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翌日久しぶりにウォルトブックスに出社した。
編集長のところに挨拶に行った。
「編集長長い間すみません。それから治療費や給料の事ありがとうございます」
「シャロン君が無事で何よりだ。悪いがバクスターの担当はマックスに任すことにした。まだ犯人も捕まっていないし君もその方がいいだろう?」ジェームスは相変わらず苦虫を潰したような顔をしていた。
「はい、ありがとうございます。助かります。それでわたしは今度はどこに行けばいいんでしょうか?」
「ああ、それなんだがレックスから聞いてないか?企画室に君が欲しいそうだ。それでしばらくレックスの下についてくれないか」
「もしかしてその話、レックスが言ったんですか?」
「ああ、君はレックスと付き合ってるそうじゃないか。今まで気づかなかったよ。ああ見えて彼はこの会社のオーナーのご子息だから無理もないが…」
「えっ?レックスがこの会社のオーナーの…知りませんでした」
「いや、余計なことを言ったのか?まいったな。レックスはてっきり君には話していると…これはほかの社員には秘密にしておいてくれないか。レックスもあまり知られたくないそうなんだ」ジェームスはバツが悪そうに言った。
「はい、もちろんです」わたしはそう言うと編集室を後にした。
ドアを閉めたとたん、そう言えばあの脅迫文の犯人は?
ふとそのことが頭にもたげた。そう思うと考えずにはいられなくなった。
レックスは贈られてきた写真を外部の人に調べさせるって言ってたけど…
まさか、犯人はジェリーに危害を加えるつもりじゃないわよね。
またレックスに聞いてみようか…でもそんなことを聞けばまだジェリーの事を思っていると勘ぐられるかも知れない。
レックスは本当にわたしの事を思ってくれているのがよくわかるだけに、シャロンはもう考えないことにしようと思った。
もし何かわかれば、社内でもみんなに知らせるはずだわ。
シャロンは、それから廊下を歩き始めると今度はレックスの事を考え始めた。
レックスは大金持ちなのよね。なのにどうしてわたしなんかと付き合いたいのかしら?それも同じ社内で?これって彼が本気って事なの?
それに両親に会ってくれって言ったわよね彼…
シャロンはレックスの気持ちが本気だと思い始めていた。それなら自分も本気で彼の事を考えるべきだとも。真面目なシャロンは浮ついた気持で男性と付き合いは出来ない性分だ。ましてジュリーのように遊びだけのセックスなんてとんでもないわ。
でもどうしてわたしなの?
それから、企画部に行くとレックスが嬉しそうに出迎えてくれた。
「やあ、シャロンよく来たね。今日からここが君の仕事場だ」
レックスは企画室の社員に紹介して部屋の中を案内してくれた。
企画部には、新しい企画を立ち上げたりパソコンでデザインを作成する部署と、その企画に沿った準備をする部署があった。
わたしはデザインは出来ないので準備をする部署を手伝うことになった。
レックスは企画を立ち上げる仕事をしているので一緒に働くことはあまりなかったが、帰りはなんとなく一緒に帰ることが多くなった。
ある日シャロンはふたりで一緒にアパートメントに帰ると、レックスに尋ねた。
「レックス、どうしても聞きたいんだけど…」
「ああ、何でも聞いて」レックスは買ってきた食材を冷蔵庫に入れていた。
「あなたってお金持ちなんでしょう?ウォルトブックスはもちろん他にもいろいろな会社を持ってるって聞いたわ。なのにどうして企画部なんかで働いてるの?」
「僕はずっと出版関係の仕事がしたかったんだ。それで父に無理を言ってしばらくの間自分のしたい仕事をさせてもらうことにしたんだ。もちろん将来的には父の会社を継がなきゃいけないけどね」
「そうなの…あの、それでね……どうしてわたしなの?」
「えっ?どういう事シャロン?」
「あなたは本当にわたしに良くしてくれてすごくうれしいのよ。それだけあなたがわたしの事を思ってくれていることがはっきりわかったわ。でもあなたみたいなお金持ちならわたしじゃなくても相応しい人がいるんじゃないの?どうしてわたしなの?」シャロンは一番気になっていることを聞いた。
「僕がお金持ちだとかそんな事関係ないだろう?じゃあシャロンはどうしてジェリーが好きになったんだ?あんな仕事もろくにしなくて女をもてあそぶような奴を…」
シャロンは驚いて、言葉に詰まった。
唇が渇いて、舌先で唇を舐めた。
「そうだけど…気づいたら好きになってたわ」ほんとに…どうしようもなかったのよ。
「人を好きになるってそんなもんだろう?どうしてなんて聞くなよ。どうしてかわらないけど君が好きなんだ」
「ええ、わかるわ。わたしもそんな率直で正直なあなたが大好きよレックス」シャロンはたまらなくなって自分から彼にキスをした。
ふたりの関係は日を増すごとに強くなっていった。
明日はレックスの両親と食事をする予定になっていた。
「シャロン、これ君にどうかと思って」仕事が終わっていつものように一緒にシャロンのアパートメントに帰って来た時だった。
「一体何?もうレックスやり過ぎよ。おとといもプレゼントをもらったばかりなのよ!」わたしは彼から何度かプレゼントをもらっていた。さすがにこんなに受け取れない。
高価なパールのネックレスとイヤリングのセット。ジミーチュウのハイヒールもそうだ。
「でもシャロン…両親に美しい君を見せたいんだよ。いいだろう?」レックスは箱の中から美しい淡い紫色のドレスを出した。
「そうね…」そう言われると、わたしはそんな高級なドレスは持っていない。
それは美しい刺繡が胸周りから袖に施され、細かなレースの生地で出来ていた。袖はシースルーで出来ていてウエストまではぴったりしたデザイン、腰から下はフレアースカートの膝丈の完璧なデザインで、それはすごく素敵なドレスだった。
シャロンはため息を漏らした。あまりにも美しいドレスだった。
「レックス…わたしこんな素敵なドレス見たことないわ。でもこんなことするなんてよくないわ。わたしたちまだ付き合ってほんの少しなのに…」シャロンはうれしかったが恐くもあった。それにわたしたちまだそんな関係にもなっていないのよ…
「ああ、そうだね。でも僕がどれだけ君の事を思っているかわかってほしいんだ。そして君にも僕と同じように思ってほしいと思ってるんだ」レックスの見つめる瞳はいつになく緊迫していて、茶色い瞳には金色の輝きが見えた。
これって…彼は本気なのね…
シャロンは、とうとうレックスの気持ちに応える覚悟を決めた。
「ええ、レックスあなたの気持ちは痛いほどよくわかったわ。わたしもあなたと同じ気持ちよ。あなたを愛してるわ」
「ああ。シャロン…本当に?じゃあ僕と?」
「ええ…」そう言われるといきなり恐くなった。
まさか今夜この部屋で?
ジェリーと何度も愛し合ったベッドで?
そうだわ。わたし彼との思い出の部屋だからレックスを受け入れられなかったのよ。
シャロンはやっとどうしてもふんぎれない理由を突き止めた気分だった。
「レックス。わたしここじゃ嫌なの。あなたと初めて結ばれるなら出来ればあなたの部屋か、どこか別の場所がいいわ」
「ああ、そうだね。もちろんだよ。明日両親との食事が終わったらホテルに泊まろうか。週末だし朝はゆっくりできるし、どう?」レックスにもピンと来たようだった。彼は機嫌を損ねることなくまるで用意したみたいに、いい案を出した。
「ええ、それがいいわ。ホテルなんてすごく素敵だわ」
「ああ、僕も楽しみだよ。両親との食事が喉を通らないかもしれないな…」レックスが冗談を言うと笑った。
「そうかも…別の日にした方がいいわ…」わたし恥ずかしくなった。
「気にしないでシャロン。僕はもう待てそうにない。いいから明日にしよう。君の気が変わらないうちに」レックスはそう言うとわたしがこれ以上何か言わないうちに唇をふさいだ。
激しいキスでわたしは一気に高められ、彼の高まったものが押し付けられると秘所が疼き始めた。ああ…レックスと結ばれる。これほど確かなことはないもの…激しく彼のものにされたらきっと心も体も彼のものになれるはずよ。
シャロンは心を期待で高鳴らせた。
そうしなければいけないと……
「じゃあ、明日の夜迎えに来るよ」
「でもレックスお父様やお母様と色々話があるでしょう?空港に迎えに行ってから自宅に来られるんでしょう?」
「ああ、でも…そうだね。じゃあタクシーでくるかい?ホテルのロビーで待ち合わせようか」レックスは少し考えてそう答えた。
「ええ、それがいいわ。わたし少し早めに行ってロビーのラウンジで待ってるから」
「ああ、じゃあそうしようか。シャロン明日が楽しみだよ。じゃあこれで帰るよ」レックスは名残惜しそうに帰って行った。
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