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翌日、レックスは10時30分過ぎに来た。
「レックス今日はありがとう。こんなに早くからごめんなさい」
わたしは彼を見ておどろいた。
レックスはチャコールグレーの仕立ての言いスーツを着ていた。ネクタイはわたしが去年のクリスマスにプレゼントしたグッチのワインレッドのネクタイだった。
今日の彼はまた一段と素敵に見えた。ブロンドの整えられた髪。穏やかな顔つきの中にも引き締まった唇と高い頬骨が顔を引き締めていて、とてもセクシーに見えた。
「いいんだ。これに着替えて」レックスは急いでいるみたいに紙袋をわたしに手渡した。
「でも、もう服は着てるから…」わたしはジェリーが持ってきていた自分のトレーナーとジーンズを着ていた。
「でも、こっちの方がきっと気分が良くなるよ」レックスが白い歯を見せて笑った。
「そう、じゃあそうしようかしら。でもお金はちゃんと払うから、そういうところはきちんとした方がいいもの」
「シャロン。そんな君が好きだけど。これは僕からの退院のプレゼントだ。素直に受け取ってくれるだろう?」
「ええ、わかったわ。ありがとうレックス」
わたしは紙袋を開けて声を上げた。わたしの大好きな色のきれいなブルーのワンピースだった。
わたしは早速着替えて鏡を見た。シフォンのワンピースは女らしい曲線を描いてスカートが揺れていた。急いでブラシで髪を整えてクロスを塗った。髪はシニヨンに結ってまとめた。
確かにレックスの言った通りわたしはほんの少し気分がよくなった。
レックスが部屋に戻って来た。
「わおーすごく見違えたじゃないか。とてもきれいだよシャロン。君は美しい…」レックスが近づいてきてわたしを引き寄せた。わたしは彼にされるまま彼の体にぴったりとくっついた。唇が合わさるとそれが自然のような気がした。
「さあ、荷物はもうまとめた?」レックスは体をすぐに離した。
わたしは赤くなった。
「ええ、これだけよ。それで支払いは?」
「ああ、会社が払うからいいんだ。今その書類のサインをしてきたところだよ。ジェームスから聞いた?」
「ええ、じゃあ、もう帰るだけね」
「ああ、帰る前に食事でもして帰ろうか」レックスはせかすわけでもなく落ち着いていた。
「ええ、そうね。ついでに買い出しもしなくちゃ、家には何もないから…」
「それは僕に任せて」レックスはうなずいて言った。何も言わなくていいからと瞳が語っている。
「シャロン、遅くなってごめん。着るものがいるんだったかな?持ってきた服で帰るのか?つい小説を書いてたら止まらくなって…」突然ジェリーが入って来た。
「シャロン、お前一体どうしたんだ。何だそれ?すごくきれいじゃないか…」彼はシャツにジーンズ、その上に革のジャケットを着ていた。満々の笑みはすごくセクシーでシャロンは思わずとろけそうになった。
見る見るうちに体の中で熱が渦巻きとぐろを巻き始めた。
こんな感覚はレックスには湧かないと言うのに…
レックスと目が合うとジェリーがしゃべるのをやめた。
「シャロン知り合いの人?」
「ええ、ジェリーこちらはウォルトブックスの先輩でレックス・コッパーよ。あのそれでね。昨日の話なんだけど…」
「ああ、先にシャロンの家による?何か必要なものとかいるんだろう?」ジェリーはしゃべるのをやめそうにない。
「いえ、そうじゃなくて、昨日言った話よ。わたしたちが一緒に暮らそうって…あれやっぱりやめることにしたの」
「どうして?お互いの誤解はもう溶けたんだ。何もこだわることはないじゃないか!」ジェリーの顔は子供みたいに膨れた。
ジェリーがわたしに近づいてくるとわたしの頬を挟んで顔を見つめる。わたしの肌はほてり心臓が高鳴った。
「シャロン、どうしてなんだ?どうして気が変わったんだ!まだ僕が信じれないのか?」
わたしは頬の手をはずすと彼から一歩下がった。
「ええ、その通りよ。あなたはまったく信じれない最低のジェリーフィッシュだって事忘れてた。それに昨日はあまりに話がうますぎて言いそびれたけど、わたしレックスと付き合ってるの」
「嘘を言うなよ。シャロン君がそんな事するわけがない。もし付き合っている人がいたなら君は僕のところに戻るなんて言うもんか!」
シャロンの心臓は飛び跳ねた。言われることが当たっているだけに、思わず口ごもった。
「ほら見ろ。何も言えないじゃないか…さあ、行こう」ジェリーは手を引っ張った。
「だめよ。わたしは行かないわ!ジェリーやめてよ!」
「悪いがジェリー、どう見ても彼女は嫌がってる」レックスがその手をつかんだ。
「えっと…レックスだった?あんたは部外者だろう。黙っててくれよ!いいからシャロン話は僕とふたりきりになってからゆっくりすればいい。僕だって君と話をしようと思っていたんだ。今度こそきちんとやって行きたいんだ!」ジェリーはいつになく必死だった。こんな彼は見たことなかった。
「悪いが彼女の言ったことは本当だ。僕たちは彼女が君の担当になる前からそのかなり前から付き合っている。シャロンは昨夜僕とそのことを話し合った。そして君とは行かないと決めたんだ」
「シャロン?僕が帰った後こいつを呼んだのか?僕とこいつを天秤にかけたのか?いつからそんな女になったんだ。僕の知っているシャロンはそんな女じゃなかったのに…」ジェリーの顔はしぼんだ風船のようにしおれた。
「ジェリーあなたが浮気していなかったってわかって、わたしはほんの一瞬気持ちがぐらついたわ。あれが間違いだったなんて思いもしなかった。そしたら急に気持ちが舞い上がってそれで…きっと…あんなことを言ってしまったの…」
ああ…彼にそうじゃないと言いたい気持ちと二度と騙されたくない気持ちが心の中でせめぎ合った。
鼓動が耳の奥で”いっそ本当の事を話してしまったら”と、響く。
あの写真はどういうことなのか。彼に問い詰めてみたらジェリーはなんて言い訳をするんだろう?
何も言えないに決まっている。あんなハレンチなことが平気で出来る人なのよ。わたしを働かせて自分はのらりくらりと遊んでいても平気だったのよ。
でも今はあの頃みたいにお金には困っていないわ。どうしてわたしが必要なの?そうよ。きっとあんな事はもう出来ないって気づいたのよ。外で誰とでもセックスするなんて、もしもパパラッチにでも見つかったら、それこそ大スクープになるわ。彼はもう有名人なんだから…それに脅迫文の犯人の事だって…
そう言うことだったんだわ。わたしってほんとうにおめでたいわ。
ようするに彼の便利なセックスフレンドってわけよ。
彼が飽きたら終わり。はいさよならってやつ…
「それできっと旨くだませるって思ったのか?それで離婚届も出してないとか嘘を言って僕をその気にさせたのか?そうなのか?でもよく考えてみたら無理だよな。離婚届けは出してるし、男とも付き合っている。いや、いいんだ。別にシャロン君が嫌だっていうものを無理に連れて行こうなんて思ってないから、じゃあ元気でな」ジュリーはさっさと部屋を出て行った。
「さあ、彼も納得したことだし、行こうかシャロン」
「ええ、そうね…」虚しさが全身をすっぽり包み込んでいた。
それでもまだジェリーを愛していた。心から…なのに彼は女はすべてセックスの対象者でしかない。それがはっきりわかってよかったじゃない。すべてはあのおぞましい写真が物語っている。
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