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97私の中にリガキスが
しおりを挟む私はハッと目を覚ました。
いきなり目の前が真っ赤になる。
何?どうしたんだろう?
脳内に声がした。
『我はリガキス、お前は完全に私の支配下に入った。大人しく言う事を聞け!』
『何を言ってるの?そんなバカな、誰があなたなんかの言う事を聞くもんですか!』
『無駄だ!私の力は絶対的。私に逆らおうなどと考えるな』
その声がした途端、私の身体から力が抜けて行き私はふにゃりと床に座り込んで気を失った。
次に気づいた時には、私の脳内は完全にリガキスに制御されていた。
身体は勝手に動き始め部屋から出て行こうとする。
私はそれを何とか押し留めようとするが、全く体は言う事を聞いてくれない。
どうしてこんな事に?ヴァニタス王のリガキスは退治したはず。
『でも、ヴァニタス王のリガキスは完全に駆除出来たはず。私を操った所で何が出来るというの?』
私は一縷の希望に縋る。
『そんな事で私が退治出来たとでも?王に触れた時お前の身体に入ったまでだ。もう諦めた方がいいぞ』
そんなバカな。じゃあ、あの時私の中にリガキスが入ったって事?それも親玉みたいなやつが?
私の身体は勝手に城のバルコニーに進んだ。
そして。
「ドラゴン達、私の声を聞け!いいか、これからプロシスタン国を制圧する。あいつらは我らの誠意を裏切り仲間を痛めつけた。我らはこの世界で最も強い種族だというのにだ!そんな事さえ忘れて身勝手な振る舞いをする奴らに鉄槌を下そうではないか!!」
「「「「グガ~!!!」」」」
バルコニーの下には数十頭のドラゴンが集結してその演説に酔いしれたように雄叫びをあげた。
『えっ?これ喋ってるの私なのに?どうしてドラゴンがこんなになる訳?全く、意味不明なんだけど』
私は訳もわからないまま操られてドラゴンの士気を上げてしまう。
『ハハハ、私こそがリガキスの支配者なのだ。魔呪獣の持っていた呪いの力で私は覚醒を遂げたのだ。だからみんな私の言う事を聞く。もう人間の好き勝手はさせない!』
『何を言ってるの。そんなこと出来るわけが無いじゃない!』
でも、私はヴァニタス王が封印した水晶玉に入ったドラゴンの置いてある所に急いだ。
『セリ、この水晶玉の中のドラゴンを解き放て』
『そんなの無理よ!これはヴァニタス王が』
いきなり脳内を締め付けられるような痛みがして、私は勝手に魔力を練り始める。
『ちょ、ちょっと待って!いくら何でも無理‥』
私のわずかに残った意思は全く無視されて光の渦が水晶玉を包み込んで光の粒が水晶玉を包み込む。
その途端水晶玉はパリンと音を立てて見事に割れる。
私の浄化の力をあえて利用したのね。なんて嫌な奴!
小さく縮小されていたドラゴンがたちまち元の姿に変わって行く。
城の壁がメリメリ音を立てて割れて行く。
「お前ら、外に出ろ!城を壊す気か?」
これ私?恐ろしく男みたいな言葉使いだ。
数頭のドラゴンがすぐにその声に反応する。
空で黒や赤、銀色のドラゴンが窮屈だった水晶玉から解き放たれて翼をググッと広げている。
『ああぁぁぁ~最悪!お願い、あなた達乱暴はしないで』
私はそう叫びたいが、全く声は出ない。
代わりにリガキスが声を上げる。
「お前ら、プロシスタン国に攻め込むぞ!好きなだけ暴れていいからな』
『マジすっか?俺、体がうずうずしてたんすよ!』
『ウヒョ、散々窮屈なところにいたんだ。憂さ晴らしにちょうどいいじゃねぇか』
『俺、思いっきりぶっ壊しますよ。遠慮はしなくていいんですね?』
『ああ、思いっきり暴れていいぞ!』
ああ、これ私が言ってる。もう、どうすればいいのよ。何とかして止めなくちゃいけないのに。
私の身体はまたさっきのバルコニーに向かった。
「さあ、お前ら、時は満ちた。今からプロシスタン国をぶっ潰す!!」
「「「「ウオォォォォォ!!!!!」」」」
下からも上からも城中に怒号が響き渡る。
一斉にドラゴンが飛び立つ。
私はどうする事も出来ずにそれを見ていた。
すると‥
遥か彼方に別の飛行物体が見えた。
うん?まさかなね。こんなにタイミングよくカイヤートが来るはずもないし。
「セリ~!!セリ~何処だ?何処にいる?」
うそ!マジで?カイヤートが来てくれた。
『私はここよ~!』脳内でそう言ったつもりだった。
「あいつがどうしてここに?それにあのドラゴンは?どうして私の言う事を聞かない?まさか俺の支配下にいないドラゴンがいるのか?」
私は気づいた。
そうかプロシスタン国にいるドラゴンはここにいなかったからリガキスに侵されていないんだ。
何とかして私は危険だと知らせないと、もしかしたらカイヤートの連れて来たドラゴンまで危険になるかも。
その時、ドラゴン城にいたドラゴンがプロシスタン国から来たビーサン達に攻撃を仕掛けた。
いきなり炎を吹きあげたレッドドラゴンの攻撃にカイヤートを乗せたビーサンが身体を捻って炎を交わす。
私は祈るような気持ちで彼らを見守るが。
「何をしている。お前ら全員戦闘体制だ!一気に攻撃を仕掛けろ!!」
私の口から大声で指令が飛ばされる。
それを聞いたカイヤート達が驚きビーサンの体勢が崩れる。
『危ない!カイヤート~ああ、もう見てられない。どうすればいいの?』
体勢を崩したプロシスタン国側のドラゴン達は、いきなり向きを変えて逃げ始めた。
その後ろを追いかけるようにリガキスに操られたドラゴンが追う。
容赦なく仲間のドラゴンに炎を吐き出すもの。突風を巻き起こすもの。雷撃を撃ちつけるものまで。
『逃げるしかないよね。怪我してないといいけど。はぁぁ、私どうしたら良いんだろう?』
そんなことをしている間に私の所に銀髪色に人型の竜人が現れた。
竜人は私を背中に背負うと一気に窓から飛び立つ。逆らおうとしたが身体は全く言うことを聞いてくれない。
翼が広がり竜人からドラゴンへと変わり私は銀色のドラゴンの背に乗っていた。
『何処に行くつもり?』
『決まっている。指揮官が必要だろう?プロシスタン国が終われば今度はシェルビ国に攻め入る。さあ、急げ!』
『そんな、そんな事させない!』
『はっ?どうやって?お前は完全に制御されている。もう、どうする事も出来はしない。諦めろ!』
うざったそうな言葉が脳内を駆け巡った。
私はどうしたらいいか必死に考える。
私さえいなくなれば良いのでは?
そうか!良いことを思い付いた。
私はそう思い付いたことを悟られる前に行動を起こした。
いきなりドラゴン身体を浮かせる。お願い私の身体、ほんの少し私の言うことを聞いて。そう願って私は思いっきり身体を横に傾けた。
私はうまくドラゴンから落ちたらしい。身体は地面に向かって飛び降りて行った。
『くっ!何をする?ばか?お前死ぬんだぞ。おい、やめろ!そんな事をしたら‥‥』
そのまま私は地面目掛けて真っ逆さまに落ちて行った。
これでもう大丈夫。カイヤートごめん。これしか思いつけなくて。
そんな事を思いながら。
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