35 / 40
35あれから3年3
しおりを挟むそんなある日、アリトが高熱を出した。
私は街の診療所に連れて行くが熱は下がらなかった。
数日続く高熱にアリトの体力は奪われて行った。
私はアリトを街の診療所ではなく教会の療養所に診てもらう事にする。
ドルトが仕事が忙しいのかマベルがけがをしてから一度も食堂に顔を出さない。
連絡もないなんて信じた私がばかよね。
最近は家族のように親しくしていただけに、こんな大変な時にいてくれないドルトに失望する。
あの人は他人。それに一度裏切った人なのよ。ほんと!あんな奴を信じる方がどうかしてたのよ。
でも‥ドルトがいなかったら、私はもっともっと大変だった。今まで良くしてくれたんだもの腹を立てるのは間違ってるわよ。
心の中ではわかっているつもりだった。
でも、実際アリトが熱を出して大変で。食堂だって休まなきゃならない。心配でたまらず誰かそばにいて欲しかった。
そうも行ってはいられず私はアリトを連れて教会の療養所に行った。
療養所で医師にっ診察をしてもらい子供によくある知恵熱だろうと診断された。
「これくらいの子供にはよくある事ですから、しばらく安静にして栄養のあるものを食べれば大丈夫ですよ」
私はほっとして熱さましの薬草を貰って帰るところでドルトとばったり会った。
ドルトは近衛兵の制服を着ている。
やっぱり仕事が忙しかったんだ。私は声をかけるのを迷ったが仕事なんだからと声は賭けずに立ち去ろうとした。
「おや、ミルフィじゃないか?そうだよな?‥しばらくだな。もう3年近くないか?元気にしてるのか?」
驚いた顔を自分を見るドルトにこっちも驚く。
「えっ?ドルトったら、何とぼけてるのよ。あなた、しょっちゅううちの食堂に来てるじゃない!」
他人の素振りに無性に腹が立つ。
「はっ?食堂って?俺はあまり食堂なんか行かないし、お前を見かけた事なんかないぞ」
「何言ってるの?あなた頭がおかしくなったんじゃ‥?」
「それを言うならミルフィのほうだろう。会うのは3年前オロク殿下の言いつけで君を見た時以来じゃないか?そう言えば、教会から追い出されたって聞いてはいたけど元気だったか?」
「えっ?」
脳内が混乱してその後の言葉が出てこない。
どういう事?あなた、毎日のように家に来て手伝いをしたり食事したりしてたじゃない!?
そう言いたいが彼の素振りはどう見てもいつものドルトではない。
距離は取っているし、何よりアリトを見て何も言わない。この人私の知っているいつものドルトじゃない。
何だか偉そうで態度も大きい。
何よりドルトの髪は後ろで束ねてある。私の知っているドルトの髪は短かった。
私が黙っているので彼の方が近付いて来た。
「ミルフィ、その子は?」
「この子を知らないの?」
「知るわけないだろう。そう言えば教会で子供を産んだんだよな。あの竜人の子か?」
「ええ、どこで聞いたの?」
「オロク殿下を振った話は有名だぞ。竜人が君を婚約者だと言ったって言うのも。まあ、その後君が教会に入ったって聞いたから‥それより元気だったのか?」
ドルトは私を珍しいものを見るように見て来る。
うわっ、気持わるっ。
こいつうちの食堂に出入りしていたドルトもどきとは絶対違う。でも、万が一を考えてもう一つ質問してみる。
「そんなのどうでもいいじゃない。それよりあなた私がどこに住んでるか知ってる?」
「いいや」
ドルトは真面目な顔で答えた。嘘をついているようにもない。
もう、どういう事よ。でも、これ以上ここにいない方がいい。
「そう、ごめんなさい。忙しいんでしょう?じゃ、私、急ぐから失礼するわ」
私はドルトに別れを告げる。
「ったく、何だよ!」
その時だった。
「ドルト何をしている?」
「オロク殿下。申し訳ありません。もうお帰りですか?」
「ああ。用は済んだ。それよりお前はミルフィか?」
ドルトの横に並んだのはあのオロク殿下だった。
そうだった。ドルトはオロク殿下の側近だった。じゃあ、食堂に来るドルトは誰なのよ。
もう、訳が分かんない。でも、オロク殿下を無視するわけには行かず。
「はい、お久しぶりですオロク殿下」
「お前随分と落ちぶれたもんだな。俺の婚約者にしてやろうと言ったのに‥ドルト行くぞ!」
オロク殿下は私を憐れむようにそれだけ言うと去って行った。
3年前、教会に入った私にしつこく迫っていたのはリントだけではなかった。オロク殿下もしつこく婚約者になれと何度も教会に訪れた。
でも、私は修道女となっていたので無理やり王宮に連れていかれる事はなかった。
そして妊娠が分かり治癒魔法の力も失ったと分かるとオロク殿下との婚約話は煙のように消えてなくなったのだった。
所詮、私はただの道具だったって事だけの話。
ったく、どいつもこいつもろくな奴じゃないんだから!
それにしても私の知っているドルトって何者なのよ!!
私もふらふらと食堂に帰ったがショックだった。
ドルトの正体は誰なのかまったく見当もつかなかった。
11
あなたにおすすめの小説
彼は亡国の令嬢を愛せない
黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。
ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。
※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。
※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。
番探しにやって来た王子様に見初められました。逃げたらだめですか?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はスミレ・デラウェア。伯爵令嬢だけど秘密がある。長閑なぶどう畑が広がる我がデラウェア領地で自警団に入っているのだ。騎士団に入れないのでコッソリと盗賊から領地を守ってます。
そんな領地に王都から番探しに王子がやって来るらしい。人が集まって来ると盗賊も来るから勘弁して欲しい。
お転婆令嬢が番から逃げ回るお話しです。
愛の花シリーズ第3弾です。
【完結】番が見ているのでさようなら
堀 和三盆
恋愛
その視線に気が付いたのはいつ頃のことだっただろう。
焦がれるような。縋るような。睨みつけるような。
どこかから注がれる――番からのその視線。
俺は猫の獣人だ。
そして、その見た目の良さから獣人だけでなく人間からだってしょっちゅう告白をされる。いわゆるモテモテってやつだ。
だから女に困ったことはないし、生涯をたった一人に縛られるなんてバカみてえ。そんな風に思っていた。
なのに。
ある日、彼女の一人とのデート中にどこからかその視線を向けられた。正直、信じられなかった。急に体中が熱くなり、自分が興奮しているのが分かった。
しかし、感じるのは常に視線のみ。
コチラを見るだけで一向に姿を見せない番を無視し、俺は彼女達との逢瀬を楽しんだ――というよりは見せつけた。
……そうすることで番からの視線に変化が起きるから。
[完結]間違えた国王〜のお陰で幸せライフ送れます。
キャロル
恋愛
国の駒として隣国の王と婚姻する事にになったマリアンヌ王女、王族に生まれたからにはいつかはこんな日が来ると覚悟はしていたが、その相手は獣人……番至上主義の…あの獣人……待てよ、これは逆にラッキーかもしれない。
離宮でスローライフ送れるのでは?うまく行けば…離縁、
窮屈な身分から解放され自由な生活目指して突き進む、美貌と能力だけチートなトンデモ王女の物語
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
番は君なんだと言われ王宮で溺愛されています
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私ミーシャ・ラクリマ男爵令嬢は、家の借金の為コッソリと王宮でメイドとして働いています。基本は王宮内のお掃除ですが、人手が必要な時には色々な所へ行きお手伝いします。そんな中私を番だと言う人が現れた。えっ、あなたって!?
貧乏令嬢が番と幸せになるまでのすれ違いを書いていきます。
愛の花第2弾です。前の話を読んでいなくても、単体のお話として読んで頂けます。
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る
水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。
婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。
だが――
「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」
そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。
しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。
『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』
さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。
かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。
そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。
そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。
そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。
アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。
ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる