妾に恋をした

はなまる

文字の大きさ
16 / 44

16支度は整いました

しおりを挟む

 
 夕方になってミーシャはやっと畑から引き揚げた。

 汗まみれになった身体を風呂できれいにする。

 時間になったのだろうカティが離れにやって来た。

 カティは入って来るなり私を叱った。

 「ミーシャ様。あれから畑にいらっしゃるなんて…もう、こんなに。そこに横になって下さい」

 「なぁに?」

 「疲れが出てます。少しマッサージさせて頂きます」

 私はベッドに横にさせてカティが腕や足をマッサージしてくれた。

 あまりの気持ち良さにうっとりとなる。

 それから顔のマッサージを受け肌に良いというパックをされきれいに化粧を施された。

 最初に着て来た薄紫色のドレスに着替え髪をハーフアップに結ってもらった。

 アクセサリーは控えめな小粒のピンクサファイアのイヤリング。

 これは成人のお祝いにと両親がくれたものだった。

 私の唯一のぜいたく品だ。

 鏡の前で驚いた。

 「カティやりすぎじゃ…」

 「何をおっしゃってるんです。私は何もしておりません。ミーシャ様はお顔立ちがとてもお綺麗ですから」

 「そんな事言われたこともないわ…」

 「もっと自信を持って下さい。奥様よりミーシャ様の方がずっと素敵です。ネイト様もミーシャ様のことが…あっ、余計なことを言ったら叱られますので」

 「待ってカティ。どういう事?」

 「でも…」

 「お願い」

 「若奥様と喧嘩されたいたんです。若奥様と何とかうまく行くようにとネイト様はお考えになったみたいですが、若奥様は拒絶されたみたいで泣きながらネイト様のお部屋から出て行かれて…すみません。この話は内緒にして下さい」

 「ええ、もちろんよ。それは私のせい?」

 「いえ、違います。もともとおふたりは不仲でしたから」

 「そう、だといいけど…」

 「ミーシャ様が気になさる必要はありません。だってそういう約束でここに来られたんですから…さあ、もうそろそろ時間です。料理長も今夜は張り切っていましたので嫌なことは考えず夕食を楽しんでください」

 「ええ、そうね。カティの言う通りだわ」

 私はカティに微笑んだ。


 (いい事ミーシャ。これはただの夕食なの。

 若奥様がお出かけになったのも前からの予定だったんだし。

 それに私は妾として契約してここにきているんだもの。

 いわゆるあれよ。

 今夜こそ息子に子作りに励まそうと仕組まれたに違いない夕食のお誘いってやつ。

 であるとしてもこれは仕事なのだから…

 それじゃもっと色っぽいドレスが…ううん、そもそもそんなドレスを持っていない)

 私はカティの後ろを歩きながら苦笑した。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

【完結】初夜の晩からすれ違う夫婦は、ある雨の晩に心を交わす

春風由実
恋愛
公爵令嬢のリーナは、半年前に侯爵であるアーネストの元に嫁いできた。 所謂、政略結婚で、結婚式の後の義務的な初夜を終えてからは、二人は同じ邸内にありながらも顔も合わせない日々を過ごしていたのだが── ある雨の晩に、それが一変する。 ※六話で完結します。一万字に足りない短いお話。ざまぁとかありません。ただただ愛し合う夫婦の話となります。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です。

【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?

氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。 しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。 夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。 小説家なろうにも投稿中

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。

【完結】あなたに抱きしめられたくてー。

彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。 そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。 やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。 大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。 同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。    *ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。  もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

処理中です...