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レックスの両親に会う日の朝、シャロンはいつになく落ち着かなかった。
早くに目覚め、近くの公園をジョギングした。
レックスは、両親を迎えに空港に行ってそろそろ自宅に着くころね。彼はお父さんと仕事の話やお母さんとも話があるだろう。
それに昨日あんな話をしたので彼と車の中で一緒だと心臓が破裂してしまうかも…
ランチは軽めに食べて、ゆっくりシャワーを浴びて、支度にとりかかった。
彼が買ってくれたドレスはピッタリで、ブルーの瞳やキャラメル色の髪によく似合っていた。パールのネックレスとイヤリングもつけて、ヒールの高いハイヒールにかかとを入れた。
ゆるくまとめたシニヨンからほどけるように落ちた後れ毛は、くるんとカールしていた。薄めの化粧にアイラインとマスカラを付けてまつ毛を上げた瞳は大きく輝いている。ルージュは薄めのピンク色、グロスのせいで輝いていた。
鏡の前に立つと、まるで知らない自分が移っていた。
まるでシンデレラみたい…シャロンは心が浮き立つのを抑えきれなかった。
レックスのものになる。これが正しいことに思えて来た。
シャロンはこんなに美しく幸せそうな自分を見たことがなかったから…
シャロンは少し早めに自宅を出るとタクシーでアストリアホテルの前でおりた。
大きな扉をドアマンが開けてくれた。
シャロンは驚いた。アストリアホテルのロビーはまるで美術館にでも迷い込んだみたいだった。敷き詰められた豪華な絨毯。奥まで広がるロビー…これがロビーなの?椅子はアンティークらしい一点物の椅子ばかりで、柱はひとつ一つに彫刻が施され、中央にはクラッシックな時計台があった。
やっとロビーを過ぎてラウンジの近く来るとシャロンは血の気が引いた。
ジェリー…どうしてジェリーがここに?
彼は見たこともないような仕立てのいいスーツを着ている。あのデザインきっとサルバトーレ・フェラガモ?シャロンはレックスと付き合うようになって高級スーツをたくさん見ていた。
ジェリーは誰かを待っているようだった。何度も時計を見ている。
その時スタイル抜群の美しい女性が現れた。女性は写真を手にもってあたりを見まわしている。
そしてjyリーを見ると微笑んだ。まるで天使の微笑みみたいに…
ジェリーも彼女に気づいたのか、彼女に手を振った。
ふたりは一緒にラウンジに入っていく。
シャロンの心にごうごうと嵐が吹き荒れた。
やっぱりジェリーってそんな男なのよ。次から次に女性と…今はお金も地位も名誉もあるんだもの。あんな薄汚れたバーなんかに近づくはずもない。レックスから見せられた写真を思い出した。でもやってることはあの写真と同じことよ…
あいつはくずやろうなんだから!
でも…でも…彼女は今まで見たどんな女性よりも美しくスタイルもいい。もしジェリーが本気だったら?
突然そんな考えが脳をかすめた。
ほんの一瞬かすめたその考えは、次第にシャロンの頭の中すべてを占領していた。
その時声をかけられた。
「シャロン?」
「レックス!」シャロンは驚いて顔が引きつった。
「ああ…すごく綺麗だよ。僕の思った通りだ。欲に会ってるよ。どうしたんだ?顔色が悪いみたいだ」レックスがすぐにそばに近づいてきてシャロンの腰に手をまわすとキスした。
「ううん、何でもないの。それよりご両親は?」シャロンは肩をすくめた。
「ああ、君に連絡すればよかったんだが、色々忙しくてね。実は母が階段から落ちて怪我をしたんだ。それで」
「まあ大変。それでお加減はどうなの?じゃあ、これから病院に行くんでしょう?」
「いや、今朝出掛ける前にボストンの自宅で怪我をしたんだ。だからこっちには来ていないんだ。でもけがは捻挫だけで済んだから僕は来なくていいって言われたよ」
「まあ、そうなの。残念だわ。せっかく楽しみにしてたのに…」シャロンはほっとした。
「ああ、まったくだよ。でも大したことがなかったから今夜は君と一緒に過ごせる」
「ええ、そうね」シャロンは唇を湿らせた。緊張が込み上げてきて胃が悲鳴を上げそうだ。
昨日はあんなに燃え上がった気持ちもジュリーを見たせいか、両親に会えなかったせいか、それともやっぱり怖気づいたのか…
今日は一段と素敵なレックスを見ても、何も感じない。
シャロンは眉間にしわを寄せると、ため息をついた。
「どうしたんだシャロン?恐くなった?」レックスが耳元でささやく。彼はムスクの香りのコロンを付けていて男を意識させた。
シャロンは急に背筋がぞくっとした。長い間男性と関係を持っていなかったシャロンはレックスの男の欲望に恐怖を感じた。
昨日まではそんなこと感じなかったのに…それは彼が求めては来ないと分かってたから…でも昨日は彼とならって思ったくせに…
ジェリーを見かけたからってそれがどうしたっていうのよ!
でも…ジェリーとセックスするのは彼を愛してたから、どんなことでも受け入れられた。
なのに…今レックスとそんなことをしようと思っても、わたしは彼のためにどんなことでも受け入れる気持ちにはなれない。
彼は優しくしてくれてわたしを包み込んでくれた。でもわたしはレックスを愛してはいない…
シャロンはそんな気持ちに気づいて動揺した。
でも愛がなくてもセックスしてる人はいるじゃない!ジェリーは愛なんてなくても…そうよ。今だってあの女性と…どうしてあんな奴の事ばかり気にするのよ。もう…よしなさいってば!
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