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21アランの様子が気になる
しおりを挟む私たちは騎士隊長の屋敷を訪ねた。
「すみません。ああ、ネクノさん。あの、アラン君の容体はいかがですか?」
「アリーシアさん、ちょうど良かった。坊ちゃんはかなり良くなっていたと思っていたんですが今度はお腹の具合が悪くて」
「ああ、よくあるんですよ。ブリド病は熱が下がるとお腹を下すことが多いんです。きっと病原菌が強いせいなんでしょうね」
ロベルト神官が説明してくれた。
「こちらです」
アランの部屋に入ると顔色の悪いアランがベッドでぐったりしていた。
すぐそばにはスーザンさんがいてアランのお腹をさすってやっていた。
「アリーシアさん?坊ちゃんが‥良くなったと思ってたんです。でも、また具合が悪くなってしまって…」
「ええ、聞きました。もう、大丈夫です。アラン?辛かったね。もう大丈夫だよ。やっぱり一回の治癒魔法では治しきれなかったんだね。さあ、ゆっくり息を吸って…」
「すぅぅぅう~」
私はアランの身体の上に手をかざす。
(神様どうか力をお貸しください。アランの病気が良くなりますように…)
淡い光がアランの身体を包み込む。
「今度はゆっくりはいて~」
「ふぅぅぅぅう~」
「アラン?どうお腹は?」
「…あれ?さっきまで痛くてたまらなかったのに…うん、もう痛くないよ。すごいねお姉ちゃん」
「私はアリーシアって言います。アランよろしくね」
「うん、アリーシア。今度一緒に遊んでくれない?僕友達がいないんだ。パパはいつもお仕事で忙しいし、スーザンはとっても優しいけど…僕はもっと外で遊んだり剣術の稽古だってしたいんだ。パパみたいに強くなるんだ」
アランはスーザンをちらりと見て言う。きっと遠慮してるのだろう。
(なんて可愛い。でも、私は女らしくないって事?)
「アランはどうして私だとお外で遊べるって思ったのかな?」
「だって、アリーシア、騎士隊の人と出かけたよね?僕、窓から見えたんだ。魔獣が出たってみんなが大慌てで‥パパはガロンに乗って飛んでいった。ガロンと行く時はたいてい魔獣が出た時なんだ。時々違うときもあるけど今回は魔獣でしょう?だから…」
(ああ、それで私はおてんばな女だと思われたって事。まあ、そういう事なら…)
「アラン。では、今度お外でかけっこしたり、そうだ!ピクニックなんていいかもね」
「ピクニック?なぁにそれ?僕そんな事したことないんだ。絶対そのピクニックやりたい!」
「まあ、坊ちゃん。まだ寝てなくちゃだめですよ。また痛くなっても知りませんよ」
「は~い。スーザン。いいでしょう?アリーシアとピクニック。そうだ。パパも一緒に!」
アランの瞳はキラキラ宝石のように輝く。
(あのパパと一緒にはどうかと…)
「パパは都合を聞かなくちゃわからないけど。そうだ。今度バスケットにランチを入れて庭でピクニックしましょう。外で食事をするのがピクニックなのよ」
「ふぅん、ランチをお庭で食べるんだね。わかった。約束だからね」
「ええ、アランがすっかり良くなったらやりましょうね」
私は楽しそうに話すアランについそんな約束をした。
帰り際にスーザンが声をかけた。
「アリーシアさん申し訳ありません。坊ちゃんを治していただいてありがとうございました。坊ちゃんはお母様がいらっしゃらないので寂しいのでしょう。ピクニックは無理ならこちらでやりますので、どうか気になさらず」
「いいえ、子供と約束をたがえるのはいけません。近いうちにまたお邪魔させて頂きますので、その時はご連絡してまいりますから」
「ありがとうございます。では、また。失礼します」
「失礼します。どうかお大事に、もしまた何かあったらいつでも教会の方にご連絡下さい」
「ああ、教会に帰られるんですね。神官様もアリーシアさんもどうかお気を付けて」
そうやってさあ、帰ろうとした時ガロンの声が聞こえた。
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