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99ヴァニタス王の力
しおりを挟む俺はセリを抱き上げるとビーサンの背中に乗せた。
ライノスやキアード。マリーズたちも何も言えずドラゴンに乗り俺の後に続いた。
ドラゴンもその死を悼むように静かに翼を広げた。
「帰ろうプロシスタンに。ヨールに叱られるな。チャーレに何て言えばいい?ピョルンの奴は‥トロンドからバックドロップもんだな。俺どうすればいいんだ?いっそ、殺してくれ‥‥」
頭の中は真っ白で何も考えれない。
しばらくそのままビーサンの背でぼぉっとしていた。ただ、セリをしっかり抱いてその亡骸だけを抱きしめていた。
「ビーサンこっちだ」
そんな声がしてビーサンが翼をひるがえし着陸態勢に入る。
「ビーサン?ここはどこだ?」
「ピュルゥゥ(ドラゴン城)」
「おい、俺はプロシスタンに帰ると言ったはずだ!」
「ピュピュリュリュゥゥゥ~ (王が話しがあると言ってます)」
俺達はドラゴンの城に再び降り立った。
カレヴィがすぐに俺に話しかけた。
「カイヤート殿下、ヴァニタス王が大切な話があるそうなのでセリ殿を連れてこちらに」
「どうして?」
「いいから急ぎましょう」
俺は有無を言わされずセリを連れて王の執務室に連れて行かれた。
*~*~*
俺は執務室のソファーにセリをそっと横たえるとヴァニタス王を前にしていきり立っていた。
「お前のせいで、お前のせいでセリは死んだんだ!それなのに一体何の用があるって言うんだ?」
カレヴィが「お気持ちはわかります。ですが兄の話を聞いて頂けませんか?」
どうやらカレヴィが事のいきさつをヴァニタス王に話したらしい。
「すまないカイヤート殿下。私がリガキスに操られたばかりにセリ殿には本当に申し訳ない事をしたと思っている。だが‥」
ヴァニタス王とカレヴィが頭を下げる。
「今さらどうしようもないだろ頭なんか下げられたって!クッソ!!」
「カイヤート殿下。落ち着いて下さい。兄にはセリ殿を生き返れらせる力があるんですと言ったら?」
俺は耳を疑う。
ああ、セリを失った悲しみで遂に脳がおかしくなった。
「死んだものを生き返れらせれる?ばかな事を‥」
「カイヤート殿下。私達ドラゴンの祖先はもともと神だった。だが、暴れて仕方のないドラゴン神を持て余した他の神々が私の祖先を神から地上で暮らすドラゴンに変えたんだ。その時俺達の祖先は神と取引をした。王位についたドラゴンは人生で一度限り願いをかなえてもらう事が出来ると言う取引だ。私がセリ殿をもう一度生き返らせること願えば神は願いを聞き届けてくれる」
俺は耳を疑った。
これは幻聴か?もしくは錯乱?もしくは‥
「そんなばかな‥」
「カイヤート殿下、セリ殿は生き返りますと申し上げているんです」
再度カレヴィが言う。
「まさか」
「まさかではなく本当だ。だが、セリ殿を生き返らせる代わりにやってほしい事がある」
「そりゃ、セリが生き返るならどんな事でもする。が!セリは死んだ‥」
「でも、私には生き返らせることが出来る。人間ならば一日以内。これがドラゴンならばもう少し猶予があるんだが、人間はこれ以上を過ぎれば私にも無理だろう」
俺は、万が一にでもセリが生き返るならと決心する。
「本当に出来るんだな?セリを‥セリを生き返らせてくれ、頼む」
俺は縋る気持ちでヴァニタス王に頭を下げた。
「わかった。約束だ。私がセリ殿を生き返らせたらやってほしい事がある。リガキスに操られたドラゴンは私の力の及ばないようにされているようなんだ。そこでカイヤート殿下とセリ殿が行った浄化魔法でドラゴン達の呪いを解いて欲しいんだ。あいつらはプロシスタン国を呪っていた呪いにかかっていると聞いた。それが解ければ元のドラゴンに戻るはず。そうなれば私の言う事を聞いて大人しくここに戻ってくるはずだ。頼めるか?」
「そりゃもちろん、セリさえ生き返ればどんな事だってする」
俺はまだ半信半疑のままで返事を返した。
ヴァニタス王は天に向かって手を広げる。
何やら呪文を唱えて両手を大きく広げたりそうかと思えば手を合わせたりして何度も頭を下げて祈りを捧げている。
そして大きく両手を広げヴァニタス王はおびただしいほどの銀色の光を口から吐き出すとその光が真っ直ぐに天に昇って行った。
しばらくすると開け放たれた大きな窓に天から後光が差し込んで来た。
その光は真っ直ぐにセリの胸に差し込んだ。
まばゆい金色の光が塊となってその玉がふわふわ浮かんでいたと思ったらセリの胸の中にすぅっと吸い込まれた。
その光の玉は何とも言えない美しさで俺はあまりの美しさに息を飲んでそれを見守っていた。
その光がセリの中に入って行った。
「セリ?」
「うぅぅぅん‥‥」
ゆっくり身じろぎするセリ。
俺の心臓がバクバク激しく脈打ち始めた。
セリが動いた。今確かにセリが?生き返ったのか?まさか?本当に?セリが?まじで?
「セリ?」
もう一度信じられない気持ちで名前を呼ぶ。
「‥ん?ま、ぶしぃ‥あん?か、いや、と?」
「セリ?お前生き返ったのか?いや、マジ、生きてるよな?俺がわかるか?」
セリはゆっくり目を開けて俺を見た。
その翠緑色の瞳が。美しい澄んだようなあの瞳に俺が移っていて‥
「‥えっ?あれ?私、ドラゴンから飛び降りて?わ、わたし生きてたの?どうしよう。リガキスが‥ああ、私操られてて、カイヤート。危険なの。逃げて‥ああ、だめ。私‥ああ、どうしよう」
セリは完全にパニックに陥っていて。
俺はセリを抱きしめた。
「セリは死んだんだ。一度確かにドラゴンから飛び降りたんだろう?無茶な事をしておまえは死んでしまった。だからリガキスは完全にいなくなった。だから俺と話が出来るんだ。わかるか?」
「そんな、死んだのに生き返るなんてあり得ないわよ!でも、あなたに会えてうれしい」
セリに説明するがセリはまだ信じられないらしくて。まあ、無理もない。俺だって信じれないんだから。
「ああ、俺だって舞い上がってる。セリとまたこうして抱き合えるなんて夢みたいだ」
突然セリが俺の頬を抓った。
「いてっ!夢じゃないな」
俺はお返しにセリの唇にキスをした。
「もぉ!カイヤートったら‥フフフ」
甘く蕩けそうなセリの唇。セリの恥ずかし気な顔。
「セリ、死ぬほど愛してる」
「もう、カイヤートったら、死んじゃだめよ」
こうしてふたりで笑いあった。
ああ、幸せだ。
「ヴァニタス王。感謝する。セリを取りもどしてくれた事。命ある限り俺はあなたにどんな事でも協力すると誓う」
俺は恭しくヴァニタス王に頭を下げた。
セリは生き返った。うれしくてうれしくてたまらない。
俺は未来永劫ドラゴンの城に足を向けて寝られないと思っている。
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