賞味期限なんて誰が決めるんです?私の未来を勝手に決めるなんて許しません!

はなまる

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7辺境伯の屋敷にて2


 
 「まあいい。じゃ、あっちの方は現役なんだな。じゃ、問題ない。何せこんな所じゃ娯楽もない。せいぜい酒を飲むか女を抱くかだ。辺境みたいな娼館には若い女はそうそうおらん。余計な事だと思ったが案外役に立つかもしれんな。おい、ロナウド。すぐに女に支度をさせろ」

 男の顔がにやけてすっと真顔になる。

 はっ?やだ。本気?

 「役に立つって?‥もしかして私と寝るって事?」

 ぞわりと背筋に悪寒が走る。無理無理無理。

 「当たり前だ!嫁に出来る事と言えばそれしか無いだろう!」

 「って言うか、まだ結婚もしてないんですよ。それに、言っておきますけど私そう言う事やるつもりありませんから!」

 きっとルーカス・メートランド辺境伯であろうがまだ名乗られてもいない。

 男がキッと顔をしかめる。

 「お前、いい加減にしろよ。ただで飯を食うつもりか?結婚すれば妻は夫のものだ。妻は夫の言う事を聞くのが務めだ。そのくらいの事常識ってもんだろう!」

 ったく。横柄な態度だ。

 「いいえ、って言うかあなた誰なんです?まだお名前も伺っておりませんけど」

 何だかダリルがかわいく思えて来る。

 「お前辺境伯の顔も知らんのか?わしがルーカス・メートランドだ。これで文句はないだろう」

 「私はジュリアーナ・スタールクスと申します。メートランド辺境伯様、こうなったら結婚する前にはっきりさせておきましょう。いいですか、私は閨は致しません。やるなら他の女性となさってください。それに婚姻は3カ月後のはずです!まあ、ですが仕事はします。領地の管理や帳簿整理、領民との折衝などその他もろもろの執務は何でもこなせますのでお任せ下さい。ロナウド様、一度執務についてお教えいただければご期待に添えると思いますのでよろしくお願いします」

 「おい!誰が勝手に決めていいと言った?執務はわしやロナウドがやる。それにこんな辺境で3カ月?待っていられるか!お前は大人しくわしの夜の相手をすればいいんだ。それが妻の仕事だ。わかったか」

 「いいえ、わかりません。絶対に嫌です!」




 「まあまあ、旦那様。いきなりそのような事を仰れば女性は皆驚きますよ。ここはもう収めて部屋にお戻りください」

 ロナウド様が私とメートランド辺境泊の間に入って彼をいさめる。

 そしてくるりと向きを変えて私ににっこり微笑みかけた。

 「さあ、お嬢様、長旅でお疲れでしょう。どうかお部屋でゆっくりなさってください。旦那様の言う事はお気になさらず。このロナウドがきっちり旦那様には言っておきますのでご安心ください。ですがこれは王命での婚姻ですので式を行い書面を交わしませんとなりません。そこはよろしくお願いいたしますね」

 「ええ、ロナウド様」

 「私の事はロナウドで構いません」

 「ロナウド、私も結婚しないとは言いません。ですが、いきなりにあまりの態度で少し言い過ぎました。ですが式はなしでお願いします。ああ、それから閨事もなしで」

 「おい、そんな訳に行くか!何のための妻なんだ?許さないからな」

 「旦那様、少し黙って下さい。まとまる話もまとまりません。お嬢様、どうかお気になさらず。さあ、部屋に案内いたしますので‥おい、誰かご案内を」

 ロナウドは会えて私をお嬢様と呼んだ。あなたもこんな主人で苦労するわね。




 すぐに出て来たのはこれも年配の女性だった。

 「侍女兼メイドをしておりますヴィクトリアンと申します。この家のことでしたら何なりとお申し付けくださいませ」

 しわくちゃの顔でにっこり笑ったメイド服を着た女性だった。

 「ヴィクトリアンさん、私はジュリアーナ・スタールクスと申します。結婚すればここの女主人と言う事になります。どうぞよろしくお願いいたします」

 「旦那様の奥様ですね。でしたらお部屋はご夫婦の間で?」

 「ヴィクトリアン、お嬢様はまだ結婚前だ。客間にご案内してくれ」

 「はい承知しました」




 ヴィクトリアンさんの後について行く。

 「あの‥ヴィクトリアンさんはここは長いの?」

 「はい、旦那様が子供の頃からここで働いております」

 「そう、それで他の使用人は?」

 「はい、辺境は若いもんが少なくて騎士はいるんですが侍女やメイドが出来るようなものがおらんのです。ですからここには女は私だけで後は料理長に庭番、それと厩の世話をするもの、それにロナウドの息子のラドールが家令をしております」

 「まあ、それで屋敷は回っているの?」

 「はい、奥様も坊ちゃんも亡くなられて今は旦那様だけですので、それに旦那様はご自分の事はご自分でされますので」

 「そう。あっ、もう一つ。旦那様の女性関係はどう?奥様がいらっしゃらないなら特別な女性とかいらっしゃるのでは?」

 「いいえ、旦那様は娼館にもいかれませんし、女の人がいるような気配もありません。ですからジュリアーナ様が来て下さってきっと喜んでるんですよ。さっきのはきっと照れ隠しで。旦那様は口下手ですからお気を悪くなさらないで下さい」

 「そう‥」

 何だか予想と違う。

 でも、流されたりしない。誰があんな横暴な奴。

 でも仕事はきちんとするつもり。

 何だか疲れた。




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