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8話は以外な展開に
別室から出ると医務室のデスクと椅子がある場所で話を聞くことになった。
ヴィルフリートはふたりを睨んだままだ。
ケビンが改まって話を始めた。
「あの、バルガン先生は知らないだろうけど、3年生になって婚約者が決まるとお互いそれで納得できるカップルはいいとしてもそうでないカップルもいるんだ。例えば俺とカレンだって…俺には好きな女の子がいたんだ。カレンなんて男に色目使って俺の好みじゃないし‥」
「何よ。私だってあなたなんか好きじゃないわよ。どうせならもっと…バルガン先生みたいな男が良かったわよ」
カレンはケビンに殴りかかる。ケビンはその手を払ってカレンの腕とつかみにかかった。
ヴィルフリートは白けた顔をしてふたりの間に入る。
「いいから本題に入ってくれないか」
「そんなカップルにって、半年前に入って来たマーガレット知ってるか?」
ケビンが私に尋ねるように顔を向けたので私はうなずく。
「マーガレットに頼めばそんなカップルの為にってそういう気になる薬を用意してくれるって聞いて…どうしたって一緒にいなきゃならないなら早くそんな関係になってしまう方がいいって、もしそれでだめなら別れるって事も考えればいいかって…他の子に聞いたら、そういうことをしてもいいって事になってるらしいんだ。場所は男子寮も女子寮も無理だろ?この部屋はある意味そんな事が出来るみたいなことをみんなが言ってるから…それでマーリン先生に頼めば見逃してくれるらしいと聞いてたから…まさかこんなことになるなんて…なあ、カレン」
「だから私はいやだって言ったじゃない!もう、こんなところでなんか…こんな事するのは結婚してからって…」
「何言ってんだよ。お前が他の男に色目使うから俺は心配でたまらなかったんだからな。お前さえ俺だけ見てくれてたら俺だって気持ち切り替えるつもりだったのに…」
「ごめんケビン。何だか親の言う通りにするのが嫌だったの。あなたが好きなのに私…もう絶対にあなたしか見ないから許してよ。ケビン」
「カレン…俺も」
ふたりは抱き合ってキスまで始めた。
「はい、そこまで。後は卒業してからにしろ!事情は分かった。けどそんな事になっているとは知らなかった。これは学園長ともよく相談して今後の事を考えなくては」
ヴィルフリートは呆れたような顔をして腕を組んでいる。
「じゃあ、俺達帰っていいよな先生」
「ああ、ちゃんと彼女を女子寮に送るんだぞ」
「わかってるって。行こうカレン」
「ええ、ケビン」
「カレン辛くないか?だって途中で…」
ケビンはカレンを心配しているつもりだが…
そんな話がヴィルフリートに聞こえたらしく。
「お前たち。わかってるんだろうな?いいからその先は自分で何とかしろ、いいな?」
「分かってますって…行こうかカレン」
「うん、ケビン」
ふたりは腕を組んで仲良く出て行った。
ヴィルフリートは医務室から廊下に出て行った。
どうやらふたりがきちんと寮の方に向かうのを確かめたらしくまた医務室に戻って来た。
もう、戻って来なくていいのに…さっきの話で私はまだ動揺していた。
ヨハンと私がそうなるようにって…でも、どうしてマーガレットがそんな事をするのかしら?
「バイオレット?どうした。そんな深刻な顔をして」
「…あっ、いえ、何でもありません」
彼は大きくため息をついて、何かを考えるように顎に手を当てる。
「ったく!…バイオレットまさか。ヨハンとそんな事をするつもりだったんじゃないよな?」
彼はいきなりわたしの肩を抱き寄せて来て、間近で私の顔をじろりと見た。
私は腕をねじって飛びのく。何?このすごく親しいような態度?
「な、何言ってるんですか?」
「何って決まってるだろう?さっきの話じゃバイオレットとヨハンがカップルになる予定だったみたいじゃないか。ったく。俺と言うものがありながら…」
「はっ?意味わかりませんけど。だってわたしは婚約が決まったってまだ知らなかったんですよ。それにそんな計画なんか知りませんから!」
「そうか?じゃあいいんだ。あっぶなかったよな。俺が先に来たからよかったものの。もしヨハンが来てたらバイオレットは…」
そう言いながら彼がまた近づいてくる。
私は大きく一歩下がって手を振る。
「そんな事ある訳ないじゃないですか。ヨハンだって。彼は真面目だし…あ、あり得ませんから」
「まあ、結果オーライって事でこれ以上は言うのはやめるが、本当に驚いた。何だか学園長の様子がおかしかったのはそのせいかもな」
「そうですか?私はちっともそんな事思いませんでしたけど」
「そりゃ、バイオレットはまだ子供だからな。俺はマーリン先生がおかしなことを言うと思ってたんだ」
「…」さすがはやっぱり大人なんだ。とおかしな感心をして私は頷いた。
「取りあえずマーリン先生に事情を聞くべきだな。そうだ。バイオレットお前はもう帰れ。後の事は俺達大人の仕事だからな。お前はおかしな事に首を突っ込むんじゃない。いいな」
「はいはい。私だってそんなつもりはありませんから、ただ、昨日マーガレットがあの果実水に何か入れたって事ですよね?」
「ああ、そうみたいだな。だからあんな事に…いや、いいんだ」
お互い昨日の展開を思い出して気まずくなった。
「いいって?私はちっとも良くなんか!」
「いいからもう帰れ!」
彼は私を医務室から追い出して手をひらひら振った。
はいはい。わかってますよ。
でも…やっぱりヴィルフリートが来ていなかったらと思ってしまう。
「もう、何であなたが来たのよ。ヨハンが来てくれてたらもしかしてカップル誕生だったかも知れなかったのに…ほんと。腹立つわぁ」
「何だ。俺じゃ不足みたいな言い方だな。何なら今からやるか?昨日の続き、俺はいつでもいいぞ。一発やってしまえばヨハンの事なんか忘れさせてやれると思うが…」
「えっ?聞いてたんですか?もう…結構ですから」
彼がじわじわ近づいて来て私は脱兎のごとく逃げ出した。
どしん!
「痛ーい!もう誰よ…」
「バイオレット。良かった気が付いたんだ。後で見に行くって言ったから来てみたんだ。大丈夫か?」
「ヨハン?あっ、ええ、もう大丈夫だから」
ヨハンはたくましい筋肉で私がぶつかったことなどなかったみたいに立っていて、私はバツが悪くて頭をかくと顔はすでに真っ赤になっていた。
だって、もし昨日先に来たのがヨハンだったら…あんなことをヨハンとする羽目になっていたのかと思うと…
かなりきわどい妄想が脳内をよぎり過呼吸を起こしそうになった。
はっ、はっ、はっ。発情期のイヌかと言わんばかりの私はさらに赤くなってもじもじする。
「バイオレット?やっぱりまだ横になっていた方がいいんじゃないのか?顔が赤いし息も上がってるじゃないか!」
ヨハンは私の顔を覗き込んで心配する。
「ち、違うの。これは…私もう帰るね。じゃあ、ありがとう」
「ヨハン。ちょっと話がある今いいか?」
そう声を掛けたのはもちろんヴィルフリートだった。
「はい、何ですか先生」
そんな会話と遠くに聞きながら私は女子寮に帰った。
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