたのち彼女と結婚しますので」

 カイヤートは仕方がないとそれを受け入れたらしいがきっちり私との結婚を確約させようとしている。

 いいんだか悪いんだか‥

 

 「ああ、カイヤート良く言った。それでこそわが息子。もしお前が魔呪光を浄化出来たら次期皇王はお前にしよう。セリ殿を妃に迎えればこの国は安泰というものだ」

 「父上!それでは話が違います。次期皇王は私と決まっているじゃありませんか!」

 そう反論したのはイエンス様。まあ、当然。



 「イエンス。お前が聖女だと言い張っていたアーネは浄化にも表れなかったではないか。もし、セリ殿がいなかったらどうなっていた?ミリエルとも疎遠だと聞いたぞ」

 「ですが‥ミリエルとはよりを戻しました」

 「まあ、それはいい。イエンスとミリエル。カイヤートとセリ殿。どちらが本物だ?二人は究極の愛で結ばれた相手。これほど次期皇王にふさわしいものがいるとは思えんが」

 「でも!」

 「イエンスお前を皇太子から外す。今後はカイヤートを皇太子とする」

 イエンス様が髪の毛がぶわっと逆立ちぎろりとカイヤートを睨みつける。



 カイヤートはちらりとイエンス様を一瞥したがそんな事はお構いなしに話をする。

 「父上。俺はそんなもの興味ないから。執務もこなせる自信もないし。だから皇太子は兄上にやってもらってくれないか?」

 私もカイヤートは本当にそんなタイプではないと思う。自由でどちらかと言えば騎士隊長くらいが関の山かな。



 「まったく、それでは国民が納得しない。いいから執務はイエンスから引き継げ。いいな!」

 「出来ないって言ってるだろ!くそ親父!」

 「いや、やるんだ。イエンス。いいかお前が責任をもってカイヤートに執務を引き継がせろ。期限はミリエルとの結婚式までだ」

 「では私はどうなるのです?皇太子の座を下りたとなれば‥」

 「まあ、それまでには考えておく。心配するな。皇族としてやっていけるようには取り計らってやる」

 「‥‥‥」

 イエンス様は怒って出て行った。

 「父上、知りませんよ。兄上をあんなに怒らせて、兄上にしか執務は出来ないんですから、俺は無理ですからね。はっきり言いましたよ。セリ早く帰ろう。もう疲れたろう。ほんとこんな話なら来なきゃよかったよ。なぁ」



 私達が客間を後にすると大司教が追いかけて来た。

 「カイヤート殿下お待ちください」

 カイヤートは待ちきれないとばかりに私の腰をぎゅうと抱き寄せると振り返った。

 「なんだ?急いでるんだが」

 「も、申し訳ありません。ですが、セリ様を是非大教会の聖女として来ていただきたく‥」

 あんなに偉そうだった大司教が揉み手をしながら私たちに微笑んだ。

 「「無理!」」

 二人同時にそう言った。

 カイヤートは嬉しそうに私を見つめる。

 「決まりだな。彼女が嫌がることは出来ない。まあ、父の話を聞いただろう?次の満月の浄化はやって見るから、それでいいだろう?」

 「ですが、セリ様は稀代稀な聖女様。大教会に属されないと言うのは神にも背く事かと」

 「神に背く?おい、ふざけるなよ。さっきの偉業が神に背かれたものの出来る事か?ったく!行こうセリ!!」

 怒り心頭のカイヤートは私を抱き上げて歩き出す。

 大司教はその後を追いかけて来る。

 「も、申し訳ありません。お待ちください。セリ様‥」

 私はカイヤートの肩越しに言った。

 「大司教。私、彼の屋敷で子供たちの世話が忙しいので。あっ、もちろんこれからも孤児院などには出向いて協力するつもりですよ。では」

 大司教はその場にうなだれたいた。



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