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90はっ?ヴァニタス王の様子がおかしいって?
しおりを挟むその頃、ドラゴン城にいるセリは。
私は豪華な部屋に案内にされた。
この岩だらけの城にこんな部屋があるとは想像もしていなかった。
まあ、ずっとピオルの治療であの子の部屋に入りびたりだったから部屋に案内されたのは初めてだった。
壁はごつごつした石だけど、ふかふかの絨毯に家具はどれも渋いアンティークだ。
石造りの暖炉に大きな天蓋付きのベッドまである。
お風呂にはバスタブもあって湯がいつでも出るようになっていた。
早速、竜人の侍女がドレスを持って来てくれた。名前はカイヒルさんと言う。
女性の竜人は前世で言えばインドの服みたいに布を身体に巻き付けていて彼女はその上にエプロンをつけている。すごく動きにくそう。
でも、持ってきてくれた服はどれも1人で脱いだり着たり出来る簡易的なワンピースだったので良かった。
話を聞けば妾には人間や獣人もいたことがあるらしい。
だからあんなに手慣れてるのか‥
これからヴァニタス王とランチを一緒に取る予定らしい。
食事も簡単に済ませていたから、心配しているカイヤートに知らせたやりたい。こんなにていねいに扱われているって。
私は久しぶりにお風呂の入ってほっと息抜きをした。
仕度にはカイヒルさんがやって来て髪を整えてくれた。そしてランチに出向こうとした時カレヴィさんが部屋にやって来た。
彼は人払いをして私に話しをした。
「セリ殿。くれぐれも気を付けて下さい。こんな事は言いたくはないが兄であるヴァニタス王は最近おかしいんです。きっとあなたは命を狙われている。食事は決して王の口にしたもの以外は決して口に入れないで下さい」
「カレヴィさん?どういう事です?」
まさか権力争いとか?
「あなたには透視魔法が使えると聞きました。もしできるなら食事中兄を透視魔法で見て頂けないか?兄はきっとリガキスに犯されているはずなんです。本人は否定していますがこのところの様子がどうもおかしくて‥でも、今まで確証がなかった。でも、あなたが透視魔法を使えばはっきりするはずではないかと‥」
「ヴァニタス王がおかしいとは?」
「ええ、今の兄はドラゴンを引き連れて侵略でもする気ではないのかと‥それほど兄は狂気に満ちていて。それに兄に従うドラゴンも異様な雰囲気なのです。それにあなたの命も狙う恐れがある。何しろあなたはリガキスを退治したんですから」
「ええ?私、狙われてるんです?それなのにあなたは私にヴァニタス王を調べろと?」
それって酷くないですか?まあ、透視魔法でも使わない限りリガキスが身体にいるかなんてわからないだろうけど。けどよ。
「だから私はあなたに帰るようにと言ったじゃないですか。それなのに‥」
「ああ、そう言えば‥でも、あの状況ですよ」
「ええ、だから申し訳ないと思っています。ですが、兄の力は絶大で疑われている事がわかったら私や他のドラゴンでも太刀打ちできないかとあなたが頼みの綱なのです」
「でも、どうすればいいんです?」
「セリ殿に兄の体内にリガキスがいたら退治して欲しいんです。そうすれば元の兄に戻るのではと。元の兄に戻れば‥兄はもっとも戦いを好まないドラゴンですので」
「ああ、それで私に?」
「はい、本当に申し訳ない。でも、これはあなたを救うためでもあるんです」
「まあ、仰ることはわかりますけど、うまくできるかどうかはわかりませんよ」
「ええ、もちろんです。絶対に無理はしないで下さい。もしだめならまた違うやり方を考えるしかないので」
ドラゴンの上下関係ははっきりしているらしく、王の地位にあるヴァニタス王に従うのが当たり前なのだが、それでもここ最近はやけに荒々しいドラゴンも現れてそれらのドラゴンもリガキスに操られているのではとカレヴィさんは思っているらしい。
それにしても透視魔法でヴァニタス王をよく見ろ?
食事にも気をつけろって‥命を狙われてるって?
もう!私を殺そうとしてるなんてはっきり言っておいて?!
まあ、私の透視魔法と浄化魔法が必要なんでしょう?だから私が残ってよかったのは良かったんだろうけど。
あのままだとカイヤート殺されるかもしれなかったんだし。
仕方がない。それに透視魔法を使えば毒もわかるかもしれないわよね。
だからってカレヴィさん。あなた男でしょう?
でも、ドラゴンの世界で王は絶対的な存在みたいだし、まあ、何となく事情は分かるって言うか‥
って私!どれだけお人好しなのよ!!
けど、けど。あっ、もぉぉぉぉぉ~!!!
こうなったらやるしかないわよね。
私はひとしきり大きなため息をついて覚悟を決める。
カレヴィさんにダイニングの手前まで案内されて、もちろんカレヴィさんは入らなかったが。
カレヴィさん曰く、ここ最近のヴァニタス王は食事の邪魔をされるのがすごく嫌みたいらしい。
もぉ!だからって私に任せるなんて!!
はぁぁ、仕方がない。
すでにヴァニタス王は座っていて私は意を決して向かい側の席に座った。
すぐに食事が運ばれてくる。
私は透視魔法で料理を見てみる。
うわっ!パンえぐい色だ。あれきっと毒が入ってる。パンはやめとこう。
スープはきれいな色だったので安心して飲んでみた。コンソメスープのような鳥の肉が入っているらしい味がした。
カレヴィさんに言われた事を思い出しヴァニタス王を透視するタイミングを計る。
「セリ殿。味はどうか?ドラゴンも人間たちを関わる故ある程度の作法や調理方法は知っているがやはり私は大雑把な食事が好みでな。どうもこうやって一口ごとに口に入れるのは性に合わないんだ」
「そうなんですね。では、スープをカップに入れて飲まれては?」
ヴァニタス王が驚いた顔で私を見た。
私は真正面にあるヴァニタス王の顔に少し笑みを浮かべて透視魔法を発動させる。
発動には念ずるだけでいいので便利だ。
主に頭の部分から透けて見える脳内に焦点を合わせる。感覚で言えばカメラを撮影するときのように。
脳内に何かがうごめいている。
うそ‥‥あれはリガキスでは?それもかなり大きい。あんな場所にあるなんてよくヴァニタス王は平気でいられるわね。
話で聞いた事を思い出す。リガキスが頭にまで入ると狂ったようになって暴れ回る。そして殺すしかなくなるんだと確かそう言ったはず。
なのにヴァニタス王はいたって平気に見える。
不思議な気持ちで彼を見つめる。
「ああ、カップでなら一気に飲めるな。いい考えだ」
次々に料理が運ばれてくる。
魚の香草焼きだろうか、肉は柔らかそうなヒレかな?どれも高級食材だと思うがソースがほとんどない。
どれも毒ははいってなさそう。
味付けは塩味がほとんどで野菜はソテーが中心。揚げ物は好みではないのだろうか。
ヴァニタス王が肉に手を付けた。ほとんど火が通っておらず中は血が血たたるような焼き加減だ。
思わずどうしようかと手が止まる。
「ヴァニタス王は、生肉がお好きなんですか?」
「どうしてだ?」
「いえ、それほとんど火が通ってなさそうなので」
「ああ、だが肉はこれくらいがうまいんだ。セリも食べてみろ!」
突然ヴァニタス王がナイフを置いて手掴みで肉に貪りつく。大きな口で肉を頬張る。
「‥‥‥」
「う~ん。旨い。血の滴りがたまらん」
ヴァニタス王の目は完全におかしい。まるで薬物に犯された人みたい。
とてもまともではない気がした。
はっと気づく。
まさか?リガキスに寄生されて操られているって事はない?
そんな、前世での映画とかじゃあるまいし。
もう一度ヴァニタス王の脳を透視する。脳の中枢部分でひときわ大きなリガキスがうじゃうじゃうごめいている。
うわっ、これって。
ヴァニタス王はワインを手に取った。
グラスを傾けると一気にワインを喉に流し込む。
やっぱりおかしい。王が客人と食事をするのにこんな不作法をするはずがない。
私は勇気を出してさらにワインをグラスに注ぐ。
いっぱい飲ませて酔わせたらいいのでは?
迂闊に浄化魔法を使えば怪しんでいることがばれてしまうかもしれないけど、酔っている状態ならばきっとうまく行く。
私は指先に少しの浄化魔法を展開してテーブルの上からヴァニタス王に向かって浄化魔法をかけて行く。
ちょうど頭のリガキスに集中させて。
今ここに月光美人があったら、ヴァニタス王に気づかれずに憑りついたリガキスをやっつける事も出来たかも知れないのに‥
えっ?今の何?
もしかしてイヒム様?
『イヒム様?イヒム様ってば!!』
私はイヒム様を呼ぶが何の返答もない。
「セリ殿。さあ、遠慮はいらないぞ、どんどん食べてくれ‥俺は気分がいい。もっと飲もう。さあ‥」
ヴァニタス王は少しやったらしく饒舌になっている。
「はい、どんどん飲んでどんどん食べましょう」
私はうっかりしていた。
魚の香草焼きを口に入れていた。
あれ?何だか胸がむかむかして来た。
ああ、しまった。ヴァニタス王は魚は食べていなかったのに。
もしかして私、毒を食べたとか?
どうしよう‥
私の意識はそのままなくなった。
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