悪夢から逃れたら前世の夫がおかしい

はなまる

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21セルカークの秘密

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 「国王陛下お願いがあります」

 そう声を上げたのはセルカークだった。

 「なんだ?」

 「確かに彼女は今まで公爵とそのような関係を持たされていました。でも、それは彼女が望んだことではありません。嫁として公爵家に嫁ぎ跡取りを産まなければならないという義務感からです。そんな苦痛にずっと強いられてそしてあのような痛ましいことが起きたのです。これを今までそのような行為を受け入れて来たのだからと何もなかった事にしていいのでしょうか?公爵は彼女のそんな弱みに付け込んで非道な行為をしたのです。それはひとりの男として許される事でしょうか?それも一国の宰相ともあろう方がです。それこそ権力を盾に取った卑劣なやり方ではないでしょうか?国王陛下はどうお考えになりますか?」

 国王は眉を寄せた。

 「そなたの言いたい事はわからんでもない。だが、そのようなことをわざわざ公にする必要もない。これは一公爵家内の揉め事にすぎん。いいか、この件は先ほど決着した」

 だが、セルカークはやめない。

 「ですが侯爵のしたことは許される事ではありません。一国の宰相がそのようなことをしたのです。陛下、もう一度ご考慮頂けないでしょうか?」

 リックがセルカークを押し止める。

 「ペルサキス様。この審議は終了しました。これ以上は…」


 「どうも先ほどから彼の言動は度を過ぎております。もしかしてミモザと何らかの関係があるのかもしれません。そうなるとふたりの話は虚偽かもしれません」

 そう言ったのはクリストだ。

 それに反論したのはミモザだった。

 「何を言ってるんですか!あなたの方こそ虚偽じゃないですか。私は嘘など言っていません。陛下。私は嘘はついておりません。もう一度考え直して頂けないでしょうか?お願いします」

 「私からもお願いします」セルカークも続く。

 国王の機嫌が急降下する。一度言った事を撤回することは出来るか!とばかりに頬が引きつる。


 クリストはチャンスとばかりに反撃を開始する。

 「そう言えばペルサキス様は若いころは色々なご令嬢との噂が絶えないお方でしたが、今でも独り身でいられるのはまだまだお盛んと言う事ではないのですか?ミモザは若くて美しい女性です。そして彼女はあれ以来診療所に寝泊まりしているのです。もしかしたら最初から計画が仕組まれていたとか?」

 クリストはねちねちとふたりに何らかの関係があるのではと話をする。


 セルカークは聞くに堪えないと思いっきりテーブルを拳で叩いた。

 「バーン!!」

 「まったく。こざかしい男の考えそうなことだ!お前の頭では男と女が一つ屋根の下にいるだけで関係を持つのが当たり前だとしか思えないんだろうな。残念だが俺は男としての機能がないんだ。20年前怪我を負ってまったく不能なったんだ。だから彼女とどうにかなることはないんだ。このげす野郎が!」

 セルカークの顔が怒りで真っ赤になり身体をわなわな震わせる。

 すぐにリックが声を上げた。

 「口を慎みなさい。近衛兵この男を連れ出しなさい」

 すぐに近衛兵が入って来てセルカークを連れ出した。


 ミモザはセルカークの話に啞然となっていた。

 (今なんて言ったの?セルカークが不能?20年前ってシルヴィが死んですぐじゃない。一体何があったのよ。だからセルカークは女とつき会ったり遊んだりしていないの?)

 ぞっとおかしいと思っていたミモザは妙に納得する。


 「陛下とんだ失礼をしました。申し訳ありません」

 「いや、では宰相。今日中にミモザに金5万パソの支払を済ませるように。ミモザもこれ以上の騒ぎだては不敬とみなす。よいか?」

 「国王陛下の審判は下りました。これにて審議を終わります。キャメリオット公爵はミモザに本日中に支払いをするように」

 「はい、すぐに支払いをいたします」

 「ミモザもこれ以上の騒ぎは不敬をみなされます。理解出来ましたか?」

 「はい、わかりました」

 ミモザの声は弱々しい。


 そうしてリックと一緒に部屋から出る。

 その後法務院の執務室で待つように言われて部屋で待った。

 すぐにセルカークが部屋に入って来た。

 「ミモザさん審議はどうなった?」

 「これ以上は不敬とみなすって…もういいんです。一応訴えは起こしたんですし…これ以上騒いでも私も恥をかくだけですし、お金は必要ですから」

 「あいつのやった事は金で済むことじゃないのに…すまん。俺は力に慣れなくてむしろ足を引っ張ってしまった」

 「いいんです。離縁は出来ましたし結果は惨敗ですけど、でも国王の前であれだけ言ったんです。少しは国王の見方も変わるかもしれません」

 「いや、あいつは嘘がうまいからな…とにかくあんな奴の事は忘れてしまえ、君ほどの美人ならすぐにいい男が見つかるさ」

 「それって私を褒めてくれてるんです?」

 「ああ、君は美しくて優しくて魅力に溢れてる。俺は君の虜になりそうだぞ」

 セルカークが冗談を言って笑わそうとしていると気づく。

 「もう、先生。冗談が過ぎますよ」

 今日はいつものような気持ちにならず素直に彼の冗談に笑えた。


 それからしばらくしてクリストから5万パソのお金が届けられた。

 (こんなもの!と言いたかったがお金は必要だ)

 ミモザはしぶしぶ支払いを受け取ることにした。

 5万パソはミモザの年収2年分にあたる額だった。

 これで何もなかったなんて思われたくはないが、これ以上は無駄だと分かってる。

 「これは離縁の慰謝料だって思えばいいさ。君が受けた仕打ちは金に換えられるものじゃない。俺はわかってるから」

 セルカークの言葉がすごくうれしい。

 「ありがとう先生。そう言ってもらえると…」

 ぎゅっと握られた手の温もりに今日は救われた気がした。



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