ピリ辛×ちょい甘+コク=猛愛?一夜を共にしたからっておかしくありません?

はなまる

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10養護院で事故が

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 それから食堂の仕込みを手伝って仕度をして表に出た。

 えっ?リントがいた。

 私を見ると子犬みたいに駆け寄って来た。

 こうやって見ると彼はかなり背が高く体格もいい。それに何と言ってもその顔はすこぶる端正で切れ長の瞳は精悍でかっこいい。

 まさに私好みの‥いやいや、そうではなくて。

 脳内で急いでそんな思いを削除する。



 「あなたまだいたの?いい加減どこかに行って。子供じゃないんだし自分の家にくらい帰れるでしょう?」

 「俺は帰らない。それに俺は諦めないからな。ミルフィって言ったよな。なぁ、ミルフィ君は俺の番なんだ。君さえ俺を受け入れてくれればすべてが丸く収まる。俺は君と結婚して‥

 「いい加減にして!私番なんて信じてないの。それに結婚するつもりもないし!いいから仕事行かなきゃならないんだから、私が帰って来た時もここにいたら承知しないから」

 「そんな‥番に拒否されたら俺はどうする事も出来ないんだ。だって番の嫌がることは出来ないんだから‥」

 「だったらもうわかったでしょう?さっさと自分の家に帰って!じゃね」



 急いで彼をおいて歩き始める。が‥気になって後ろを振り返ってしまう。

 私に拒絶されてうなだれる彼。

 銀髪がはらりと落ちてその姿は何とも様になっていて‥胸が痛い。

 違う!仕事に行かなきゃ。

 心を鬼にしてキッと前を向いて政務局を目指した。



 「おはようございます」

 「やあ、おはようミフルィ。今日も一段ときれいだな」

 レドス君が声をかけて来る。

 「まあ、レドスさんこそそのシャツ、イケてますよ」

 「そ、そうか」

 まじで照れている。あっ、これって言わない方がいいって事だ。

 「もう、お互い社交辞令ですから」

 すっと辺りを見渡せば苦虫を噛んだような顔のチャムナさんがいた。

 「チャムナさんおはようございます」

 私はにこやかに挨拶をした。



 「みんなおはよう」マクフォール管理官だ。

 「「「おはようございます」」」

 「さあ、今日も忙しいぞ。そうだ。チャムナさん、書類はどうだ?」

 「はい、全部片付いています」

 「そうか。じゃあ今日はミルフィさんを連れて養護院の視察に行って来てくれないか?今年の申請に出ている大型給湯設備がどんな状況か確認してきてくれ」

 「はい、わかりました。ミルフィさん行くわよ」

 「はい。あのチャムナさんの事、先輩って呼んでいいですか?」

 「ええ、いいわよミルフィさん」

 チャムナさんは照れ臭そうに笑ってくれた。良かった。

 「ありがとうございます先輩!」



 私達は馬車で養護院に向かった。

 養護院は王都の繁華街を抜けて川を渡ると貧民街になる手前にある。

 私も何度か学園の慈善活動で来た事があった。

 子供たちに文房具や手作りのクッキーなどを持って来るボランティア活動の一環だ。

 今日はあいにく雨で外で遊んでいる子もいなかった。

 私達は院長に会うと問題の大型給湯設備の所に案内された。

 途中で子供たちが生活している部屋が見えた。

 狭い部屋で壊れたおもちゃで遊んでいる子やぬいぐるみを奪い合っている子供。

 中には大きな子が小さな子の遊んでいたおもちゃを横取りしたりする姿も見えた。

 先生らしき人は見えたが、どうやら小さな子に手がかかっているらしい。

 まあ、母親であっても兄弟がいればそんな事もあるんだし‥



 脳内で前世で暮らしていた養護施設の思い出がよみがえる。

 着古した服。鼻を垂らしたままで袖口がテカテカになった服。丈の短くなったズボン。

 決まった時間の食事。聞こえはいいけど自由がなく何となく息が詰まりそうな食事。上の子がゼリーなんかが出ると横取りして先生に言いつけるとその子に暴力を振られたりして。

 時々親が訪れて外泊する子やおもちゃを買ってもらったと自慢する子もいた。

 私達はそんな親もいなくて、それに姉弟でも一緒の部屋にしてもらえずいつも湊の事が心配だった。

 やっと高校を卒業して湊を引き取ってそれから必死で湊を大学に行かせて‥

 もう、嫌だ。こんな事思い出したからって‥



 「こちらになります。見て下さい。もう限界を超えてていつも調子が悪くて暑い間はまだ何とかなりましたが寒くなってくるともう限界で」

 動力は魔石で動くとは言えそれを燃やす窯が壊れてはどうしようも出来ない。

 「ええ、そうですね。これは早急に交換が必要と判断するしかないですね」

 「はい、私もそう思います先輩。一刻も早く交換が必要ですね」

 「ありがとうございます。では、なるべく早めにお願いします。もう、子供たちがどんなに喜ぶかわかりません」

 院長は嬉しそうに顔をほころばせた。



 その時だった。

 いきなり給湯設備の地面から地響きがした。

 「グゥッォォォ~ガガガガガガ、バッキ~ン!!!」

 窯が爆発したらしい。大きな破片が辺りに飛び壁に直撃したり窓に飛んでガラスが割れた。

 院長はまともに破片が額に当たりけがを負ったらしい、チャムナさんは腕を切った。私も転んで足首をひねった。

 被害は子供たちがいた部屋にまで及んだ。

 悲鳴や鳴き声が辺りを埋め尽くす。

 「直ぐに手当てを」

 こんな時まで院長の声がしてあちこちから先生や用務員であろう人たちが駆け付ける。

 

 「院長大丈夫ですか?」

 「私はいいから早く子供たちを」

 私はチャムナさんを見る。

 「チャムナさん怪我は具合は?」

 「これくらい、すぐに騎士団と診療施設に応援を」

 チャムナさんは馬に乗れる男性に指示を出す。

 私はその間に子供たちを連れ出す。

 「皆さん、ここは危険です。離れた建物に避難した方がいい。さあ、子供たちを一番に」

 気づけば院長は額からかなり血を流して意識を失っている。

 「院長しっかりして下さい」

 私は院長の額に手を当てる。何とか血を止めなくては‥

 「わかりました。皆さんは子供たちの非難をお願いします」

 職員の人たちが小さな子供を抱いて安全な建物に子供たちを非難させるが何しろ子供たちが怯えている。

 何とか出来たらいいのに‥

 胸の奥でそんな思いが渦巻いて行く。

 すると私の手のひらが熱くなって光が沸き上がった。思わずその光を院長の額にかざす。

 私は前から治癒魔法が使えた。もしかしたら怪我が治せるんじゃ?

 院長が身じろいだので声をかける。

 「院長、私少しですが治癒魔法使えますので‥」

 「では、子供に‥」

 「でも、院長の怪我の方が」

 「いいから子供たちを」

 「でも、院長が一番ひどいけがなんです。出来るかどうかわかりませんがやらせて下さい」

 私もまだそんなに力が使えるとは思っていなかったが今はやるしかない。

 淡い光が額の傷を包み込んでいく。

 じわじわぱっくり開いた傷口が閉じて行きやがて額は傷の痕がなくなって行った。

 「院長。出来ました。気分はいかがです?」

 院長は驚いて慌てて額に障る。

 「傷が‥まあ、すごいです。ミルフィさんとおっしゃいました?もし良ければ子供たちもお願いできますか?」

 院長は立ちあがろうとするがふら付いて立てなかった。無理もないかなりの出血だった。

 「院長無理は行けません。子供たちは私が責任を持ってみますからどうか今しばらく休んでいてください」

 「申し訳ありません」

 院長は救護の人に運ばれて行った。



 私も急いで怪我をしている人たちの所に急いだ。

 子供たちのけがはみんな軽くあっという間に治せた。

 そしてチャムナさんの怪我も治した。

 「ミルフィさんが治癒魔法を使えるなんて、それもかなりの上級魔法ですよね?こんな力初めて見ました。ほんとに凄いですね」

 驚いたような声を上げたのはチャムナさんだったが、一番驚いたのは私だった。

 私ってこんな力なかったはずなのに?

 どうなってるのこれ?

 俄かには信じれないと「いえ、実は私もこんな力があるとは知りませんでした」そう言っていた。





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