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53聖獣が魔獣に
しおりを挟む表に出ると信じれない光景があった。
アギルが魔獣になっていた。ギラギラと滾った瞳は真っ赤で牙は大きく広がった口からはみ出ている。
身体が二倍くらいに大きくなってその顔つきはいかつい。
ガロンが急降下で降りて来る。
「きゅるるるぅぅぅ~」(アリーシアここだよ~)
でも、それを見たアギルがガロンに飛び掛かろうとする。
「ガロン危ない!」
「クッソ!これじゃあガロンに乗れない」
その後ろに今度はナナが現れる。ナナも魔獣化が始まりかけているらしく獰猛で額の一角が鋭く大きくなっている。
サラはまだ元の姿のままだがいつ魔獣化するかわからない。エリーは一気に成長したように大きくなって空を飛んでいる。
小さい分だけ魔獣化もしやすいみたいだ。
「ガロン、先にエリーを何とかして、あなたの浄化でエリーを元に戻すの。出来るでしょう?」
「ぎゅう、きゅきゅきゅるっぉぉ~」(任せて。エリーさあ大人しくして~)
早速エリーの負の魔力を浄化し始めた。
「隊長、騎士隊員とサラを取り押さえて下さい。私はアギルとナナを浄化します」
「アリーシア無理はするな。ナナは何とか離してみる。君はアギルにだけ集中しろ!」
「大丈夫です。アギルとナナは近くにいるのでやってみます」
「わかった。でも無理はするな。いいな!」
リント隊長はそう言ってサラの方に走った。
私は魔樹海で経験した事を思い出しながらアギルとナナに立ち向かう。
アギルの声がした。
「ぐごぉぉぉぉ~」
何を言っているかは全く分からない。聖獣じゃないから?魔獣になると感情を読み取ることは出来なくなるのね。
「アギルごめんね。ちょっと我慢してすぐに元に戻すからお願い」
私はこちらに突進して来ようとしているアギルに大きく手をかざした。
「浄化!」
(神様どうか力をお貸しください。アギルを元に戻して…浄化!)
青白い光が空中に弾けるように広がる。その光のシャワーがアギルとすぐそばに来たナナの上に降り注いでいく。
アギルの身体が、ナナの身体が青白い光に包まれるとどす黒いもやのようなものが放出されてそれが空中に霧散していく。
(あれは瘴気が浄化されたって事?魔樹海ではあんなの見なかったけど‥)
私はさらに魔力を押し出すように力を込めた。
また青白い光の帯がアギルとナナを囲む。光は浄化する対象が分かっているみたいだ。
アギルとナナが苦しいのか身体をよじってそのままバタンと倒れた
「アギル!ナナ!」
私はなりふり構わずに二頭に走り寄る。
「アリーシア危険だ。近付くんじゃない!」リント隊長の声がしてつんのめるようにしてその場に立ち止まった。
隊長が走って来て「俺が様子を見て来る。ここから動くな」
私はこくこく頷く。
「サラは?」
私は周りを見渡す。
サラは騎士隊員に捕まっていた。顔つきも身体も魔獣化しているようではない。
でも一応「浄化」と私はサラにも浄化をした。
(良かった。あなたはお母さんなんだから…無事で良かった)
「アリーシア。アギルもナナも生きている。きっと意識を失っただけだ。もう大丈夫だ」
「良かった…そうだ。ガロン?」
「きゅきゅ、ぎゅぎゅぎゅるぅぅぅぅ~ぎゃぐぅぅぐう~」 (エリーしつこいですよ~いい加減にしろぉぉ~)
ガロンの口から青白い炎がエリーに吐き出される。エリーの身体が青白い炎に包まれて行く。
「エリー危ない。ガロン!エリーを」
「ぎゅるぅぅぅ~」(任せて)
ガロンは急降下して落下するエリーを見事にキャッチした。
「ガロン最高よ!」
「りゅりゅりゅぅぅぅ~」(当たり前~)
ガロンはゆっくり地面に降りて来た。背中には気を失ったエリーが乗っている。
隊員たちはそっと数人がかりでエリーをガロンの背から降ろした。
「エリー?」
「大丈夫。ほらすっかり元に戻ってる」
「そうね。ガロンありがとう」
「きゅるぅぅぅぅ~きゅる~」(お礼を言うのはこっちだよ。ありがとう)
隊員たちが大きな台車を持って来てアギルたちを獣舎に運んでいく。
今はゆっくり休ませてやろうと思う。
「アリーシア疲れてないか?」
リント隊長の大きな手がそっと頬を撫ぜた。
「はい、大丈夫です。それより神殿に」
「ああ、神殿に急ごう」
目の前に広がるオークの森はすっかりあの魔樹海のように人間を行け入れないようにびっしり木々で覆われ、その葉は毒々しく変貌していた。
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